WBCアジア予選の第2戦、東京ドームで観戦した。日本は台湾に勝利した。何といっても初回の多村選手の3ランが大きかった。どの試合でも先制点は大事だが、これほどスカッと爽快な先取点は滅多にない。完璧な当たりで白球はレフトスタンド上段に突き刺さった。背番号6が輝きながらダイヤモンドを一周した。

 試合内容は点差ほどの差はなく、一歩間違えれば、形勢は逆転されていたかもしれない。それでも先制点の優位を最後まで継続できたのは、全員の全力プレーが最後まで乱れなかったからだ。さすが選ばれた野球人である。真剣とはどういうことかをよくわかっている。彼らは野球の怖さをよく知っている。バッティングはまだ軌道に乗れないイチロー選手だが、彼の試合前のキャッチボールはすごかった。福留選手相手に、超全力投球なのである。それだけでナインが締まる。どの選手もイチローを尊敬している理由が、こんなところからも垣間見える。

 今のオーダーはベストだと思う。さすが王監督だ。1番イチロー、3番福留、5番多村に注目と期待しているが、2番西岡と9番川崎が何より素晴らしい。完全に足で引っ張っている。7番小笠原、6番岩村もコンスタントに打っている。8番里崎はチャンスに強い打撃を見せている。そして4番松中はイチローと同じほどの重責を担う4として頑張っている。気がついたら全員の名前が挙がっていた。やはりベストオーダーである。

 セ・リーグの優勝が阪神に決まり、リーグ制覇の可能性がなくなった中日だが、通常は消化試合に数えられる一戦で嬉しい出来事があった。利き腕の怪我で何年もの間、満足に投げることができなかった中里篤史投手が長いリハビリを経て4年ぶりに登板し、1イニングを2三振三者凡退の好投を見せ、しかもプロ入り初勝利を手にしたのだ。

 ドラフト1位の高い評価で、入団時からその潜在能力に大きな期待がかかった選手だったが、ここまでは苦難の道のりだった。ルーキーの年の後半に早くも一軍デビューし、いきなり先発で快投を見せたが打線の強い援護がなく、試合の流れにも左右され、勝ち投手の権利を得ながらチームの逆転負けでプロ1勝目を手にすることができなかった。しかしその評価は変わることなく、すぐに1勝目をものにすることができると誰もが信じていた。しかし翌年のキャンプで転倒し、右肩を強打してしまう。貴重な若手の戦力になるはずが、リハビリに従事する選手になってしまったのである。

 復帰までは思った以上に長い年月がかかった。いくら期待されている選手でも数年におよぶ登板なし状態では、戦力外通告される可能性もゼロとはいえない。そんな危機を背中に背負い、背番号も重い数字に変わり、苦難の道を歩んだ中里投手だが、決して諦めることなく、打者転向も考えず、ひたすら一軍のマウンドに戻ってくる日を胸に努力を続けた。

 今シーズンの夏に再び投げられるようになりたいと目標を掲げた中里選手だが驚異的な回復力で、二軍の復帰戦に登板し、この日10月1日にはなんと一軍のマウンドに戻ってきた。そして今シーズン初登板初勝利である。プロ初登板で勝利を逃した時は、あの1勝が近くに見えてあんなに遠かったのに、この日は1イニング投げただけで念願の1勝が転がり込んだ。……いや、転がり込んだなんていう表現は中里選手に失礼だ。彼は4年をかけてトータルでこの1勝を手にしたのだから。

 落合監督の起用にも頭が下がる。プロ0勝の中里選手にとって今シーズンもそのまま終わるのか、1勝を手にして終わるのかでは、契約更改時の印象も全然違う。もちろん投げられる状態になったのだから契約はしてもらえるだろうが、この1勝は実績としてきちんと評価の対象になる。このワンステップが大きい。球団だけでなく、本人にとっても来シーズンへの大きな布石になり、それはファンにとっても同じである。落合監督はさすが、その点をしっかり心得た名監督である。来期、ローテーションの中心で中田や川上とともに全力でストレートを投げ続ける中里篤史投手の勇姿が見られるかもしれない。

