さてさて
まぁ、今、このブログで一つの企画をやっています。
いきなり足止め中…
そのまま放置もどうかと思い、とりあえず、何か書いておこうかな、と。
いつだったかな、先週だったかな?あるワークショップに参加しました。
今時珍しく、「座学」でした。
これがとても新鮮で、面白かったんですよ。
で、どういうわけか、そのワークショップに参加されてたほとんどの人が、私が4月に客演した公演を観に来ていただいてたようで、ほとんど私のことを知っているという…
なんとも恥ずかしい感じでした。
で、今日。
そこで知り合った方で、THE TRICKTOPS さんという劇団の主宰さんがおりまして、そこでもワークショップをやっているということでお誘いを受け、行って参りました。
やはり、数人の方が、4月に私を観たと。
もう、どう反応してよいか、分かりませんね。
なんだろう?なんか恥ずかしいですね。
そんな歳でもないんですが…
中々楽しかったですよ。
ゲーム・エチュード中心のもので、どこまで内容を漏らしてよいものか分からないので、これくらいにしておきますが、要するに、楽しかったってことですよ。
また行こうっと。
私たちもワークショップを行っています。
座学1、エチュード1、台本8みたいな感じで。
参加してくれた人達に、「また来たい!」と言われるように、そこそこ頑張ってます。
次は26日の土曜日。
その日用の台本も、もう書きました。
うわぁ~、この台本、みんな楽しんでくれるかなぁ~
毎回、台本渡す度に、ドキドキ…
れっつら、ごー
林 里容でした。
ハプニングだらけ
今晩は。
深夜3時半を過ぎ、頭がぼーっとしてます、どうも僕です。
このブログで、何か企画物をやろうということになり、先ず手始めに、テーマを決めて何か書こうじゃないかということになりました。
何を書くか。
まぁ、詩だったり、小説だったり、俳句だったり、短歌だったり。
なんでもいいわけですよ、表現の世界なら。
で、一発目のテーマは、「月火水木金土日」。
これらの一文字を、順番にテーマとしていく。
トップバッターは、私でした。
最初の「月」をテーマに、ちょっとした小説を書いてみました。
「月」だからと言って、タイトルが「月」じゃないといけないわけではないのです。
「月」という文字が入っていればいいのです。
なんというユルさ。
しかし、これが初めての小説です。
はい、処女作です。
所詮、素人の書いた小説です。
ごちゃごちゃ言わずに、暖かく読んであげてください。
そして優しい、甘やかすような声を掛けてあげてください。
いろいろ大変でした。
途中まで書いたものが、誤って消去されてしまったり。
なぜか、このアメブロのページだけがフリーズし、全然保存もアップも出来なかったり。
仕方ないから、一度前のページに戻ってから、再び戻ると、また消えていたり…
もうひっちゃかめっちゃかで、全てを捨てて旅に出ようかと思いました。
しかし、頑張ったかいあって、なんとか処女作をアップすることが出来ました。
旅に出なくて良かったです。
まぁ、そんな感じで書き上げたので、ひょっとしたら誤字脱字があるかもしれません。
えぇ、見直してませんから…
だって、もう4時近いんだもん。
ま、これで一安心です。
次は照屋君の番。
次のテーマは「火」。
さぁ、一体どんな表現をしてくれるのか。
お楽しみに。
私は、10月公演の台本と、今月のワークショップ用の台本に取りかかろうと思います。
では、また「木」でお会いしましょう。
林 里容
その1「月」 『香月~かげつ~』
香月とはいつも一緒に遊んでいた。
男とも、女ともとれるその風貌は、幼い僕ですら時折見入ってしまうほどだった。
遊ぶ場所はいつも、僕の家の僕の部屋で、僕の持ってる玩具で遊んでいて、香月は親から玩具を買ってもらえないのか、全ての物を珍しそうに、そして一つ一つを大事に扱っていた。
一度だけ香月に、何か玩具を持ってないのか聞いたことがある。その時香月は笑いながら「持ってないよ。」と答えた。
「ここにある物は、全てが初めてだ。」
香月はそう言って、とても楽しそうに僕の玩具で遊んだ。そして僕にこれはどうやって遊ぶものかと、よく聞いてきた。その時の香月の顔が、本当に楽しそうで、僕は一つ一つ丁寧に教えてあげた。
