さっきから擦り寄ってくる年上の女性に作り笑いを見せながらお酒を飲む彼女の目は、もうすでにあの人を捕らえていた。




「じゃあこの辺にしておこうか。
  明日は休みだけど準備はしっかりやること。
  いいね?」




学年主任の一声でお開きとなった飲み会…もとい歓迎会は、実習生にとっては地獄であった。


だがその中で一人楽しんでるものがいる。




「先生。帰りますよ。」




担当教師は見事に潰れている。声をかけるとふにゃっと笑うその姿に思わず胸が高鳴る。
初めての感覚に困惑を隠せなかった。


「ん~、ん。」


ただ唸っているウンビに周りも困っているようだ。




「クォン先生、結構お酒弱いんだよね。なのに飲むから。」




他の先生からそう聞いて(あぁなるほど)とその場にいる数人が思った。




「チェウォンさん。家同じ方向だったよね。
  良いかな?お願いして。」




顔を赤くしてフラフラしているウンビを見ながら困ったようにお願いをしてくる教頭に、チェウォンは頷くしかなかった。





「先生。帰りましょう。」




体を支えながら店を出て、タクシーを止める。
住所を聞いても答えてくれないウンビに少し戸惑いはあったものの、心の中で謝りながらバッグを探った。


財布の中に入っている免許証の住所を運転手に見せてタクシーは出発した。




「おつりは大丈夫です」




途中で気持ち悪いと言い出したウンビの背中をさすりながら、チェウォンは部屋の鍵を開けた。




「ちぇうぉな…みず…」




トイレから出てきたウンビをまた介護しながら水を渡す。




「先生。もう今日は寝てください。」

「おんにでいいのに。」

「え?」

「おんにっ!って呼んで」

「あぁ…はい。」




寝室まで連れていき寝かせるとチェウォンは立ち上がった。いや正確には、


立ち上がろうとした。




「おんに…?




  
  わっ!」




景色が傾いて、温かさに包まれた。
鼻をつつく甘い匂いと微かなお酒の匂い。




「え?ちょ…おん…に…!」




するりと入ってくるウンビの手に
必死に抵抗しながらも鼻から入ってきた匂いが
脳を侵していく。


ピタッと止まった手はそのままチェウォンの脇腹に置かれている。


隣で寝息を立てながら赤ちゃんのように眠る自分の指導員を見て、チェウォンの脳は完全に侵された。