最近、こんなことがありました。
20代女性。この患者さんはニキビで私を定期的に受診してくれています。そして、うつ病で精神科も通院しています。
寒くなってきたある日、彼女はいつものように私の診察室のドアを開けて、入ってきました。
ガラガラガラ・・・
なんだか、表情に元気がありません・・・
私:「こんにちは。調子はどう?寒くなってきたからねえ。」
患者さん:「寒くて、出かけるのも億劫で・・・うつのほうも調子悪いし、ニキビのほうもイマイチです・・・」
私:「そっかあ、寒いもんねえ。寒いと、血流悪くなるから、全身の調子がイマイチになっちゃうんだろうね。脳にだって血流行きにくいだろうし。うつって、脳の血流不足みたいなところも、あると、私は思うよ。」
患者さん:「そうですかねぇ・・・」
私:「首まわりのほうは、教えたストレッチを頑張ってくれて、ずいぶんと柔らかくなったから、今日は、全身血流を増やす運動をやろうか!」
と、そこからは体操教室のように二人で、椅子から立ち上がり、運動をはじめました。
私:「はい、こんなふうにやってぇ。ほ~ら、あっという間に、からだがぽかぽかしてこない?」
患者さん:「本当だ!体が暑くなってきました!(^^)」
しばらく、こうやって運動をしていると、部屋に入ってきた時は、暗い顔をしていた患者さんが、笑いながら「暑い、暑い」と言っています。
私:「ほらね!全身の血流がよくなると、気分まで良くなるのよ!」
患者さん:「本当ですね!(^^)」
私:「じゃあ、帰ったら、早速、今の運動を頑張って、来月は元気に病院にいらっしゃいね!」
患者さん:「は~い!」
こうして、患者さんは入って来た時と別人のように楽しそうな表情で、診察室を後にされました。
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以前、「心から治すことは非常に難しく、体から治すことのほうが簡単」とお話しました。中には、「体からってどうやって?」と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、ステロイドを使って、皮膚をきれいにしてしまうというのが、一つの手。
そして、他の「体から心にアプローチする」方法として、今日お話したような運動療法があります。
精神科の治療法に「森田療法」というものがありますが、まさにそれも「体から心にアプローチする」という手段を使っています。
「気にするな」と言っても気になるのだから、他の行動をすることによって、気にする時間を減らしてしまう、というようなやり方と言うとわかりやすいかもしれません。
心と体はつながっているからこそ、心を治療するために、体から。
私の診察では、こういったやり方もやっています。