丸い満月のような輝きを持つその大きな眼を、更に大きく見開いて、うんうんと顔を大きく上下に動かしながら、今にも食いつきそうな勢いで僕の説明を聞いてくれた。
小学校に上がってからも、香月とは一緒に遊んでいた。だが、今思うと、香月が教室にいた記憶が全くない。実は身体が弱くて、ずっと保健室で授業を受けていたのか。実は周りからいじめられていて、どこか別の教室で特別に授業を受けていたのか。とにかく、香月と一緒に教室で過ごした記憶は無いのだ。
しかし、家に帰ると必ず香月がいて、僕の部屋で一緒に遊んでいた。
やがて僕にも香月以外の友達ができ、その友達と遊ぶことも頻繁になってきた。すると香月は、今度は学校の門を出た、すぐのところで僕のことを待っていた。
「帰って正太のお部屋で遊ぼう。」
「ごめん、今日は成瀬君たちとサッカーする約束してるんだ。」
そう応えると香月は、じゃあ仕方ないね、少し微笑んで去って行った。その時微笑んだ顔は、寂しそうにもみえたけど、当時の僕はそんなこと気にもせずに、白い六角形と黒い五角形を規則的に縫いこんだ、当時の僕たちの頭の大きさとさほど変わらない球体を、泥まみれになりながら、必死に追いかけていた。
それからも香月は、毎日僕のことを、学校の門の外で待っていた。
「正太、一緒に遊ぼう。」
「今日は、ニノ君の家で、皆でゲームをするんだ。」
「ゲームなら、正太の家にもあるよ。」
「ニノ君の家には、うちには無いゲームがあるんだよ。」
「うちに無いゲームって。」
「とにかく、今日はニノ君の家に行くから遊べない。」
僕はそう言って、香月から逃げるようにその場から去った。
香月はいつまでたっても、何も知らなかった。クラスの中で流行っている遊び、漫画、ゲーム。それらを知らないことは、小学生にとっては正に致命的だったし、それらを1から説明することは、苦痛以外の何物でもなかった。
いつしか僕は香月のことを避けるようになり、やがて香月は僕の前に姿を見せなくなった。
その後、香月とは会うことなく小学校を卒業し、そして更に二十年が過ぎた。
僕は今、大手の出版社に勤めている。僕の世代の就職活動シーズンは、それは悲惨なものだった。就職率は過去最低を記録し、フリーターや、中には就職浪人という名のニートが大量に溢れ出た。そんな中、こんな大手の出版社に就職できたのは、正に奇跡だったとしか言いようがない。その年にこの会社から内定を受けたのは、僕一人だけだった。なぜ僕だったのか。上司からは、運が良かったんだよという、まるで抽選で選ばれたかのような返事しか返ってこなかった。
今日もいつも通り、朝9時に出社。1時間ほど内勤を行い、担当作家の元へ。思いのほか打合せに時間がかかってしまい、少し遅めの昼食をとって、二件目。
僕は児童書の担当で、主に絵本作家を担当している。二件目に伺ったのは、横溝先生といって、この業界ではお局様である。入社当時、上司に連れられて挨拶に行った際、なぜか僕のことを気に入ってくれた。それ以来、僕の担当作家の一人となった。
先生のお宅に到着すると、アシスタントの方が出迎えてくれ、書斎へと案内してくれた。先生は執筆中だった。
僕は邪魔にならないように、来客用のソファーに座り、アシスタントの方が運んでくれたお茶を、音を立てないよう、静かにすすっていた。
「ごめんなさいね、いつもぎりぎりになってしまって。」
突然の先生の言葉に、危うく口に含んだばかりのお茶を、吐き出しそうになった。
「いえ、気にせずに進めてください。焦って良くない作品が出来るよりは、遅くなっても素晴らしい作品が生まれる方が、読者は喜びますから。」
「あなたの娘さんのように。」
僕には、今年四歳になる娘がいる。娘は横溝先生の絵本が大好きなのだ。僕は静かに、はいと答え、またお茶をすすった。
先生が筆を置き、出来上がった作品を僕に手渡してくれたのは、それから約2時間が経ってからだった。僕はアシスタントの方が気を使って出してくれた、2杯目のお茶を飲み終わったところだった。
「すっかりお待たせしてしまったわね。」
「いいえ、大丈夫です。」
