中日ドラゴンズ、荒木内野手の意気込みと取り組みに注目している。
今年のキャンプからオープン戦と“己の限界”に挑戦し続けているのだ。彼が掲げているのは、ひたすらバットを振り、ノックを受け、全力で走り、試合に出続けること。オープン戦も初戦から先発フル出場を希望し、ほぼそれに近い状態を続けている。
30という年齢は――若くもあり、もう若くはない、とも言える――微妙な歳である。この年齢にさしかかったレギュラー選手のほとんどは、我武者羅な練習より身体のケアを大切にし始める。ハリキリ過ぎて怪我をするより、無理をせず身体への負担を減らし、シーズンを通して安定した成績を残すことを重視する。
しかし今年の荒木選手は、レギュラー奪取を狙う若手選手のように、とことん身体を苛め抜き、妥協もせず、無理を承知で“無理”に挑戦している。
これは凄いことなのではないか――。何より、その発想が素晴らしい。
現在のプロ野球界でナンバーワンの二遊間を井端遊撃手と共に形成する、二塁手・荒木雅博。その彼が、今までの実績を一度忘れ、“体力づくり”から始めるというのである。その根底には、シーズンを乗り切る体力を今一度積み上げる、という表面的な理由だけでなく、現在の年齢でとことんまで身体を鍛え上げたら、その先にはどんな光が見えるのか――という己への「投資実験」が含まれているのではないだろうか。
さらに走力に磨きがかかり、光速の盗塁を見せてくれるかもしれない。
守備位置を極限まで下げることで、ライト前の守備範囲を奪ってしまうかもしれない。
下半身の粘りがバッティングの粘りにつながるかもしれない。
本人もどのような結果が生まれるのか、まだ見えていないだろうし、それを見守るファンは尚更だと思う。だからこそ楽しみは増す。
結果はすぐには出ない可能性もある。実際、オープン戦の打撃成績は芳しいとは言えない。開幕後しばらくはそんな状態が続くかもしれない。でもこの時期の凡退は、ただの凡打では無い――そんな期待を抱かせる2008年の荒木選手がいる。
そう思わせるのは、荒木選手の実直な野球観の賜物だろう。発想の非凡さ、人間としての謙虚さを併せ持つ、守備力抜群の内野手が、走攻守それぞれの分野で、さらにワンランクアップするであろうシーズンがいよいよ始まる。