舞台 蘭RAN 緒方洪庵 浪華の事件帳 | アクエリアス

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舞台『蘭 RAN ~緒方洪庵 浪華の事件帳~』

若き日の緒方洪庵と在天の姫・東儀左近が、禁書本に纏わる大坂(当時の表記)の闇を切り裂いていく痛快娯楽時代劇。


脚本は松田健次、演出は錦織一清。
大阪松竹座で幕を開け好評を博したようだが、東京の新橋演舞場ではたった5日間の上演。
2.5次元世代の若手俳優も投入され、とり急ぎ確保。下手花道のすぐ横の席で、観やすいようで観にくかった。






原作は築山桂の「禁書売り」など、3つのエピソードを再構築し纏め上げたストーリー。
緒方洪庵はともかく、聞き馴染みのない「在天楽所」の説明も少なく、東儀左近ら人物の過去話も省略。オリジナルキャラも含めて、登場人物に興味はもてど、あまり思い入れが湧かなくなる話でもある。

シリアスストーリーのハズなのに、ギャグやコメディ満載のエンタメ人情喜劇色が強くて、苦手な関西系お笑いにも心弾まず。
昨日まで観た壮絶な時代劇「無限の住人」に比べたら、あまりに緩い展開とぬるい話。
退屈でつまらなくて、疲れがこみ上げてくる舞台であった。アカン、私にはこんなエセ時代劇は合わんわ。
前から5列目だったのに、度々ウトウトしてしまうほど、眠気に勝てない浪花節だった。

目玉は、藤山寛美の孫・藤山扇治郎と元宝塚トップスター・北翔海莉の共演。
お初の藤山さんは、安定感ある芝居でアドリブが頼もしい。だが背がちっこくて、愛嬌ある顔も好みでなくて、話し方もたるっぽくて、殺陣もなければ医術を見せることもなく、ただセンターだけの活躍だけ、全く興味がわかない。
北翔さんは藤山さんと並ぶとデカさが際立ち、花道に立つとまさに壁の如し。若侍姿は華やかで凛々しく、台詞使いも流暢で、歌声も艶やかに披露し、後半の二刀流もサマになっている。残念だったのは、章が言う「花の香り」が近場にいても全然しなくて、"女"を感じさせなかったこと。北翔さんは昨年の「パジャマゲーム」の女性役が可愛らしく映ったので、また凛々しい女役で観たいな。
劇中で北翔さんの歌と踊りにシンクロして、藤山さんもバックで舞い踊る場面は、息ぴったりの関係性が現れて印象的。

多彩なキャスト陣を紹介するのは、お目当ての荒木宏文。叫び口調で、声が掠れ気味で喉が心配。完全に「つかこうへい」モードで、冒涜から気が抜けてしまった。
アラヤンは左近のそばに控える楽人仲間の若狭として暗躍、アクションでも活躍するが、黒装束の忍者姿よりも、ぶっきらぼうな若侍姿のほうが似合っててカッコイイ。劇中で2階上手から現れ、饅頭を配るなど、予想外のパターンにはビックリ。

久本雅美と石倉三郎のボケツッコミの熟年夫婦は面白いが、久本さんがお笑い芸人要員で、思々斎塾の存在が薄っぺらく思えてしまう。
息子・耕介役の上田堪大が、芸達者な二人を相手にテンポよく応対、頼りなげだが愛する女を護ろうとする真摯さが健気だ。緒方章もあれだけタッパがあれば、もう少し華があったろうに。
佐藤永典は瓦版屋三吉として、声を張り上げ盛り上げに頑張る。休憩後の冒頭もお客さん相手にアドリブを発揮、経験値を発揮する。ただ三吉の正体が見どころの一つでもあったのに、フライヤーに早々と出されていたので興ざめ。着流しの浪人姿も色っぽく見え、さとちゃんの新たな魅力開眼というべきか。

手先の半治の渋谷天笑が、同心よりも目立っていたが、不意に過去話が出てきたりと、重要キャラなのかそうでもないのか。
山城屋忠兵衛の神保悟志はいかにもな悪人面だが、みんな最初はいい人だと思って接してるのもわざとらしい。

あれだけの悪事を働いて、死人も出させといて、いっさい裁きもなく罪を償わせないところが、一番歯痒かった。
現代の文書偽造とか、政治家や高級官僚を示唆しながら、こういう鈍臭い結末。江戸時代だからこそ、現代に成り代わって、公明正大な裁きで罰を与えてほしかった。

それにしてもたまに流れる昭和のムード歌謡が、内容にあまり合っていないのが気になる。「サラスポンダ」とか唐突に耳に入ってきた時は苦笑しそうだった。選曲や音響にももっと工夫がほしい。

医術を本腰を入れて学ぶため、江戸に旅立つ章。見送る左近。愛と感動の別れではあろうに、ビジュアル的にあまり唆られない。結局この二人には、友情はあったが、愛情は生まれなかったようだ。

シリーズものだから、続編とか作られそうだが、キャス変でもっとシリアスにしっかりと作り込んで頂きたい。

アフタートーク。
天笑さん司会で、藤山さん、北翔さん、荒木さん、佐藤さん、上田さんと、若手イケメン陣営。
北翔さんの話題オンリーで、とアラヤンが牽制していたが、結局みんな満遍なくよく喋る愉しい雰囲気。
お気に入りの台詞、というより、難しい台詞について、話が弾む若手たち。やってみたい役では、北翔さんが真っ先に口火を切り、アラヤンもやって見せたりと、大盛り上がりで終了した。
藤山さんが意外とおとなしくて、北翔さんが誰よりも気さく。上田さんは天笑さんと仲良しか。アラヤンもさとちゃんも弁舌達者だった。
本編なんかより、アフトがとにかく面白かった。