僕は先生の手から受け取った、出来立てほやほやの作品に目を通した。
「どうかしら。」
「素敵な作品ですね。きっと子供たちも、そしてこれを子供たちに読んであげる親御さんたちも、引き込まれると思います。」
「ありがとう。」
「それでは、確かにお預かりしました。」
「よかったら、ご一緒にお食事でもいかが。」
「ありがとうございます。しかしせっかくですが、今日はこの後、小学校の同窓会がありまして。」
すいませんと頭を下げ玄関に向かうと、後ろから先生に呼び止められた。振り返ると、先生が一冊の絵本を持ってきた。
「これ娘さんに。相当昔のものだから、気に入っていただけるか分からないけど。」
丁重にお礼を言い、そのまま会社に向かった。そして編集長に横溝先生の新作を渡し、会社を出た。
大通りに出てタクシーを拾い、同窓会の会場へと向かうタクシーの中で、先生から頂いた絵本を開いた。
それは座敷わらしの話だった。その座敷わらしは、満月の夜にだけ主人公の男の子の前に現れる。そして男の子と友情を育んでいくのだが、やがてその男の子も大人へと成長し、座敷わらしの姿が見えなくなって、忘れていく。しかし座敷わらしは、大人になった主人公の側に実はずっといて、幸せに導いていくというお話だった。
僕は静かに本を閉じ、傷つけないよう大事に鞄の中にしまった。そしてゆっくり目を閉じ、旧友たちとの再会を心待ちにした。
―香月―
ふとその名前が、頭の中を過った。
もう二十年以上も、記憶から消えていた名前だ。そして徐々に当時の記憶が蘇る。やがてその記憶は鮮明な映像と化した。
罪悪感が生まれた。香月に会いたい、会って謝りたい。そしてまた一緒に―
僕は運転手に急ぐように頼んだ。今日のこの同窓会が、その最後のチャンスなのだ。僕の心臓の鼓動は、いつになく高鳴っていった。
会場に着くと、どうやら僕が最後だったらしい。皆乾杯用のグラスを目の前に、僕の到着を今か今かと待っていた。時間を気にしていなかったわけではないのだが、横溝先生のお宅で予想以上に時間を取ってしまっていたようだ。
当時の担任だった先生の乾杯の挨拶が済み、僕の元に来たのは少し小太りの、頭こそ薄くはなってないものの、典型的な日本人と言われそうな感じの男だった。
「正太だろ。久しぶりだな。」
「成瀬か。」
「そんなに驚くことないだろ。」
驚かないわけがないだろ。当時サッカー大好き人間とは、到底思えない風貌なのだ。成瀬には悪いが、年を重ねるということの重みを、改めて知った気がする。
「よう。」
ふらっと僕たちの前に現れたのは、ニノこと二宮だった。細身の長身で、照明に反射するような光沢のあるスーツ、今時のシャレた眼鏡、いかにもイタリア製を思わせるような革靴。彼曰く、ゲーム好きが高じて、その道をひたすら突き進み、今やゲーム開発の重要なポストを与えられているらしい。
「正太は、今何やってんの。」
僕は、運の良さで出版社に勤めていることを伝えた。
「おまえらは、運と努力であの就職氷河期を乗り越えたんだな。」
成瀬がぼそりと呟いた。成瀬はあの就職氷河期を超えられず、二年の就職浪人を経て、やっとの思いで小さな健康器具を扱う会社で、営業職を見つけたらしい。
「ところで、香月は来てないのか。」
僕は本題に入った。当時、男とも女とも見える顔立ちだった香月、恐らく今はそれはそれは美少年、いや、美青年になっているだろうと思っている。しかし成瀬を見た後だ、あまり期待をしてしまうと、それを裏切られた時のショックは、それはとても言葉では表現できないものだろう。そう思いながらも、やはり過去の蘇った記憶を頼りに、美しい顔立ちの人間を探してしまう。
青年―
香月は男だったのか。確かに仲良かったし、いつも一緒にいた。当時の子供は、男の子は男の子と、女の子は女の子と遊ぶというのが、常識であり、暗黙のうちに決められていたことだった。
だからか、僕は香月のことを、心のどこかでずっと男だと思っていたことに気付いた。だが、今思うと本当に男だったのかどうか、はっきりとした確信が持てないでいた。
「香月、そんな奴いたっけ。」
ニノが意外な答えを言った。
「いや、覚えてないな。」
成瀬がそれに続く。
「聞いたことない名前だな。中学か高校の同級生じゃないのか。」
