天皇は、総理大臣や閣僚を任命する
候補者を拒むことなどない
同じ意味で、首相が、学術会議会員の任命を拒否することなどできない
更には、会員の定数が法により決められている
にも拘らず、現在6名欠員のまま
これは法律違反である
「任命拒否撤回を」 97歳元学術会議会員、6万2000人署名提出
毎日新聞 2021/04/19 20:22
日本学術会議の会員候補6人の任命を菅義偉首相が拒否した問題で、元学術会議会員で元気象庁気象研究所室長の増田善信さん(97)が19日、6人の任命と、政府による学術会議改革の要請撤回を求め、約6万2000人分の署名を内閣府に提出した。科学者が戦時中に動員された過去の教訓から今回の問題に危機感を抱き、オンライン署名サイトで自ら募った。
一方、任命拒否された6人と、法学者や弁護士ら800人以上が、拒否の理由の開示を求めて近く情報公開請求する。21日から始まる学術会議の総会を前に、問題の解決を求める動きが広がっている。
増田さんは原子爆弾の投下後に降った「黒い雨」の研究で知られ、1978~83年に2期にわたって学術会議の会員を務めた。研究者が投票する選挙で選ばれた、最後の公選制の会員でもある。推薦方式に変更される直前の83年には、多くの研究者が政府による人事介入につながることを危惧して、日本学術会議法の改正に反対した。
増田さんは当時、過去の経緯を調べて驚いた。学術会議の前身で1920年に設立された「学術研究会議」の会長は会員の互選だったが、戦況が厳しくなると任命制に変更され、「音響兵器」など戦争に関係する研究テーマが設けられていた。「公選制から推薦制への変更、そして今回の任命拒否の動きは、戦前の状況と似てきつつあるのではないか。この中で政府が学術会議の『あり方』の変更を要求するのは、戦争の反省の上につくられた学術会議の変質を狙ったものだと思う」と語る。
増田さんは戦争末期、海軍少尉として島根県の基地で気象観測に携わり、沖縄に向けて特攻に出撃する兵士に天気予報を教えて送り出した。「みすみす死ぬことが分かっているのに、と思っていたが、声に出さなかった。『神風が吹くから勝つ』とも言われていて、そんなはずがないと確信していたが、口外しなかった」。そうした自身の経験があり、「二度と戦時中のような不合理な日本をつくってはならない」との思いが署名運動を立ち上げた動機になった。
また今回の問題は昨年10月に発覚したが、今年に入り報道が激減したことで、危機感が強くなった。自らオンライン署名サイト「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」の講習会に参加し、3月1日から署名を集めた。2カ月足らずで6万人以上の署名が集まり、「これだけ反応があるとは驚いた」という。
このほか、任命拒否された6人の研究者も自ら、理由の開示を求めて内閣府などに情報公開請求することを決めた。任命に関する自身の情報の開示を求めることで、個人情報を理由とした開示拒否を防ぐ狙いがある。広く社会に訴えるため、同時に法学者や弁護士ら800人以上も同じ趣旨で請求する。
いずれも代表者らが26日に請求する予定。呼びかけ人の共同代表を務める浅倉むつ子・早稲田大名誉教授は「学術会議は(定員を満たさない)違法状態が続き、活動に支障が出ている。国会の質疑で記録文書が存在することが明らかになっているので、開示請求によって少しでも動かしたい」と話す。【池田知広、岩崎歩】