おすすめ本 「この限りある世界で」 小林由香 著 | ココアラテぷらす、ときどき読書

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子宮筋腫発覚!どうなる私!?
2019年にステージ0の乳ガンが発覚しました。(5月20日に手術しました)
婦人科と皮膚科と外科にも定期的に通院してます。

同じ中学校の同級生だった女子中学生を包丁で殺害してしまった少女、美月。

彼女は、自分も虐められていたと警察に証言し、さらに同級生に聞いたところ、3人の生徒も虐められていた事実が判明する。

 

一方の莉子は、出版社の文芸部に移動させられる。

そこでは「シルバーーフィッシュ文学賞」の受賞作である「プラスチックスカイ」が評判を呼んでいた。

しかし、その文学賞を受賞できなかったから人を殺害すると宣言していた美月によって、ネットは荒れに荒れ、プラスチックスカイの作者である青村は、そのネットの中傷によって自殺をした。

 

場面は変わり、教師だった結美子は、少年院の矯正施設で、少年犯罪を起こしていた少女達に寄り添い、そして彼女達を更生させようと奔走していた。

そんな最中、ある矯正施設へ来てくれと依頼がくる。

それは同級生を殺害してしまった美月の施設だった。

 

結美子に与えられたのは、美月が反省の意味を込めた作文を書かせること。

彼女は、病気で亡くなった母親に辛く当たっていた父親を酷く恨んでいた。

 

美月は、時に年上の結美子を見透かすように翻弄し、結美子に「父親に本当の殺害動機を見つけてください」と依頼する。

果たして本当の殺害動機とは?

そして、莉子と結美子の繋がりとは?

赦しと更生を込めたこの小説の幕が上がるー。

 

 

いきなり、莉子パートから結美子パートに話が切り替わるので「なんじゃこりゃ」と思ったのですが、その秘密はラストで明かされます。

同じ作者の「ジャッジメント」も読んだことがあるのですが、あの作品よりもさらに物語としての完成度が上がっていたように読後、思いました。

 

美月は当初、同級生だったマリアに対して、贖罪の気持ちを全く持っていないように文章では書かれていました。(実は同級生の間ではマリアの虐めに対して、密かに「報復ゲーム」というスマホのアプリでマリアを散々、架空の世界で殺害していたことが発覚していたことも判明する)

その美月にどのように「更生」というタイトルで作文を書かせるのか。

そして、彼女が本当に懺悔の気持ちを保つのかが焦点となっていましたが、それがラストに見事に繋がっています。

 

ただ残念なのは、プラスチックスカイを書いた青村のことがあまり書かれていなかったのと、あとは唐突に莉子パートから結美子パートへの移行があまりうまく文体的にいっていなかったのかなぁと感じた点ですが、それを差し引いてもとてもよく書かれている本だと感じました。

 

 

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