ニノはそう言うが、そんなはずはない。僕は小学校に上がる前から、香月と遊んでいたのだ。しかしここで一つの考えが浮かんだ。香月とは学校の中では一度も会ったことがない。ひょっとしたら香月は、別の学校に通っていたのではないだろうか。
そう思ってしまうと、なんだか急に気が抜けてしまった。もう香月とは会えないのだ。
気のせいだったと二人に告げ、昔話に花を咲かせた。
帰りのタクシーの中で、僕はぐったりしていた。同窓会という集まりは、なんとも言えない疲れが、終わってから押し寄せてくる。
結婚できない人、頭が薄くなってしまった人、太ってしまった人、恋した相手の大幅な変わりよう、僕たちの時代の就職氷河期を乗り越えられなかった人。それらの人達への、妙な気遣い。当時のままならいくらでも、なんでも言えたかもしれないが、さすがに二十年も経ってしまうと、そうもいかない。
そんな中ニノは、出世街道を進んでいたし、見た目も華やかでオシャレだったせいか、いろんな人達から声をかけられていた。ニノはそれをうっとうしく思っていたらしく、結局最後には僕と成瀬の元へと戻ってきた。そして二人と連絡先を交換して、次は三人だけで会うことを約束して別れた。
「おかえり。思ったより早かったわね。」
僕の帰りを迎えてくれたのは、二つ下の妻、明日香だ。明日香とは会社で知り合った。僕の二年下の後輩で、そのさばさばした性格のせいで、割とすぐに仲良くなり、気がつくと恋人と呼ばれる関係になっていた。そして五年前に結婚した。結婚してからは、明日香は専業主婦をしてくれている。
「穂ノ香は。」
「部屋で多分絵本読んでる。」
「まだ起きてるのか。」
「誰に似たのかしらね。」
いたずらに明日香が言う。僕はそんな明日香の言葉を聞き流し、鞄から横溝先生から貰った絵本を取り出し、子供部屋に向かって歩いた。
「何、それ。」
「横溝先生が、穂ノ香にってくれたんだ。」
「じゃあ今度、何かお礼しなきゃね。」
子供部屋の扉を二回、軽くノックする。もう0時前だ、四歳の子供ならとっくに寝ててもおかしくない時間だ。だがそんな考えとは裏腹に、元気な声でどうぞと言う声が聞こえた。
「ただいま。」
「おかえりなさい。」
「まだ起きてたのか。」
「絵本読んでたの。」
子供部屋の中は、いつもいい匂いがする。明日香が何かしているのか、部屋が日光を取り込みやすい位置にあるせいなのか。まるで身体全体を優しく包み込んでくれるような、全てを受け入れてくれるような、なんとも言えない落ち着きがあった。
穂ノ香は床に寝そべって、両腕で上半身だけを起こした状態で、その腕の側には一冊の絵本があった。両親の血をしっかりと受け継いだようで、我が娘は大の絵本好きだ。
「お土産だよ。」
僕はそう言って、横溝先生から貰った絵本を穂ノ香に渡してあげた。穂ノ香は僕の予想を上回る喜びを見せた。そして早速先生から貰った絵本を床に置いて、最初のページをめくった。それを見て、僕は子供部屋を後にしようとした。
「じゃあ次は、穂ノ香が香月に絵本読んであげるね。」
僕は立ち止り、瞬間的に穂ノ香の方を見た。そこには確かに、穂ノ香しかいない。そして穂ノ香は声を出して絵本を読んでいる。誰かに読み聞かせるように。
「香月って、月の香って書くんだ。」
「月の香。」
「うん。月の匂い。」
「月に匂いってあるの。」
「月は優しい匂いがするんだよ。」
「優しい匂いって。」
「例えば正太が落ち込んでいる時や、哀しい気持ちになってる時、そういうのを忘れさせてくれる匂いだよ。そしたら正太は、元気になれるんだ。」
「元気に。」
「うん、元気になると、前向きになれる。」
「前向き。」
「強くなるってことだよ。」
「じゃあ僕は、香月と一緒にいると強くなれるんだね。」
「うん、だからずっと正太の近くにいるよ。」
目の前で、穂ノ香が絵本を読んでいる。部屋の窓から黄金色に輝く満月が見える。
「早く寝るんだよ。」
僕はそう言って子供部屋を出て、扉をそっと静かに閉めた。
閉まる直前に中から、穂ノ香の元気な返事と一緒に、聞き覚えのある懐かしい声が僕の耳に届いた。
おわり
BAR.企画ブログその1「月」
『香月~かげつ~』
著・林 里容