筋肉が硬くなると血流が悪くなる!? | 皮膚科医 山本綾子 の アトピー から学ぶ美肌法則

皮膚科医 山本綾子 の アトピー から学ぶ美肌法則

山本ファミリア皮膚科 駒沢公園の院長、山本綾子の美肌法則ブログ。つきあう病気とされてきたアトピー を根治させようと奮闘して見つけた、身体から健康になる美肌法則。

さて、前回、 「アトピーの本態はうっ血にある」というお話をしました。勘のいい方なら、「アトピー改善には、血液をさらさら流れるようにすればいい!」と気づかれたかもしれません。ざっくり言ってしまえば、そういうことです。食事改善しかり、運動不足解消しかり。


でも、やみくもに「血流改善」に励んでも、効率が悪いですよね?


そこで、本日のお話です。「本来はスムーズに流れるべき血液がなぜその部位でたまってしまうのか?」というお話です。


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湿疹のできている部位が「血液がたまっている部位」だということがわかったものの、その原因がまったくわからない日々が続きました。なぜたまる???


そんなとき、ある患者さんに出会いました。


初診時には全身にひどい湿疹があり、適切なステロイド治療を行ったところ、いったん全身がきれいになったものの、肩甲骨の間あたりに湿疹が再発しました。しかも、その部位の湿疹だけは、ステロイドが効かない訳ではないものの、他の部位に比べなぜかステロイドの切れ味が悪かったのです。


その患者さんはひどい猫背で、その湿疹部位で背中が曲がっていました。


もし、「血液がたまる原因は、圧迫があり、その部位の筋肉が硬くなること」によるとすれば、その圧迫がかかる原因を取り除けば湿疹が治るかもしれない!?


その仮説をもとに、患者さんに姿勢の指導を行いました。


すると!


急にステロイドの切れ味がよくなり、治りの悪かった湿疹があっという間に治ってしまいました。


ですが、この1例だけでは偶然かもしれません。


さらにこの仮説を証明するために、今度は全身のアトピーは適切なステロイド治療できれいになったものの、左頸部の湿疹だけはどうしても治りが悪い患者さんで試してみました。この患者さんは、生まれつきの病気のために、左側の胸鎖乳突筋という筋肉のみが非常に硬くなっていました。(胸鎖乳突筋というのは、首の左右の端をつまむと触れる筋肉です)


先天性の病気のため完全に治すことは難しいですが、せめて少しでもこの筋肉が柔らかくなって血流がよくなれば、もしかしたら湿疹も改善するかもしれない。


マッサージ、ストレッチの指導を行いました。すると、今までどうしてもステロイドを使っても治りの悪かった左頚部の湿疹もきれいに治ってしまいました。


さすがに2例も「血液がたまる原因は、圧迫があり、その部位の筋肉が硬くなること」という仮説に従って筋肉を柔らかくするだけで、ステロイドに対する反応性が格段によくなる、ということが続けば、これをアトピー性皮膚炎の全身の湿疹に応用できるのではないか、と考えるようになりました。


「血流がよくなれば薬剤の効きがよくなる」というのは、臨床をよくやっている皮膚科医ならば誰でもよく知っている事実で、足の水虫のために抗真菌薬を内服してもらっていても、足が冷たい末梢循環の悪い患者さんでは非常に効きが悪く、ときには末梢循環を改善させるためにビタミンEなどの内服を併用することで抗真菌薬の効果を良くする、という例などがあります。


内服薬で血流が良くなれば薬剤の効きが良くなるのであれば、外用剤でも同じなのではないか?


アトピー性皮膚炎でも、硬くなった筋肉をほぐし、血流改善することによりステロイド外用剤の効きをよくすることができるのではないか?


このように思うようになり、アトピー性皮膚炎ではどこの筋肉が硬いのかと考えながら診察を続けました。