今年のシーズンスタートは、一昨年や昨年と感じが違う。それは冬場の自主トレの量だ。ここ数年、僕は前年に認識した課題を重点的に鍛え、少しでも技術向上につなげていくことを考えてきた。それは今年もまったく変わらず、毎日でも自主トレしたい気持ちだ。しかし昨年末から仕事が特に忙しくなってしまい、ここ数ヵ月は睡眠以外ほぼ仕事の毎日。睡眠時間の確保すら危うい。こんな状況だから、満足のいく練習ができていない。例年になく不安を抱えてのシーズンインである。
それでも2月中旬のチーム初練習は、冬場とは思えないほどの野球日和で、野球ができる幸せを感じるスタートとなった。二子玉川のグラウンドで芝生に寝転び、雲ひとつない空を眺めると、青空が円形に見え、まるで大きな野球のボールのように思える。チームメイトとも久しぶりに再会し、今年も頑張るぞ!という気持ちになれた。
先週は大蔵リーグの聖地「大蔵球場」で、メンバーもほぼ揃った状態の全体練習。この日は寒かったが、いよいよシーズンが本格的に始まる感覚が体に染み込んでゆく。
そして迎えた3月6日、Crazy9の今シーズン初試合である。その相手はなんとナインエールズ。大蔵リーグ、前年の覇者であり、チーム一丸で野球に取り組む姿勢が徹底された強豪だ。
僕は8番ファーストで出場。
ファーストは、守ってみると、とっても難しいポジションで、特にランナーが出た時は同時にいろいろなことを考えなくてはならない。牽制球への準備、バントシフト、ベースカバー、そしてハーフバウンドの送球を逸らさずキャッチする技術……僕は逆シングルでショートバウンドを確実に捕る技術を身につけるべく、ここ数年、地道な反復練習を自らに課している。それにより、グラブの角度、キャッチする位置とタイミングを、自分なりに見出すことができるようになった。ただ練習ではできても、試合はまた違う。本当なら試合と練習の感覚的な差をなくさなければならないのに、やはり本番の緊張感が筋肉を硬直させ、ミスを誘発してしまう。
ファーストは内野の防波堤となるポジションである。セカンド、サード、ショートがきちんとボールを捌いてくれても、僕が送球をキャッチしないかぎり、アウトとはならない。責任感が重要なポジションだ。それと同時に責任というプレッシャーに負けてはならない守備位置でもある。
やりがいのあるポジションだと思う。
そしてもうひとつ、意外な発見があった。それは相手チームとの接点が多いのもファーストなのである。打者はまずファーストを送球より速く駆け抜けなければ、次の塁へは進めない。出塁した選手は必ず、一塁がベース(拠点)となる。
僕はクリーンヒットを放った選手が一塁に来ると、できるだけ「ナイスヒット」と声をかけるようにしている。試合上は敵味方だが、もっと広い意味で言えば、同じ白球を追う仲間である。チームメイトへの信頼と同じように、僕は相手チームにも常に敬意を持っている。特にマナーのいいチームや選手には、その素晴らしい点を素直に褒めたい気持ちになる。
今日の試合で、ひとつ嬉しい出来事があった。
ナインエールズの
背番号0・夏苅選手が今シーズン初打席でヒットを放ち、ファーストベース上に立った。その時、彼のほうから話しかけてきてくれたのである。
「横井さんのブログ読んでますよ」
その一言に驚くとともに、すぐに嬉しい気持ちになった。
“背番号6の野球道”を、“背番号0の野球道”を志す若き選手が見ていてくれたのだ。そこにチームの垣根など存在しない。……あるのは「野球」という共通項目だけだ。
背番号0の発した声によって、背番号6の背中は春風のなか微笑んだ。
明け方には雨が残っていたこの日、試合ではすっかり野球日和になっていた。