妖怪 角盥漱 ( つのはんぞう ) をご存じですか? | 伊豆高原「怪しい少年少女博物館」のブログ

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レトロで可愛くて気持ち悪い。伊豆高原「怪しい少年少女博物館」の展示品などを紹介します。





怪しい少年少女博物館の2階右手奥の妖怪のコーナーに展示をしている荒俣宏の奇想秘物語 陰陽妖怪絵札 陽の巻 の角盥 ( つのだらい ) のフィギュア。角盥は左右に2本ずつ角のような柄のある、漆塗り等で作られた小さなタライです

このフィギュアは角になっている方の柄が、強調されて、かなり長くなっており、赤鬼のお面のようになっています






正面のやや上方から見下ろした所。サイズは高さ約6cm、幅3.5cm、奥行き3.5cmです。鳥山石燕の絵をもとにして造形化したものと思われます
 




正面向かって左側から見た所。さすが海洋堂製で、サイズを超えた鑑賞に値するクオリティーがあります





 背後から向かってやや右手から見た所





真後ろから見た所





背後から向かってやや左手から見た所。髪の流れる様が、とても優美です




 
正面向かって、やや右手から見た所。角が生えたお面のような面白い顔を除いたら、相当の美人さんです。実は、日本では三大美人の一人とされている小野小町が絡んでいます





正面のやや下側から見上げた所。台座の裏面には©️KAIYODO 2002の文字が入っていました





真上から見下ろした所





上記のフィギュアを展示している辺りの様子。一番前列の左側に展示をしています



 
 
こちらが上記のフィギュアのもとになった江戸時代の絵師の鳥山石燕が妖怪画集の百器徒然袋に描いた角盥漱 ( つのはんぞう ) 

ただの付喪神ではなく、小野小町の伝説をもとにしており、小町が使っていた角盥が時を経て お化けになったと言うもの

 




江戸時代前期の百鬼ノ図に描かれた角盥のお化け。頭部が角盥となっており、踊りながら、柄杓で血のような物を汲んでいます

 


角盥漱って、どんな妖怪?

角盥漱 ( つのはんぞう ) は鳥山石燕が百器徒然袋に描いた妖怪です。角盥 ( つのだらい ) と言う、円形の胴部の左右に二本ずつ、計4本の柄が付いた、うがいや手洗いに使う洗面道具を妖怪化したものです

道具が変化した付喪神の中で、角盥は古株の一つです。身近な道具で、形の面白さもあるのか、百鬼夜行絵巻や化物尽絵等によく登場します。古くは、鎌倉時代の土蜘蛛草子に、角盥の縁に歯が生えて、そのまま顔になった人形 ( ひとがた )のお化けが描かれています。また、南北朝期に製作された融通念仏縁起絵巻 ( ゆうずうねんぶつえんぎえまき ) にも登場します。その描かれ方は色々で、女性の他、象を思わせる動物のように描かれているものもあります


石燕は、角盥のお化けを、ただの付喪神ではなく、平安時代の歌人の小野小町の草子洗小町 ( そうしあらいこまち ) の逸話をベースに創作したのがポイントでした

十二単を着た小野小町の顔が角盥となっており、二本の柄が、その名の通り角になり、鬼のお面を被ったようになっており、それが小町の執心も現すと言う、実に機知に富んだ造形となっています

石燕の絵には、

なにを種とて
うき草の うかみも
やらぬ小野の小町が
そうしあらいの執心
なるべしと 夢心におもひぬ

と言う文が添えられています
 

草子洗小町の話 って、どんな話?

草子洗小町は能の演目にもなっており、歌合 ( うたあわせ ) を舞台に、六歌仙にも選ばれている歌の名手 小野小町が、同じく六歌仙の大伴黒主の策略を機知により退けると言う話で、あらすじは次のようなものです

歌合で小野小町に勝ち目がないと思った大伴黒主は、歌合の前日に小野小町の家に忍び込みます。小町が明日の為に用意した歌を詠むのを盗み聞きした黒主は、それを万葉集の草子に書き加えます

歌合の当日に小町が、歌を詠みあげると、黒主は、書き加えた万葉集を取り出し、既存の古歌であるとクレームを入れ、小町を失格にさせようとします

ピンチに陥った小町ですが、それを黒主の書き加えと見破り、水盥で万葉集の、そのページを洗います。すると書き加えた歌は流れ落ち、黒主の悪事が露呈します

黒主は自害しようとしますが、小町がとりなして、祝言の舞を舞って幕となると言うストーリーです  


謎の多い美女、小野小町

花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身 世にふる ながめ せしまに

と言う歌で知られる小野小町ですが、絶世の美女とされるものの、実際の人物像は、よくわかっておらず、出生地も墓も、日本の各地に存在する等、定まっていないのが本当の所です

謎が多い故に神秘的な美女と言える小野小町ですが、弊館のフィギュアは、草子洗事件を意識したのか、 目が吊り目で、ちょっとプンプン気味 ? に表情が作られているように見えます。一方、石燕の絵では、角は生やしたものの、目は優しそうに描かれています

どちらも小野小町への理解と愛が感じられますが、小町は、謎めいた美女故に創作意欲を刺激する存在と言えるのかもしれません

各地にゆかりの地が存在するのも、小野小町の人気ぶりを表していると言えると思います 
 
小野小町の存在は、このまま はっきりとはせず、謎が多いままの方がむしろ良いのかもしれませんね

 

 

開館前に見た虹





11月14日の朝の事ですが、雨の後に、空に大きな虹が架かっていました

 




博物館からは、ちょうど大室山に架かっているように見えました
 




結構太くて、綺麗な虹でした。パワーをもらえて、ちょっと幸せな気持ちになりました。今日も、お仕事頑張るぞ〜 って思いました
 


次回も、お化けや妖怪の話が続く予定です