 東京六大学野球で、東京大学が早稲田大学を完封した。学力では日本一を誇る東大も、六大学野球ではトップとはいかず、常に苦しい戦いを強いられている。勿論、他の私立大学には野球に専念できる選手もいて、その条件の差がチームの強さに関係しているのは事実だ。東京大学は、野球をしたいからといって簡単に入れる大学ではない。文武両道でなければ、ここの野球部には入れない。しかし頭がいい分だけ、スポーツは駄目というレッテルは最早通用しない時代になっている。練習時間を多くはとれなくても、方法に工夫をし、東大は徐々に実力を上げてきた。それに世の中には頭もいいけど、運動神経もいい人間も少なからずいる。天は二物を与えたかたちだが、そういう選手と、努力で腕を磨いてきた選手がバランスよく配置されれば、他の五大学にも対抗できるだけのチーム作りができることをここ10年で証明してきたことになる。確かになかなか勝ち星を挙げることはできないが、どこが相手でもいい試合を作るレベルには達しているし、時に金星も挙げてきた。プロに選手も輩出している。そんな東大が早稲田相手に完封勝利をものにしたのは、六大学野球にとってもいいことだと思う。どこが勝ってもおかしくない状況が普通になれば、リーグは確実に盛り上がる。プロ野球もいい、甲子園もいい、クラブチームも、草野球も、リトルリーグもいい。同じように大学野球にも、そこにしかない魅力がある。長嶋茂雄さんが学生の頃は大学野球が花形だったという。今ではなかなか想像できないが、そういう時代もあったのだ。それぞれの舞台に味があり、輝いていれば、ふたたび五輪で野球の姿を見ることもできるのではないか、そう思う。

 中田が期待通りのピッチングをしてくれた。ストレートの走り、変化球の切れ、腕がしなるフォーム、どれをとっても一級品だが、マウンド度胸というか、落ち着き払ったマウンドでの振る舞いが、新人離れしている。シーズン中盤で二軍に居たことが残念だが、開幕近辺と優勝争いの現在、ドラゴンズにとって確実な戦力となっている。背番号20も喜んでいるだろう。今、話題の的の星野仙一、速球王小松辰雄から受け継いだエースナンバー20――そこには、チームの大黒柱となって投げる姿とともに、もうひとつの伝統がある。それは背番号20を背負うエースはバッティングもいいことである。星野も小松も大きなホームランを打つ力を持っていた。現在なら背番号11の川上憲伸がそのバッティングでもそのパワーを引き継いでいるが、中田のバッティングセンスはなかなかのものである。ヒットならいつでも打てそうなきれいなスイングなのである。そして振りも速い。投打にわたる新人の活躍を、あと何度も見てみたい。

 1つのリーグで戦っている限り、絶対にあり得ないのだが、複数のリーグで交流戦を行うと生ずる可能性がある──「勝率5割以下の1位チームの出現」である。現在のメジャー、ナショナル・リーグ西地区がその状態にある。1位のパドレスが64勝65敗で借金1。2位以下のダイヤモンドバックス、ドジャース、ジャイアンツ、ロッキーズも当然5割以下である。どのチームも交流戦で大きく負け越していることがその要因で、このような展開になることが珍しいのは確かだが、数字的には起こり得ることなのだから、何とかこうならない方法がないものか、と考えてしまう。首位チームが勝率4割台というのは、どうにも違和感があるのだ。

 これと同じような違和感は、ワイルドカード(東、中、西地区の2位チームの中で勝率トップの球団)でプレーオフに進んだチームが最終的にワールドシリーズも制してしまう可能性である。実際にマーリンズやレッドソックスがそれを現実のものにした。昨年の日本も、セ・リーグ覇者の中日ドラゴンズが、パ・リーグ2位ながらプレーオフを勝ち上がった西武ライオンズに敗れた。リーグ2位以下のチームが日本一になったのは史上初である。

 プレーオフでシーズン終盤にも盛り上がれることは大いに賛成だ。でもトップのチームがそれ以下のチームに敗れる可能性を有した制度には大反対だ。プレーオフをするなら、トップチーム同士の戦い(前後期制、東西制)にする必要があると思う。もし3位対2位、2位対1位というプレーオフをするのなら、シーズン上位チームのアドバンテージを認め、プレーオフの成績にペナントレースの勝ち星を足してトータル的に上位のチームが勝ち上がる方式(シーズンの勝ち星が有効になる方法)をとるべきだと思う。つまり、こういう感じだ。


ペナントレース

1位 Aチーム 80勝60敗 

2位 Bチーム 73勝67敗


 プレーオフの試合数を「ゲーム差×2+1」試合にする。上の例なら7ゲーム差だから、「7×2+1」=15試合となる。最終的にシーズン+プレーオフ、トータルの勝ち星を計算し、勝ち上がるチームを決める。この場合だと、B位チームがプレーオフを10勝5敗ならば、トータルでAチームの85勝70敗に及ばない83勝72敗となり、Aチームが勝ち上がる。もしB位チームがプレーオフを12勝3敗で勝ち進めば、Aチームの83勝72敗を上回る85勝70敗となり、Aチームが勝ち上がる。大いにAチームが優位ななかでプレーオフが行われることになる。

 シーズン中の勝ち星が無駄にならず、きちんと反映される条件でプレーオフを行うのならば、トータルの勝ち星がトップでないチームがペナントを制する逆転現象の可能性はなくなる。これが大前提だと思うのだが、まだ他にもいい方法はありそうだ……。