映画感想「野球狂の詩」 | 大TOKYOしみじみ散歩日記

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お独り様となった50路男の、ぶらぶらノンビリンの東京物語

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そして大切な母ちゃんとの想い出も時おり混ぜ合わせて

書き留めてゆきたいなと、思います

『野球狂の詩』(1977)


プロ野球セントラルリーグのお荷物球団
東京メッツのシーズン最終試合
現役最年長の大御所ピッチャー岩田鉄五郎は、大量被安打大量失点の火ダルマ状態になりながらも(今シーズンの)最後を飾り
まだ辞めないのかとの罵声も気にせず現役続行と来シーズンへのチーム強化を謳いあげます

その頃、スカウトマンの尻間は情報を頼りに新人発掘の行脚を続けていましたが
逸材は人知れず開花しようとしていたのでした


1972 年から不定期掲載されていた水島新司の野球マンガが週刊連載になるのを切っ掛けに誕生した

女性プロ野球選手、水原勇気個性的な選手たちを1話完結で一人ひとり描いたそれまでとはスタイルを変え

彼女のプロ野球へのチャレンジを描く長編ドラマに進路変更しました

映画版はその初っ端をシナリオ化。かなり真摯に原作に沿った構成で驚きました

いじり、遊びがない分、原作ファンは見比べる楽しみがあったかも知れませんが野球映画を見にきた観客は小池朝雄や藤岡重慶、桑山正一らの大袈裟な表情の連続に呆然としたことでしょう

なにせ、女性をプロ野球の世界に入れるという製作当時はそれこそ絵空事を真正面から描いているのですから侃侃諤諤のやり取りがあって当たり前の原作ですが
作り手の決めたリズム、テンポで見ることになる映画でそれを味わうのは全く別で
さほど掘り下げていない台詞のやり取り(原作のまま)をゲンナリした気分で見つめる事になります

ま、それ故に木之内みどりの清廉さが

一層引き立つ事にはなるのですが

入団から合宿所生活、プロデビューへの布石
そして初登板までを
木之内と小池のアップで引っ張る不思議なスポーツ映画でした
原作のままある水原の入浴場面など
今じゃセクハラ、パワハラと原作時点で騒がれますな
そうした意味では女性の社会進出の歴史を語る上では貴重なのかもしれません

ともかく
選手を演じる俳優たちに、プロ野球選手らしい体型なり面構えなりがもっと欲しかったですし
ロケーションの野球場ももう少し工夫して欲しかったなという感想になってしまいます

木之内みどりの可愛さだけを記憶に留める
かなり残念な野球映画でした

ちなみにプロ球団の協力は殆ど得られず、原作者の水島新司個人の付き合いがあった関係者、中でも
野村克也さんのいた南海ホークスの協力は原作以上の有り難さだった事でしょう


昭和52年・にっかつ
監督〜加藤彰
出演
小池朝雄
木之内みどり
谷啓/犬塚弘
桑山正一/丹古母鬼馬二
藤岡重慶/高木均
高田敏江/山科ゆり
石井富子/千うらら
高岡健二