映画感想「不知火検校」 | 大TOKYOしみじみ散歩日記

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お独り様となった50路男の、ぶらぶらノンビリンの東京物語

映画・マンガ・小説・芝居・テレビに動物
そして大切な母ちゃんとの想い出も時おり混ぜ合わせて

書き留めてゆきたいなと、思います


『不知火検校』

貧しい職人の子として生まれ育った盲人の少年が
やがて悪事を重ねて金を蓄え、当時は盲人の最高位であった(検校)の位を得たものの、数々の罪が暴かれ御用になるまでのアウトローな人生を描いた異色時代劇師匠の検校に命じられた旅先で犯す最初の殺しから

他人を巻き込み、他人をたぶらかし
手に入れられないとなるや力づくで我が物にし悪行三昧、限りを知らずに突っ走る姿は
憎々しいが見入ってしまいます

その小気味良さ、そのふてぶてしさ
ほのかに漂う優しさや可笑しさに見るものまでがニヤリとしてしまう危なさ

それに酔う不埒さに気持ちが揺らぎます
企画は、勝本人が持ち込んだといいます

本作のヒットで彼は出世街道を邁進し
「座頭市」を得
「悪名」をモノにし
「兵隊やくざ」を手にいれてゆくのです

3シリーズの背景が全く違う事で飽きも少なく
しかしながらアウトローな主人公という彼が愛したスタイルはそのままに
彼は(二スケ二蔵)の人気者とは違う
三船・裕次郎と並ぶ存在へと舵をとっていけたのでしょう


1990年正月、彼はハワイでコカイン所持により逮捕・起訴されました
映画、テレビは彼を敬遠し4年が瞬く間に過ぎて

彼は復帰に舞台「不知火検校」を選びます
5月の初日、私は銀座セゾン劇場の1列目で彼を見ました
三時間の筈が四時間を超えた舞台は、圧巻

クライマックス、捕縛された検校が
(目が見えるくせに何にも出来ねえお前らに、この俺の気持ちがわかるものか)
と啖呵をきり

祭りの音など構わぬように舞い狂う勝新太郎は
名演だの熱演だのでは表現は出来ない

迸る汗と、鳴り物の激しい響きとが私を感動へと引きずり込んだ時間でした
以来、あの時のカツシンを越える芝居には出逢っていません

役者バカと呼ばれた男は

今でも叫んでいるでしょう

~お前たちは肝っ玉が小せえから、たまに楽しむといやあ祭りぐれえが関の山だ!
爺ぃや婆ぁになって、下の世話されて死ぬだけたあ、ざまあみやがれ
大馬鹿野郎~!

勝新太郎が、カツシンとして役者バカを貫き通せた支えに
「不知火検校」はなったのだと、私は思います



1960年・大映
監督~森一生
脚本~犬塚稔
原作~宇野信夫
出演
勝新太郎
中村玉緒・近藤美恵子
須賀不二男・安部徹
鶴見丈二・丹羽又三郎

(2016.8.16より転載)