うっ滞性皮膚炎という病気からアトピーの本態が見えてくる! | 皮膚科医 山本綾子 の アトピー から学ぶ美肌法則

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山本ファミリア皮膚科 駒沢公園の院長、山本綾子の美肌法則ブログ。つきあう病気とされてきたアトピー を根治させようと奮闘して見つけた、身体から健康になる美肌法則。

昨日の「診察室から」テーマの「ちびっこ冷え症!!!」を読まれた患者さんの中には、なんとなくアトピーの全体像がぼんやり見え始めた方もいらっしゃるかもしれません。


そこで、今日は、アトピー解明に最も参考になると思われる、有名な病気についてのお話です。


うっ滞性皮膚炎」という病気が皮膚疾患にあります。

http://ja.wikipedia.org/wiki/


この「うっ滞性皮膚炎」は医学部生でも知っているほど、少なくともどんな駆け出しの皮膚科医でも知っているほど有名な病気で、「静脈瘤がある下肢では乾燥が強くなり、湿疹ができやすい」という事実があります。


このあまりにも有名な病気を、私も当初は「静脈瘤→皮膚炎」というふうにとらえていました。しかし、たくさんの患者さんを診るうちに「うっ滞している→皮膚炎」なのだと気づくようになりました。


「うっ滞」という言葉自体がちょっと難しいですねえ。大辞林では「物が中にたまること」と書かれていますが、それでもわかりにくいでしょうか?


ここでの「うっ滞」とは簡単に言ってしまえば、「本来す~っと流れるべき血液が流れが悪くなって”たまっている”状態」と言えば理解していただけるでしょうか?血液は本来血管の中をスムーズに流れているはずですが、なんらかの障害があるとそれがスムーズに流れず、たまったままの状態になり、そのことを指しています。


さて、「うっ滞」という言葉が理解できたところで、もう一度「うっ滞している→皮膚炎」のお話に戻ります。


「うっ滞している→皮膚炎=乾燥し、湿疹ができる」のならば、逆に言えば、乾燥し、湿疹ができている→うっ滞している」のではないか?そう、私は思いました。


つまり、「全身が乾燥し、湿疹ができる」病気代表選手であるアトピーも、どこかでうっ滞しているはずだ、と考えたのです。


ここで昨日の「ちびっこ冷え症」のお話を思い出してみましょう。


手足に火ダコみたいにもやもやして模様があって、冷たいのでしたよね?背中がなんだか赤くなっていたのでしたよね?床に寝ていると、床に当たる後頭部だけが赤くなるんでしたよね?


あれあれ?なんだか全身に「うっ滞」があるみたいに見えてきませんか?東洋医学で言う「お血」という状態ですね!


さらに、「アトピー理論発見の経緯」テーマの「なぜ湿疹は赤いのかという疑問から見えること」で「本来はスムーズに流れるべき血液が何らかの要因でたまってしまい、その部位にとどまるから赤く見えている」のでしたね!


話が少しずつ、つながってきましたよ!


どうやら、アトピー性皮膚炎という病気は、「血液がスムーズに流れず、たまっている状態」があちらこちらにありそうですね!


実は、これを裏付けるような記載が皮膚科の教科書にすでにありました。


白色皮膚描記症(はくしょくひふびょうきしょう)

http://www.derm-hokudai.jp/textbook/index.html

(皮膚科の教科書がウェブ上で見ることができます。)


これは、アトピーの検査で非常に有名なもので(医師国家試験でもよく出る問題!)、アトピーの患者さんで皮膚をこすると、湿疹がない、問題なさそうに見える皮膚でも、こすった部位が白くなる、というものです。健常人では、同様のことをしても、わずかに赤くなることはあっても白くなることはありません。


そうそう、なぜ白くなるかというと、「血がたまっているから」!もともと血液がたまっている状態だから、こするとその部位の血液が圧迫されて周囲に移動して白く見えるんですね!


この「白色皮膚描記症」、私も学生の時に授業で習いました。でも、その意味までは教えてもらえませんでした。「そういう検査があるから覚えておくように」。そんな感じでした。皮膚科医になってからも、「白色皮膚描記症」が「うっ滞の存在」を指し示していると教えられたことは一度もありませんでした。


ですが、こうしてアトピーを必死の思いで解明しようと来る日も来る日も考え続けて、「アトピーの本態はうっ血にある」と気づいてからは、今まで丸覚えしていた事柄がすべてつながり、目の前がぱーっと開けたように感じました。