私は、昨年解散してしまった全国交通事故遺族の会にいた時、
ワーキンググループという集まりに加わらせてもらっていました。
会の中でも、行政や立法に働きかけていくメンバーの集まりです。
一番若輩かつ一番新参、かつ時々お休み、という状態でしたので、
加わらせてもらったなどというのも本当はおこがましい話ですが、
そこでご一緒だった大野さんというご夫妻がいらっしゃいました。
11年前、長女の睦実さんをトラックひき逃げで殺された方です。
その大野ご夫妻は「ひき逃げ遺族の会」を立ち上げられています。
今回そのHPを作ったと聞いたので、共有させてもらいます。
ひき逃げ遺族の会HP
http://www.ac.auone-net.jp/~hkngizk/
交通犯罪には、「悪のマニュアル」というのがあります。
むろん本になって刊行されているものではありません。
悪人の悪知恵の集大成とでも言うべきものです。
現時点では、加害者の自己保身には極めて有効なマニュアルです。
(法改正がされない限り、きっといつまでも有効であり続けます)
飲酒運転をして人をひいてしまった場合はどうするか?
そのまま現場にとどまって、本来すべき救護活動をしていたら、
危険運転致死傷罪で裁かれ、相応の重罪判決が想定されます。
そこで自分の利益と人生キャリアの継続を最優先したい場合、
加害者となってしまったら、どうすればいいのか?
逃げてしまえばいいのです。
逃げて、逃げおおせてしまえば無事完了。
何も変化のない日常生活を継続していくことができます。
あとから検挙されれば、こう言えばいいのです。
「気付かなかった。人を轢いた?そういえば動物だったかも」
すぐ捕まって、飲酒がばれたら、こう言えばいいのです。
「あの後、怖くなって家でお酒を飲んでいただけだ」
そして、そのしらじらしい証言を元に調書が作られ、
その嘘臭い調書と証言を元に、寛大な判決が出るのです。
あるいは最悪の場合には、不起訴処分で終わるのです。
まさに正直者が馬鹿を見る典型構図です。
しかし現実は、そうなっているということです。
たまたま熱心な警察官や検察官に当たればいいのですが、
そうでない場合・・・考えただけでぞっとします。
逃げ得になるから、ひき逃げしようとする者が後をたたない。
交通犯罪は、それ自体が犯罪です。
しかしひき逃げの場合、その犯罪行為にさらに輪をかけて、
法律で義務付けられている救護活動をあえて放棄し、
助かっていたかもしれない生命を見殺しにしているのです。
これは凶悪犯罪と言わなければならない重罪だと思います。
ひき逃げは飲酒運転に付随するものばかりではありません。
そればかりが注目されますが、平常時のひき逃げもあります。
大野さんの場合も、当時小学5年生だった睦実さんは、
朝の登校時間中、業務中のトラックにひき殺されました。
加害者はその瞬間、人をはねたとわかったにもかかわらず、
気付かないふりをするのが我が身の得策ととっさに判断し、
ブレーキも踏まず、前輪と後輪で立て続けにひき潰し、
そのまま冷静に法定速度を保って、離脱を図ろうとしました。
加害者が、なぎ倒したとわかった瞬間に停車していれば、
前輪と後輪でさらにひき潰すなんて非道を行わなければ、
あるいは睦実さんは怪我だけで済んでいたかもしれません。
後ろの車が追跡してくれたおかげで加害者は捕まりましたが、
卑劣極まりない考えの持ち主です。魂が完全に腐っている。
HPでは自転車のひき逃げにも触れていただいています。
自転車もそうです。
自転車の場合、ひき逃げの逃げ得度はさらに高まります。
自転車で人をひいて、加害者がそのまま逃げた場合、
おそらく100%捕まらずに済むのではないでしょうか。
警察が、人とお金と時間を割いて、全面的な徹底捜査を
展開してくれるイメージは、私にはどうしても浮かびません。
大切な家族を殺され、あるいは愛する恋人を殺され、
犯人もわからないまま、人知れず悔し涙を流している人が
一体どれくらいいるのだろうと思わずにはいられません。
交通犯罪は悪です。
ひき逃げはそれにさらに輪をかけた二重の悪です。
どちらも絶対に許してはならないことです。
今やっと法律が、悪のマニュアルに翻弄されていると気づき、
変わろうとしていますが、一日も早い法改正を願うばかりです。
どう変えようか・・・などと延々議論している間にも、
悔し涙を流すことになる被害者遺族は生まれ続けるのだから。