鹿児島県霧島市溝辺町竹子(たかぜ)というところに、
鹿児島大学副学長を退職後(合鴨農法とヤギの研究で知られます)、
萬田正冶先生の開いた萬田農園にある学びの場です。
萬田先生が共同代表を務める「小農学会」のメンバー向けに寄稿した萬田先生の言葉に感銘を受けて、
メールを送ったところ、転載を快諾してくださいましたので、許可を得て以下に紹介します。
まずはかんたんに
夢であった無農薬米を初めて実現させたのが合鴨農法です。
田んぼに合鴨雛を放鳥し、除草・除虫を行うとともに、糞は追肥となり、
濁水・刺激効果など稲に多面的な効果をもたらします。
しかも合鴨は肉となりごはんと一緒に食卓を豊かなものにします。
まさに有畜複合経営の典型です。
私たちの命と環境を守る見事な農法であり、アジア地域が共有する大切な宝物でもあります。
萬田農園は合鴨農法を基軸にした小規模な有畜複合経営をめざしています。
ここからが、5月7日のメールに書かれた言葉です。
Subject: 小農学会:98 新型コロナウイルスについて 2020/5/7
世の中が騒然としています。
老兵何も語らずと思って黙っていましたが、非常事態宣言延長の報に接し、
小農学会メンバーに私の愚論を思い切って述べてみることにしました。
先達ての政府の非常事態宣言の出た日は、スーパームーンの夜でした。
美しく冴え切った満月がこの地球上で一人勝ちした人間のあわてふためく姿を見下ろしているようにもみえました。
そもそも地球が始まって以来、ウイルスと人間の戦いは繰り返されてきたことです。
DNAのみで存在するウイルスは、他の動物の細胞に侵入して細胞質内の栄養分を摂取するしか(これが感染というものです)生きていけない生物?なのです。
人間は体内に侵入してきたウイルスを異物として認識し、抗原抗体反応により免疫をつくり、
ウイルスを撃退する仕組みを備えております。
これが病気に対して抵抗力をつけるということです。
撃退されたウイルスは再び変異して型を変えて人間どもを襲ってくる、
これに抗して人間は再び免疫をつくって身を守っていく、この繰り返しが生物の進化です。
よって恐れおののき慌てふためくようなことではないのです。
もちろん体調がくずれ、免疫力の弱くなった人々が、死に至るという不幸も伴うことも事実ですが・・・。
今回の新型コロナウイルスに限らず、人間は日常茶飯事多くの周りの病原菌に接し、
すでに免疫を持っている場合には撃退し、
新しいタイプの場合には更なる免疫を作って身を守っているのです。
結論をいわせていただければ、新型コロナウイルスに接触させないことも大切ですが、
触れることによって免疫をつくることも忘れてはなりません。
一方で体調を弱くしている人たちのことを考慮して、一刻も早くワクチンの開発も必要です。
ウイルスの撲滅とその遮断のみに奔走する今の医療行政に意義ありです。
要は生物の進化論と免疫の視点から、複眼的に本問題を捉えることではないでしょうか。
マスメディアは連日のように発症者や死者の数を報道し、
新型コロナウイルスのマイナス面のみを報道していますが、
一方では免疫力を獲得し、抵抗力を備えている人々も確実に増えていることにも目を向け、
三密のみを強調するのではなく、
食生活や健康管理を大切にし体力を身につける啓蒙をもっとやるべきではないでしょうか。
恐怖心をあおる一面的な報道にも異議ありです。
さらに18世紀の産業革命以降つくりあげてきた人間の市場原理・競走のパラダイムが
馬脚を現したとみるべきでしょう。
お金がグルグル回れば景気がよくなる、人と物が飛行機や船で地球上を回る
(グローバル化)の破綻が、今回の新型ウイルス問題とみるべきではないでしょうか。
進化したウイルスが人間のつくりあげたパラダイムを鋭く見抜いて、
地球規模で迫ってきたとみるべきでしょう。
人が動かなくなれば金も止まり、日々の生活にも困り、経済が破綻するというのが今日の実態であります。
ローカル化をめざす自給自足の田舎暮らしや小農の人々は三密とは無縁の存在です。
愚論を述べましたが、本問題の議論のダシにしていただければ幸いです。(萬田正治)
知足・共生・循環
20世紀は市場原理・競争の価値体系で地球を破壊してきましたが、
発想を大きく転換し、21世紀は知足(少し欲望を抑える)で共生と循環の社会をめざすことが地球を守ります。
霧島生活農学校はこの理念に基づいて実践します。
◆命を育み、その命をいただくという農の本質を貫きます。
◆自然との共生をめざします。
◆人間との共生をめざします。
◆循環型農業(有畜複合経営)をめざします。
◆湿潤気候のアジア型農業をめざします。
◆利他の心を持つ志の高い人を育てます。
去年(2019年10月に)、鹿児島の萬田農園へ先生を訪ねました。
ヤギと合鴨を中心に研究してこられて、いまは自ら実践しているお話を伺う中で、
とくに、湿潤気候のアジア型の有畜複合経営という部分に、感銘しました。
あいつぐ自然災害(気候変動)へのレジリエンス(回復力・復元力)を農業が持つには、
温暖化による豪雨、つまりアジア型の気候がとくに九州(沖縄)から始まっていると感じていたからです。
そのときのことを琉球新報のコラムに書きました。
同年5月にも、「小農の大逆襲は九州から」として「小農学会」について書きました。
新しい生活様式(ライフスタイル)は、
アフターコロナではなく、ウィズコロナ。
コロナとの共生が大前提です。
そのためには、対症療法ではなく、病気に負けない体力、免疫力をつける生活が求められます。
災害をうまくかわす(避ける)ライフスタイルの”包摂的”な”カイゼン”が求められていると思います。
たくさんのヒントが込められているので多くの人に呼んでももらいたくて紹介しました。
ベジアナ アジアアナ@あゆみ