「もう一つの人類」-5(島嶼化とは)
 
リアン・ブア1号の発見から6年、それ以降も何人かの骨が発見されまいた。
同時に動物の骨や手の込んだ石器も発見されました。
ホモフロレシエンシスは一体どのような暮らしをしていたのか、少しずつ明らかになってきています。
 
「大きな洞窟ですね。ホモフロレシエンシスも、この鍾乳石の垂れ下がる光景を見てきたんですかね。」
「身長が1メートルしかありませんから、もっと大きく見えていたんでしょうね。」
「私たちホモサピエンスの祖先たちは、4万年前にはこの辺を通過して、
  オーストラリアまで達していたはずですが、ホモフロレシエンシスとは出会っていたんでしょうかね。」
「証拠が出ていないのでわからないんですけど、このフローレス島の洞窟では、
  ホモフロレシエンシスだけが見つかる層と、ホモサピエンスだけが見つかる層と、
  別々の層から見つかったということですので、もし同じ層から見つかっていたら、
  出会っていたかもしれませんね。今のところ分かりません。」
 
今日はCGで、私たちをホモサピエンスの代表として、ホモフロレシエンシスと出会ってみます。
リアン・ブア1号さんです。
 
「こんにちわ。」
「やっぱり小さいですね。比べると私のおへそくらいですかね。手が長いですね。
  重心は低くて、足はとても大きいんですね。」
 
なぜこれほどにまで小さいかという仮説があります。島嶼化(とうしょか)したという説です。
島嶼化というのは、小さな島なので食べ物が非常に少ない。
その中で体が大きいといっぱい食べなくてはいけなくなる。
エネルギーはそれに見合って必要だから、栄養不足では絶滅する恐れがあります。
だから体を小さくしてエネルギーを少なくする。軽自動車のように燃費よく測る戦略なのです。
これを島嶼化といいます。

 

「もう一つの人類」-4(身長1メートルのリアン・ブア1号)
 
「大人の骨だと分かったときは、みんなびっくりしました。
  大人の骨であれだけ小さな骨は、誰も見たことがなかったからです。」
 
その後周辺から、ほぼ全身の骨が見つかりました。リアン・ブアで最初に見つかったので、
「リアン・ブア1号」と名付けられました。身長はおよそ1メートル。
性別は女性だと考えられますが、まだ特定されてはまいません。
重心は低く、体を支える足もがっしりとしています。
この骨をもとに「リアン・ブア1号」を復元します。私たちと異なる特異な体形をしています。
長い腕に短い足。チンパンジーのように木登りが得意だったのかもしれません。
そして大きな足、2足脚歩行も安定していたとみられます。
木の上と地上と両方に適したような体形です。そして最大の特徴は、背が低いこと。
身長は1メートルほどです。これまでに知られている最も小さな人類は、
320万年前のアウストラロピテクスの女性ルーシーです。彼女の身長もおよそ1メートル。
1万8000年前に生きた「リアン・ブア1号」は、私たちより320万年前のルーシーに近い体形です。
まるで先祖返りしたような姿。不思議な進化の道のりがうかがえます。
 
一体どんな人類なのか疑問が起こりました。馬場さんは全く新しい人類だと考えています。
 
「ホモフロレシエンシスは、私たちホモサピエンスや今までの原人とも違います。
  最も違うのはこのサイズです。頭も小さい、脳容積も小さい。私たちの3分の1位しかありません。
  普通原人というのは、半分かそれ以上3分の2くらいあるわけで、まるで違うというわけですね。
  身長も1メートルちょっとですから、まず大きさが違います。
  このサイズというのは、300万年くらい前の猿人なら普通のサイズなんですよ。
  300万年前の人と同じような特徴を持っていた人が、1万7000年前まで生きていたということは全く驚きです。
  私たちの共通の常識で、アフリカで発生した人類が進化してきて、
  私たちのようになるという、ある程度一本道の進化という道のりを考えてきたわけですよね。
  ところはそれとは全然違った形態があり得るんだと…。
  私たちの知識とか理解が、小さくてつまらないものであったかを教えてくれます。
  ですからもっともっといろいろあって進化していく道別れがあって、
  私たちがいまここに残っているんだという、そういった大きな流れがあったことを示してくれると思いますね。」

 

「もう一つの人類」-3(2003年9月頭蓋骨を発見)
 
「このリアン・ブアには、15メートルを超える土が堆積しています。
  その土を掘り、かつて人類がここで暮らしていた証拠を見つけ出すのが私たちの仕事です。」
 
手作業で土を掘り起こし運び上げます。調査が始まって以来、こうして発掘が続けられてきました。
掘り出した土には、過去を知るための貴重な手掛かりが潜んでいます。
水で流しフルイにかけて詳しく調べます。この日もネズミやコウモリ、カエルの骨が見つかりました。
 
地元の研究者と調査を進めるオーストラリアの考古学者モーウッドさんがここへ来た最初の目的は、
ホモサピエンスがオーストラリアに渡ったルートでした。
 
「この島で研究を始めた狙いは、ホモサピエンスがいつここへやってきたのか、それを知るためでした。
  しかし驚いたことに、もっと古い人類がここに住んでいたことを目の当たりにしたのです。」
 
その発見は2003年の9月のことでした。
洞窟の地下6メートルから、人のものと思われる骨が見つかったのです。
それはほぼ完全な形を保った頭の骨でした。骨が見つかったのは、1万8000年前の地層でした。
 
「ホモフロレシエンシスが見つかったのは、どれくらいの深さだったんですか。」
「目の前、ちょうどこの辺りです。この地層は水気を多く含んでいて、
  骨は濡れたビスケットのようにもろくなっていました。
  ハケで土を払おうとするだけで崩れてしまうような状態で、固めるために凝固剤を上からかけ、
  2日置いてしっかり固まってから掘り出したんです。
  とても小さな頭で、最初は幼い子供の骨だと思っていました。」
 
そう思ったのはトーマスさんだけではありませんでした。掘り出された頭の周囲はおよそ41センチ。
調査隊のメンバーは、誰もがホモサピエンスの子供の骨だと思いました。
しかし、下あごに生えそろった歯が思い込みをくつがえしました。
左右とも第三臼歯、つまり親不知が生えていたのです。それは子供の骨ではなく大人の骨でした。