突然、家族写真を持って失踪した父。
その父の後を追うように、従姉妹の響子と一緒に探そうと決めた香。
彼女は、母親の連れ子だった。
父とは良好な関係を持っていたとは思ってはいなかったものの、やはり父のことが気がかりで捜索している最中「自分はがんだと診断された。探さないでほしい」という手紙を見つける。
父のことを探している中で、父自身が「無国籍」だったことを知る。
さらに25年前にとある事件の証人として証言台に出廷していることも判明。
父は証言台でなぜか涙を流しながら証言していたことが判明し、ますます父のことが分からなくなった香。
彼が持っていたパソコンを調べていくうちに、別荘を購入していたことが分かる。
そして、香の預金口座には入金されていたことも。
さらにある事件の被害者に大金が渡っていたことも、弁護士事務所に行き、その弁護士の口から香に言われる。
一体、父は何者だったのか?
その娘である香にもとある秘密が隠されていた。。。
とにかく、壮絶な物語でした。
実際には1万人とも言われる、日本にも実際にいるという無国籍の人たち。
昔の法律では出征から300日以内だったら、前の夫の子供として認知はされるものの、夫が何かの原因で認知しなければ、そのまま国籍が無くなるという事実が実際にはあったようで。
国籍がなければ、学校にもいけないし、免許証も取れないし、住民票も取れない。
「ない」「ない」「ない」づくし。
この問題には、政府が動いて(確か)今では300日問題が撤廃されたとか。
無国籍だった父は中学校をかろうじて母親の尽力によって卒業はしたものの、高校に行けず、就職をするのにも、苦労をし。それでもまるで血を流しながら生きてきた。
そして、罪を犯し、戸籍を買う。
彼は言う。
この罪を一体、誰が罰することができるのか。
それができる者はどうか教えて欲しい。
一体。自分はどうすれば良かったのかと。
とにかく、一度読んでみてください。
ラストは切なくなりましたが、それでもこの本に出会えて良かったと思いました。