アトピー卒業おめでとう!! | 皮膚科医 山本綾子 の アトピー から学ぶ美肌法則

皮膚科医 山本綾子 の アトピー から学ぶ美肌法則

山本ファミリア皮膚科 駒沢公園の院長、山本綾子の美肌法則ブログ。つきあう病気とされてきたアトピー を根治させようと奮闘して見つけた、身体から健康になる美肌法則。

こんにちは。今日も、とっても嬉しかったお話を皆さんとシェアしたいと思います。


患者さんは「元アトピー患者さん」。そう、「元」というくらいですから、患者さん自身も私も、「もう、アトピーではなくなった」と認識しています。


先日、この患者さん(20代男性)が1ヶ月に1回の定期受診に来られました。


私:「最近、どう?」

患者さん:「先生、アトピー治っちゃいましたね!もう、湿疹出ないんです!


なんと嬉しい言葉でしょう!!


この患者さんは、私にアトピー研究を始めさせるきっかけをくれた、このブログの冒頭(11月12日記事)でも紹介した方です。そう、生まれた頃からアトピーに苦しめられ、自分を見失いかけて、私にSOSを出してくれた患者さんです。


今年の春頃からほとんど湿疹は出ない状態で、出ても非常に軽かったのですが、ここ2、3ヶ月、本当に湿疹らしい湿疹が出ていないとのこと。


患者さん;「湿疹が出そうになることはあるんですけど、メンテナンスをすると、出ないで済むんです」


なるほど、この患者さんは、自分の身体からのサインをごく初期の段階で受け止めて、早めに対処できるようになっていたのですね。


患者さんからの「アトピー卒業宣言」を聞いて、私は言葉にならないくらいの喜びで胸がいっぱいになったとともに、これまで二人三脚で苦しみも喜びもともにしてきた、これまでの時間を思い出して、涙が出そうになりました。


最初の出会いは、本当に偶然でした。総合病院に勤務していたときに、皮膚科に入院となり、偶然私が主治医となったのでした。つまり、彼は、私を指名して受診されたわけではありませんでした。


もちろん、当初はまだアトピー理論が全く完成しておらず、アトピーについて真剣に考え始めたばかりの頃でした。


脱ステで1年近く寝たきり状態で生き地獄を経験してきた彼は、ステロイドによって救われ、1週間という短期間で普通の生活ができるようになりました。


その後は、まだアトピー理論が出来上がっていませんでしたので、ほとんどステロイドのみでの治療が1年ほど続きました。湿疹は出るものの、生活上困るほどのことは一切ありませんでした。


無事、大学生となり、受験から開放された彼は、私にブログ冒頭にあるようなSOSを送ってくれました。なんとしてもアトピーを根治させたい。自分が実験台になるから、治療してほしいと。


心の底からのSOSに私はアトピー根治を約束しました。と言っても、当初はなんとなくぼんやりと治療の道筋がわかっていただけで、理論上根治できるはず、という程度のものでした。


すべてが試行錯誤でした。基礎医学を二人で徹底的に勉強し、「こうしたらどうだろう?」と提案したものを試してみる。こんな感じで根治治療が始まりました。


また、やってみてよかったと思えたやり方は他の患者さんにも協力いただきました。「効くか効かないかわからないけれど、少なくとも悪くなることはないから、損はないから、試してもらえませんか?」そんな私の提案に、たくさんの患者さんが面倒がらずにつきあってくださいました。「先生、この間のアレ、すごく効いたよ!」こんな声を励みに、たくさんの患者さんとともに作り上げてきました。


世の中に偶然ラッキーでアトピーを卒業した患者さんがいます。


勿論、その患者さんも自分なりに治療法を考え、実行してきたから、アトピーを卒業できたのではありますが、やはり、1個人である、ということで、全員にあてはまる訳ではない、という弱点があります。


そこを私は医師であるのだから、なんとしても「体系的」に理論としてまとめあげ、「誰がやっても必ず効果が出るように」したいとずっと思っていました。ある人には効いたけれど、他の人には効かない、というようなものでは役にたたないから。


そして、医師であるのだから、たとえ効果があっても、効果が出るかが定かではない民間療法扱いされないように、「徹底的に基礎医学に忠実に」「論理的」である必要があると考えていました。


東洋医学も長い経験の中から見いだされたものであり、やはり真実ではあるのでしょうが、「経験則」という点で、万人を納得させがたいものがあります。


私もこの「アトピー発症機序理論」の中で、東洋医学的発想はずいぶんと使いました。「全身をまとめてみる」という意味で。


ですから、東洋医学自体否定する訳ではありません。


ですが、「万人を納得させる」ためには、解剖学、生化学、生理学といった基礎医学という「身体のしくみ」から、「完全に説明しきる」ことが必須であると考えました。


そうしてできあがったのが、「アトピー発症機序理論」です。


また、この患者さんは本当に本当に頑張りました。自分と向き合うということ。簡単そうで、実は苦しみを伴うことがあります。なぜなら、自分の弱さと向き合わなくてはならないこともあるから。


彼も、治療から逃げ出しそうになったことがありました。それでも、逃げなかった。治療から逃げても、結局はアトピーが治る訳ではないから。


カウンセリングをしている私まで共倒れになりそうな時期もありましたが、それでも、彼は本当に頑張って、自分から目をそらすことなく、乗り切りました。


ぐるぐると同じ円を回っているように見えることが何度もありましたが、実は「らせん階段」となっていて、一歩一歩着実にステップアップしていました。


今、彼は治療開始当初と見違えるほど、生き生きとしています。自分と向き合って、逃げることなく、アトピーを克服しきった、という自信からなのでしょうか、本当にかっこよくなりました。


アトピーの卒業間近の患者さんは、皆、いい女、いい男に変身してゆきます。

キラキラと輝いています。きっと、アトピー治療を通して、一廻りも二廻りも成長するからなのでしょう。


この患者さんも、また、このブログを読んでくださっている皆さんも、アトピーを通して人間として成長し、ますます羽ばたいていただければ、医師としてこんなに嬉しいことはありません。