自分の父親が人を殺害し、ホルマリン漬けにしていた少年、良世。
交通事故で娘を失った翔子は、姉の形見である良世を預かり、育てることに。
しかし、良世は心を閉ざし、翔子と心の繋がりをまるで避けるように、彼女を母親として生活するのだが、昆虫をいたぶるように殺す様子を見つけてしまった翔子は彼に恐怖を覚える。
一緒に生活するうちに翔子が開いていた絵画教室で絵を教えていた彼女は、良世が何気なく描いた絵が天才的な才能で描かれていたのを目にして彼に絵の才能があるのだと感じ、彼女の絵画教室に通わせるようになる。
そこで同じく絵画教室に通っていた少年と仲良くなったと思っていた翔子は良世がその少年と仲良くなったことを快く感じていた。
しかし、その少年が過去に絵で賞を獲っていたいたが、良世が絵で同じく賞を獲り始めたことで少年の母親から密かに恨まれるようになる。
良世が小動物を飼いたいと翔子に良い、彼女は良世の心の慰めになるのならと了承し、一緒にペットショップへ行き、ハムスターを買い始める。
だが、そのハムスターが行方不明に。
翔子と良世は懸命に家の中でそのハムスターを探すのだが、結局、見つからず、良世はあっさりと諦めたと思われた。
良世が通っていた小学校では父親が殺人犯だとバレていた。
当初、良世は未成年であり、ネットに名前などは晒されてはいなかったのだが、密かに裏サイトで良世の名前、通っている小学校、今いる家の住所が晒されていたのだ。
そんな中、良世の部屋で偶然にスマホを見つけた翔子は、不審に思い、彼の部屋から何か不審なものが見つからないかと思い、良世の部屋の中から小箱を見つける。
当初、その中からいなくなったハムスターが見つかるかと思い、恐怖に駆られたが、中から見つかったのはUSBメモリーだった。
見つかった映像は、翔子が開いていた絵画教室に通っていた少年を全裸にさせ、良世が飼っていたハムスターが良世と別の少年によって投げられた石で惨殺されるというものだった。
殺人犯の息子はやはり、悪魔の子なのかー。
今まで複数の言動を思い、悩んでいた翔子だが、家に石が投げ込まれたり、電話に「悪魔の子は出て行け」と嫌がらせの電話を受けたことによって、良世と一緒に引っ越すことに。
良世が暮らせる世界はないのかー。
翔子は思い悩むのだが、彼女は良世がわざと「悪魔の子」を演じているのではないのかと思い始める。
加害者側からの世界を描いた本となります。
とある特定の人は、殺人を犯した人物の身内さえも、同じように思ってしまい、危害を加えようとする傾向にある時があります。
嫌がらせをされ、その家には暮らせないようになったり、家に不審物を投げ込まれたり。
日本人は特にその傾向が強いように思います。
良世が平和に暮らせる世界がなければまた引っ越せばいいと思っていた翔子ですが、その引越し先で彼女は良世が自分の父親を慕いながらも、自分は自分だと主張し始めた良世が変わり始めたことを感じ、父親が良世が家に招き入れた少女を殺害したことに密かに胸を痛めていたことを知るのです。
それは良世の心の破壊と再生を告げた鐘が鳴り響いたのを聴いた音でした。
良世がやっていた数々の行為は、自分が悪魔の子であるということを幼いながらも心を痛めた結果となったことでした。
ラスト、ページ数が少なくなったのか、良世がいきなり「いい子」になったのがちょっと気になったのには気になったのですが、それを差し引いても、読み応えがあったなぁと。
被害者の側に立って本を書いた本は比較的あるものの、加害者側から描いた本はあまりないような。
それだけテーマが重いんでしょうね。
今回はあえて点数はつけません。