◆アトピー治療過程は「本当の自分を取り戻す」ための道 | 皮膚科医 山本綾子 の アトピー から学ぶ美肌法則

皮膚科医 山本綾子 の アトピー から学ぶ美肌法則

山本ファミリア皮膚科 駒沢公園の院長、山本綾子の美肌法則ブログ。つきあう病気とされてきたアトピー を根治させようと奮闘して見つけた、身体から健康になる美肌法則。

こんにちは、
皮膚科医 山本綾子です。



12月2日のブログで、アトピー卒業のために、「とことん自分と向き合う」ことが必要だとお話しました。 今日は、自分と向き合って最終的にどうしたらいいの?というお話です。アトピー卒業のためには、いろいろと知識も必要ですが、お話を一つしかできない、と言われたら、私だったら、今日のお話をしたい、と思うくらい、大切なことではないかと思っています。





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私は子供の頃から「自分」についてよく考える子でした。中学生の頃、いじめにあいました。いわゆる「シカト」でした。それがきっかけだったのかは、今となってはよく覚えていませんが、「自分は何のために生きているのか」とか「自分の生きる価値」とかについてよく考えました。





高校生になってからも、ますますそれらについて考えました。そして、医学部に入学し、念願の医学部生となってからは、「命」と向き合う授業などがあったためか、さらに考えるようになり、「自分の価値」を見つけられないためか、誰か他の人と一緒にいるのに、「孤独」を強く感じるようになりました。





誰かと一緒にいて、わ~っと盛り上がっているのに、どこか冷めている自分。


本当の自分はここにはいない。





そんな気持ちをいつも感じていました。





医学部を卒業し、医師となってからは、夜中に帰宅するのが当たり前のあまりに忙しい毎日で、心身ともに疲弊していたためか、その「孤独感」はますます強くなりました。





「医師としての自分」


「私個人としての自分」





医師としての自分は、優しい医師の先輩方や、私を可愛がってくださるたくさんの患者さんのおかげで、本当に充実していました。どんなに身体が辛くても、医師という職業は天職だと感じていました。あまりの忙しさで、不眠となったり、原因不明の耳鳴りに悩まされたり、(検査をしても、原因不明でした)、異常な手足の冷えに悩まされたり、首が回らなくなったり、ひどい肩こりに悩まされたり・・・それでも、仕事は大好きでした。




ですが、その一方で、「医師としての自分」が充実すればするほど、「私個人としての自分」がどこにいるのか全くわからなくなり、「ここにいるのは、本当の私じゃない!」と強く感じるようになりました。帰宅して1人になると、毎日強い孤独感を感じていました。





本当の私はどこにいるの?





医師という仕事は本当に誇りに思っていました。まだ、医師としての技術が未熟なペーペーの頃から、たくさんの患者さんが可愛がってくださり、こんなに幸せな仕事はないと思うくらいでした。




ただ、「医師」だと言うと、周りの人が「お医者さんなんですね、すごいですね」と”別扱い”をする感じが本当に嫌いでした。なんだか、「私個人」を見ているのではなく、「医師」というレッテルを貼られてしまったような・・・私は確かに医師だけれど、私は私なのに・・・そして、いつしか「どこでも医師として振舞わなければならない」と感じることが重荷になっていました・・・




そして、その気持ちがあまりに強くなり、「生きてゆくこと」にすら希望を持てなくなりました。








私、なんで生きてるんだろう?


ある日突然、パタっと心臓が止まってくれればいいのに・・・




こんなふうに思う日々が続きました。本当に苦しかった。人からは贅沢な悩みと言われるでしょうが、「本当の自分」が見つからない毎日は、「生きる屍」のような状態でした。





ところが、ある日、奇跡的なことが起こりました。


「私が医師として振舞わねばならない、なんて誰も言っていない!」


こんなことに気づきました。





そうです!周りがそう思っていると、


勝手に自分で思い込んでいただけ」だったと気づいたんです。





勝手に自分で自分をがんじがらめにして、苦しい、苦しい、と言っていた!





こんなことによくやく気づきました。


自分を苦しめていたのは、他でもない自分自身


であったことに気づきました。





そして、それに気づいたとき、


自分を締め付けていた鎧が音を立てて崩れ落ちたような感覚


になりました。





「ガラガラガラ」と本当に崩れ落ちる音を聞いたかのような感覚を、


今でもはっきりと覚えています。





そして、その鎧が崩れ落ちたと同時に、


生まれて初めて「本当の自分」に出会ったような気持ちになりました。





「これが本当の私なんだ!」





そして、がんじがらめにしていた鎧がとれたお陰か、


その時に深呼吸をして、「本当は、こんなにも空気が吸えるんだ!


今まで呼吸していたつもりだったけれど、全然、酸素を吸えていなかった!」


と強く感じました。





そして、手足の隅々まで、血液がしっかり流れてゆくのを実感しました。




自分の体を隅々まで、こんなに感じたのは、生まれて初めてでした





そして、今まで「生きてゆくのも嫌だ」と思ったり、


身体がボロボロになるまで酷使したりと、


自分の心身をあまりにも痛めつけてきたことに気づき、


心から自分の心身に「ごめんなさい」と思いました。





今まで、30年以上も私のために、


この心身は頑張ってきてくれていたのに、


全く省みることなく、さらにいじめ続けてきたのね・・・





こう、初めて思いました。


そして、このとき、初めて自分の心身と「仲直り」ができたように感じました。








この奇跡的な体験の翌日から、さらに驚くようなことが続きました。





本当に些細なことに感謝の気持ちが勝手に生じるようになったのです





ちょっと店員さんの笑顔が優しかった。


素敵な笑顔をありがとう!みたいな。





道端の植物を見ても、心から「キレイだな」と


感じることができるようになったのです。





なんというか、何事にも感動しやすくなったというか、


心がちゃんと働くようになったというか。





もしかしたら、それまでは、心は凍りついて、


正しく働いていなかったのではないかと思うくらい、


花鳥風月を感じ取ることができるようになりました。





もちろん、それとともに些細なことに幸せを感じるようになり、


笑顔になることも増えました。





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私は、アトピーではありません。





ですが、アトピー患者さんを見ていると、


「本当の自分」を見つけきれていないのではないかな、


と感じる人がたくさんいます。





本当の自分の心、本当の自分の身体





気づいてあげれていないから、


心身がストライキに入ってしまったのではないか。





そう感じます。





自分と向き合うことは本当に大変です。


苦しみを伴うこともあります。





でも、しっかりと向き合って、


是非、自分の心身からの声に耳を傾けてみてください。


自分の心身とちゃんと仲直りをしてください。







アトピーを卒業してゆく患者さんたちは、


自分の心身からの声に耳を傾ける努力をした人だと言えるのではないでしょうか?