母親からの躾と言う名の言葉の暴力を受けて育った麻有子は、中学生の娘葵を育てながら私設美術館で学芸員の仕事をするシングルマザー。
毒親から逃げるように実家との縁を切り、遠く離れた地で母娘二人で暮らしていたが母親の正恵が脳梗塞で倒れ、介護を拒否した姉の鈴子から母親を押し付けられる形で、 同居することになった事から徐々に母娘関係を見直すお話です。
初めは同居を頑なに拒んでは見たものの、姉の鈴子の押しつけと、祖母との交流を持たない葵のため母親との同居を、悩んだ末に決めることに。
実家との縁を切り、遠く離れた地でシングルマザーとして、葵を一人で育ててきた麻有子にとって、トラウマとも言える母親との同居は、相当な勇気が必要だったのではないかと感じられました。
同居をし始めたころ、自分への接し方が昔より柔らかくなった正恵に、不信感と反発心を持ちながらも、女三人の生活が順調に行くかと思われた矢先、正恵に父親を失ったのと同じ病気が発覚。
病気の事を知っていても家族に話そうともしない正恵は、病気への多少の不安と環境の変化から不眠がちになり、そんな祖母を気遣う葵の様子を見て、麻有子に語られたのは思いもよらないものでした。
父親である夫との関係、2度の流産と不育症であったこと、男の子を産めないプレッシャー、初めて出来た子供である姉の鈴子を甘やかして育ててしまったことへの後悔と責任。
夫のような放蕩者にしたくない、鈴子のように甘やかして我がままにならないように麻有子を厳しく育てたこと、自分が毒親で言葉による虐待で娘を傷つけてしまったことへの懺悔の気持ち。
そして自分に残された時間が少ないことを知り、麻有子との時間を取り戻したく同居を決めたこと正直に語った正恵。
母親の話を聴き戸惑う麻有子、同じ女同士であるから反発しあう部分と、理解しあえることがあることを知っていても、一旦関係が拗れたときの難しさを、読んでいて痛感させられた気がします。
それでも正恵の気持ちを知り、自分がどう思っていたのかを素直に話し合い、関係改善に向かって行けた最後のほうでは、じーんとして泣けてきてしまいました。
そして今回の1番の救いは、葵の存在でした。
正恵との関係を半面教師にして育てられた葵が、どんな人へも同じように思いやりを持ち、優しくて素直ないい子だったこと。
麻有子と葵がどんなことも話あえ、ほんの些細なことでも「ありがとう」を素直に言いあえる母娘関係が凄く素敵で羨ましかったです。
うちの母娘関係は決して悪くありませんけどね (^^;;
ただ、葵が大人の事情をすぐに呑み込み、必要以上に早く大人になり過ぎた子に感じられたので、もう少し子供でいられる時間をあげて欲しかったかな。
正恵と麻有子の親子関係が麻有子と葵のようにはいかないまでも、今後『向日葵のある台所』が少しでも長く続けばいいなと思います。
今作である『向日葵のある台所』。
今までの秋川先生の作品、人情居酒屋のお話や恋愛逃亡劇、デパート再生、料理男子の明るいイメージとは真逆で、イヤミスと言うか『問題作』の銘が打たれたのも頷ける内容でした。
『問題作』が母娘関係の破綻を意味するのか、改めて考え直すことを意味するのかは、読んだ人のとらえ方だとは思います。
そんなイヤミスと言うか『問題作』と言われる作品ですが、暖かな食卓とどこか優しさを感じられる秋川先生らしい本でもありました。
それにしても姉の鈴子は我がまま放題で美味しい蜜だけ吸って、 母親の介護が必要になったら、旦那や子供を理由に家から追い出す、妹にも母親を引き取るのは当たり前、常に上から目線の物言いにはイライラさせられるし、呆れるしかないしで、秋川先生の殴ってやりたくなると言われた人そのもでした(苦笑)
正子も決していい人とは言えないけど、鈴子のような人には絶対になりたくないなぁ~。
内容(「BOOK」データベースより)
学芸員の麻有子(46歳)は、東京の郊外で、中学二年生の娘・葵とともに、穏やかに暮らしていた。そんな折、麻有子の姉・鈴子から「母が倒れたので引き取って欲しい」と電話があった。母とも姉とも折り合いが悪く、極力関わらないようにしてきたのに―。姉の勝手な振る舞いにうんざりしつつも、受けざるを得なくなってしまう。「いったん引き受けて、やはり居心地が悪いと自主的に戻ってもらおう」という葵の提案のもと、絶縁状態だった母親との生活が始まった。だが、葵の知られざる一面も見えてきて―。
KADOKAWA (2018/8/30)
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