映画感想「テンダー・カズン」 | 大TOKYOしみじみ散歩日記

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お独り様となった50路男の、ぶらぶらノンビリンの東京物語

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書き留めてゆきたいなと、思います


『テンダー・カズン』

「ビリティス」(1977)でその芸術性を評価された写真家のデビッド・ハミルトンは、その後も数本の映像を作り上げましたが
全て日本では劇場公開されませんでした

1939年のフランスの田舎で
裕福な家庭で育った15歳の少年が見、体験するセクシャルな大人達の世界と、自らの成長を描いたこの作品も
視聴方法の多様化で漸く日本でも鑑賞が可能になったようです

年上の従姉妹に想いを抱きながら
その肉体への好奇心を罪悪のように感じていた少年の前で、恥も外聞もなく彼女にすり寄り自分の欲求だけで汚そうとする大人を忌み嫌いつつ
少しずつ少しずつ、少年は自分が大人の香りを周囲に振りまき始めている事に気づき始めるのです

少女に性的興奮をしている男が、中々想いを遂げられないまま少年の画策で惨めな立場に陥る辺り
写真家としてではない映画監督として冴えを魅せたいところですが
イタリアの艶笑劇を焼き直したような展開にしか転がらず、残念です

面白いな、と感じるのは時代背景を1939年からに設定し
ナチスの脅威が徐々に近付いてくる不安を打ち払うように遊興や恋愛に邁進していた男たちが
やがて始まった戦禍に身を投じなくてはならなくなった時
残された男がドイツ人の老学者と
少年だけだったという皮肉が
否応なく性的対象が少年に集まってゆく哀れに繋がっている辺りでしょう

ソフトフォーカスの達人だったハミルトンの映像は堪能できる反面、ドラマティックな起伏には乏しい出来映えでした

老学者が魂の存在を研究しているというのが面白く、ラスト近くで研究に使用した魂を赤い風船に詰めて空へ放すのは
~目に見えないものを撮れれば、という写真家ならではの夢か
~情感溢れる名画、ラモリスの「赤い風船」へのオマージュか
この場面は気に入っています♪
15才未満鑑賞禁止ですので
お気をつけくださいね

「ビリティス」の感想