私たちの脳の目的は、生き続けること、生き延びることです。
そのために脳は、私たちを少しのことでも不安がらせて、危険を回避させて命を守ろうとします。
つまり、生きるためには、不安はなくてはならないものなのです。
とはいえ、不安が好きって人はいないでしょう。
不安は、得体の知れないことに恐怖を感じている状態のことです
一方、心配は、何が不安なのかが分かっている状況のことです
つまり、不安は、何が不安なのかを明確にしてあげることで、心配に換わるのです。
心配は、その対策を考えていくことができます。
~企業内のカウンセリング室にて~
新しい部署に異動してきたクライアントのAさん。
今までしてきた仕事とは全然違う仕事を任され、何をどうしたらいいか分からず不安でたまらないとのこと。
Aさんは、自分がどんな行動をとればいいのか分からなくて不安なんですね。
Aさんに、どんなことが分からないのかとお聞きしたところ、「全部分からない」とおっしゃいます。
上司の名前もですか?とお聞きしたら、「それくらいは分かる」とのこと。
そんな質問を繰り返しながら、現時点でAさんが分かっていることに全意識を集中してもらったところ、漠然としていた不安が徐々に心配事に換わってゆきました。
今は何をすればいいかを知っていくべき段階にいること。
そのためにも積極的に上司や周りの人たちとコミュニケーションをとることが大切であること。
今やるべきタスクがいくつか分かり、それらを1つ1つこなしていくことがAさんの今後しばらくの目標となりました。
Aさんのように、不安があるときに、それについて誰かに話すというのはとても良い対処法です。
その際、不安は漠然としているほど高まるので、なるべく詳しく表現(言語化)することがポイントです
また、不安に思っていることを紙に書き出す(吐き出す)のも、話すのと同じ効果があります
スマホやPCよりも紙に書くこと(手書き)を強くおススメします。
手書きは、指で文字を打つよりも脳を刺激するからです
例えば、理解の促進、脳の活性化、創造性、思考の整理、自律神経が整う、集中を助ける等々
それからももう1つ、自分ひとりで出来ることがあります。
それは深呼吸です。
不安が強くなると、心臓がバクバクしたり、息が苦しくなったりして、体がフリーズしてしまいます
この状況をいち早く脱するためには、深呼吸が効果的です。
このとき、息を吐くことに意識を向けます。
パニックを起こしているので怖くて辛くてたまらないけど、とにかく深呼吸を続ける。
ゆっくり吐く(15~20秒)⇔ゆっくり吸う(5秒)を繰り返し行います。
でも、「長くするのは吐く方?吸う方?どっちだったっけー」なんて考えていたらますますパニックになるので、とにかくゆっくり呼吸を続けるだけで100点満点です
最後に、あなたの周りにもし不安そうな人がいたら、なるべく気にかけてあげてほしいです。
新しい環境においては特にそうしてあげてほしいです。
年齢、性別に関係なく、私たちは自分を待っていてくれる人の存在に安心するからです
不安そうには見えない(見せない)人もたくさんいます。
みんな、不安を感じながらも、勇気を出して何かをしたいと思っているはず。
大丈夫だよ。ここにいるから。何かあったらいつでも来て、話して。
嫌なら逃げていいんだよと伝えてあげてほしいです。
どんなに相手を思いやっていても、言葉でちゃんと言わないと相手には伝わりません。
今、その人が安心する言葉をかけてあげてください。
今を生き延びるためには、今この瞬間が安心できればいいのですから