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これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学/マイケル・サンデル

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感想文です。宜しくお願い致します。

1人の人間から、一国・世界の政治経済までが拠るべき「正義」という課題に対して、現代人の思想形成に今なお強く影響を与えている哲学者たちの理論(功利主義、自由至上主義、二元論など)を相関的に検証した後、サンデルの支持する「共同体主義」について言及している。具体的なケースから、それぞれの原則に則って行動するとはどういうことか、理解することが出来、分かりやすかった。

ベンサムの功利主義は道徳価値を定量化する。利益とコストを計算しその総和から、社会全体の最大幸福、効用の最大化を「正義」と定める。
道徳にまつわるあらゆる事物を、単一の価値の通貨に換算することは可能なのだろうか?

カントの定言命法は「目的を達成するための行動」ではなく、目的=行動であると定める。
自律と義務の両立について、自分もまだ疑問が残る。
「常に自分の定めた法則に対し絶対的に正しいことをする」
その行為と動機自体は純粋かもしれないが、それが人間性への絶対的な尊厳になるのだろうか?
カントの正しさは、誰にとって正しいのだろうか。
自分にとって正しいことが、本当に「正しい」といえるのだろうか。

人類共通の原則が成り立てば、社会はもっと簡単だがそうはいかない。
価値観のフィルターを交換したら、一つの行動結果における善悪の価値が変わってしまう。
この多元性を受け止めきれないことが、現代社会の様々な問題を引き起こしているとも考えられる。

そこで多元社会において「正義」「自由」「中立」を成し遂げるのがサンデルが提唱する「共同体主義」であると提示する
「人間の権利を定義する正義の原理は、特定の道徳的あるいは宗教的概念に基づくべきではなく、善良な生活について対立するさまざまな観念に対して中立であるべきだという発想である。」(278ページ)「われわれはまさに自由で独立した自己であるがゆえに、どんな目的にも中立な、道徳的・宗教的議論でどちらにも与しない、国民がみずから自由に価値観を選べるような権利の枠組みを必要とする。」(280ページ)「『私はどうすればよいか?』という問いに答えられるのは、それに先立つ『私はどの物語の中に自分の役を見つけられるか?』という問いに答えられる場合だけだ」(286ページ)

「正義」という人間共通の課題に対し、人類の長い歴史の中で変容していく理論を追いながら、これから社会の中で自分達がどのような価値観、判断基準を選び生きていくべきか、深く考えさせられる内容だった。
個人的に、共同体主義をはじめとする、現代リベラリズムに対抗する近年の理論について更に学びたいと思う。
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