クロッカスが咲いている。

寄せ植えのようなパンジーより、無造作に植えられているクロッカスの方が好きだ。

早い春を告げてくれる花。

花屋の店先も華やかになってきたけれども、桜はまだまだ固いつぼみ。

花開くまであと何日。

指折り数える楽しみ。

今日の雨は、もう春のにおいがした。



4月の始まりは、静かだった。

3月は冬の名残りがこれでもかというくらいにやってきて、だけどすぐに春の大地にせき止められた。

まるで伝わらない私の言葉のように。

桜の木にはいつわりの雪の花が咲いた。


黄砂にけぶった空は、雲が広がる空とも違い、霧にかすんだ街とも違い、見えるはずのものを見えなくさせてしまうようだ。

そういえば最近は、きれいな夕暮れを見ていない気がする。


4月になったからといって、特に変わることのない私の暮らしだけれども、見えないものを意識して暮らしていこう。



山はじらじらとした雪雲に覆われていようとも、里には雲の間隙を縫いながら日差しが差してくる。

風に舞う雪はもはや降り積もるだけの力を持たず、はかなく消えていくだけになってしまった。

今日は彼岸の入りなので、お墓の周囲には車の列ができていた。

菊の花よりも黄色い水仙の花をお供えしたいなと、花を売る女性が並べている花たちを見て思った。

春の始まりを告げる色は、黄色が似つかわしい気がする。

そろそろ桜の開花が待ち遠しくなる季節。

たとえ暖冬といえども、春に咲く桜はひとつの区切りだと思う。

お気に入りの桜を求めて、旅をするのもいいかもしれない。

山の雪が風に乗って里に舞い落ちてくる。

風花。

岩手ではあまり見ることがないような気がするのだけれど。

まぶしい空からひらひらと桜の花びらのごとく舞い落ちる、はかない雪のひとひらひとひら。

まるで虹のようだ。

長いこと見ることが叶わないから。


3月なのに、雪景色を見てほっとする。

杉木立に積もった雪が風に吹かれて、ざわざわと雪を散らす。

真白くてふんわりとした感触。

メレンゲのような。

3月だから、雪が積もっても気持ちは落ちない。

もう春の準備は始まっていたのだから。

行きつ戻りつしながら、変わっていくのは、季節だけではないだろう。

赤いマンサクの花にも白い雪がふんわりと積もっているだろうか。

このまま春がやってくるのだろうか。

しあわせな冬だった。

真冬日がなくて、雪が少なくて。

青空がいっぱい見られて。

窓ガラス越しの日差しがあたたかくて。

私の心も充分にあたたまった。


東の空に、ほんのりと白い月。

山際の雲は、ほんのりとピンクだったり薄紫だったり。

真っ白な飛行機雲が、まっすぐに伸びていく。

夢が叶う先に、たぶん。


近くに見える山の色も春らしくなってきた。

美しい花の鮮やかな色より、野山がうっすらとピンク色を帯びてくるような春の始まりが好きだ。


今年は春を探しに出かけてみようか。

少し遠くへ。

もっと遠くへ。



冷え込んで良く晴れた日は、空気が澄んでいるせいか、空の色がとても美しく見える。

雪を頂く岩手山の陰影も何となく違う。

日差しは春を思わせるのだけれども、今日の風は肌に突き刺すような冷たさで、冬というには物足りなく、春というには暖かくない。

こんな気候は今までなかった気がする。


夜は星が降る空が広がっていた。

星の名前はわからないけれども、美しいものは美しい。

宝物のように。


日が長くなった。

薄いピンクや紫の雲がふんわりと空に浮かぶ夕暮れ時は、春がちょっとずつ近づいている気配を感じてうれしくなる。

この冬は雪が積もらないまま終わるのかと思ったのだけれども、普通の冬景色がやってきた。

白い雪。ふわふわの。

雪は冷えて固まって汚れないうちに融けてしまうのがいいのかなと思う。

なんだか、今年の冬は気分がよい。

「霙-mizore-」は青森県出身のサガユウキのデビューシングルです。

初めて聴いたのはFM岩手のラジオでした。

雪をイメージさせる曲は多くありますが、こんなに聴き入った曲はあまりなかった気がします。


霙は雪になれない泪の粒。


雪になれないというフレーズがいつまでも私の心を捉えて離しません。

北国の冬を知っている人ならではの歌でしょう。


この冬はまるで北国のようではないのだけれども、また灰色の空から霙が舞い落ちる頃にはこの歌を聴くと慰められそうです。



日曜日に積もった雪はもう融けてしまった。

季節は1ヶ月前倒しかなと思えるような毎日。

冬に冬らしくないのはよくないのだろう。

昨冬の大雪も極端すぎるけれども。

それでも2月だから。


自然に逆らって生きる人が多くなりすぎたから、きっと地球も困ってしまっているのだろう。

身を任せることで自由になれることがあるということ。


たまった水をかき回したら、さざ波が立った。

私の生活と私の心に。

じっとして季節の移り変わりを眺めているだけでは、何も変わらないし、変われないのだ。