冷たい空気と温かい空気が交じると
不穏な空気が生まれるらしい。
「干渉し過ぎだと思うんですけど。
生徒にしては。」
「生徒は先生のことを深く知ろうとしちゃいけないんですか?」
「そういうわけじゃないけ…「おんにだってほら。」
「嫌がってるわけじゃないですもん。質問すれば丁寧に答えてくれます。だから先生こそ干渉し過ぎじゃないですか?たった2週間過ごすだけの関係なのに。」
どうもその最後の言葉がチェウォンの心に刺さった。自分の経験上、教育実習生というのは生徒にとって記憶に残りやすいはずなのに。
目の前でニコニコしながら話す彼女には
どこかで感じた覚えのある雰囲気が纏っていた。
と、その瞬間ある程度の距離を取っていたはずの長身で、茶髪の彼女が目の前にいた。
彼女はチェウォンの首もとに軽く顔を寄せると
すぐにもとの距離へと戻った。
「な、なに…。」
「先生、おんにの部屋行ったでしょ?
えっとぉ…一昨日だったっけ?」
「え?」
「おんに。クォンウンビ。の部屋。
行ったでしょ。」
何を言っているのかとチェウォンは思わず眉間に皺を寄せてしまった。自分では一瞬だったその表情は、ニヤニヤしている目の前の彼女にはバレているようだ。
「ふふ笑笑先生、私、鼻がいいんです。
匂いに敏感で。見た目もそうですけど、よく犬 みたいだねって言われるんです。」
「だから隠そうとしたって無駄ですよ。
おんにの部屋から同じ匂いがした。」
今までニコニコしていた彼女は急に何の表情も持たなくなった。いや、少し悲しさが混じっていたかもしれない。
「同じ匂いって…」
「ふっ笑
おんにに惚れちゃダメですよ。先生。」
その言葉は彼女自身に言い聞かせているようにも聞こえた。
かつて…といっても一年ほど前だろうか。
入学したばかりの彼女の感情を全て攫っていった人。
攫われて、引きずり込まれて、溺れた。
小さな波のような人に惚れた過去の自分。
そして
想いは断ち切った…はずなのに
また引きずり込まれようとしている今の自分。
二人の自分に。