■書評■ 20歳のときに知っておきたかったこと | 知磨き倶楽部 ~ビジネス書で「知」のトレーニングを!~

■書評■ 20歳のときに知っておきたかったこと


本書はスタンフォード大学で行なわれた起業家育成プログラムの講義内容をまとめたものであるとのことだが、こういう本を読むと「アメリカの大学はいい授業があるなあ」などと羨ましく思ってしまう。
まあ、僕が知らないだけで日本の大学でも素晴らしい授業は行なわれているのだろうし、僕の学生時代にももちろんそういった授業は存在しただろう。
ただ、僕が知らなかっただけで(例えば『東大オタク学講座』の存在とか卒業してから知ったし。)

こう、歳を経てから考えると、つくづく学生時代に勉強していなかったことが悔やまれる…orz
遊びやバイトに費やした時間が無駄になったとは思っていないけれど、かけがえのない経験と引き換えにした割には随分ともったい無い時間の使い方をしてきたなあと思うこともしばしば。
いかん、いかん、過去を悔いてみても何も生まれないのだから、同じ轍を踏まないように前を向いて進まなければ。


本書はタイトルこそ「20歳のときに知っておきたかったこと」とされているが、その内容は著者のティナ・シーリグさんが書いている通り、20歳のときだけでなく、30歳、40歳でも知っておきたかったことであり、著者が50歳となった今でも思い出さなくてはいけないことだという。

本書のメッセージ: わたしが伝えたかったのは、常識を疑う許可、世の中を新鮮な目で見る許可、実験する許可、失敗する許可、自分自身で進路を描く許可、そして自分自身の限界を試す許可を、あなた自身に与えてください、ということなのですから。(p.206)

つまり、僕らが意識的にせよ、無意識的にせよ自分自身に嵌めてしまっている枠を取り払おうというものなのだが、こういう言い方をすると安っぽいなあ(汗)
ただ、そうしたいと思いつつも自分自身が陥ってしまっている枠に気付き、そこから抜け出そうという気持ちを持ち、物事の見方・考え方を変えるように動いていくことは大切だ。

例えばこんな事例。
本書を紹介する際にあまりにも有名になってしまった事例(手元の5ドルを2時間で増やす)とは別の事例、しかしながら、現実にビジネスパーソンが陥りがちな事例を紹介してみよう。

とある企業人の発言: 企業幹部を対象にした講演で、「イノベーション・トーナメント」のビデオを見せたところ、その日の午後遅くなって、ある企業のトップがやって来て、「学生に戻れたら、どんなにいいでしょう。そしたら問題をつぎつぎと出されて、創造力を養えるのに」と嘆いたのです。(p.26)

さて、僕がこの事例を紹介する意図を考えてみよう。
「学生に戻れない」という思い込み?
いつだって学生に戻ろうと思えば(自分自身に許可を与えれば)戻れるのに?
いや、違う。

ティナ・シーリグの嘆き: わたしは戸惑いました。この人は、日々の仕事のなかで、柔軟に考えなければとても解決できない問題にぶつかっているはずなのに、と。残念ながらこの経営者は、自分の生活や仕事にも通じるとは思わなかったのです。(p.26)

そう、この企業経営者が本書で紹介されるような「演習」をあくまでも「演習」と捉えてしまっている点であり、自らの周りに現実に起こっている「問題」への取り組みに適用しようとしていない点(もしかすると「問題」にすら気がついていないのかもしれない点)が明らかになっている事例なのだ。
「授業ではそうかもしれない。だけど、現実問題はもっと複雑でそんな風にはいかないんだよ」
現場での経験が長くなるとついついこんなことを言って偉ぶってしまいがちな人が存在するということ(あるいは自分自身がそう言ってしまうかもしれないこと)は、想像に難くないだろう。

僕がこの事例を紹介する意図は分かってもらえるだろうか。
そう、僕らは本書のみならず、様々なビジネス書を読みながら、どこかこの企業経営者のように思ってしまっていないかという自省の意味を込めたかったのだ。
「ビジネス書は活かしてナンボ」というだけではまだ足りないのである。

解決策は必ず見つかる: 問題は至るところにあり、工夫して解決しようという意欲をもった人たちを待っています。問題を解決するには、さまざまなものが必要です。鋭い観察力、しっかりしたチームワーク、計画を計画で終わらせない実行力、失敗から学ぼうとする前向きな心、そして独創的な解決策。でも、まず必要なのは、問題は必ず解決できる、という気概を持つことです。(p.42)

ここでティア・シーリグが言いたかったことは、「問題を見つけ、常識を徹底的に疑うことで、その問題を解決すれば、大きな見返りがある」ということであり、それこそが、多くの起業家や投資家、有名になり過ぎた5ドルの事例に共通する考え方なのである。
そう、常識を疑う許可を自分自身に与えることが、まずもって大切だということだ。

このように、豊富な事例をもとにしながら、僕らが自分自身に許可すべきことについて、僕らの深いところに投げかけてくれる。
たとえ20歳のときに知っていなかったとしても遅くはない。
今からでも自分自身の枠は外せるし、どんな許可だって与えられるし、人生は変えられるのである。

え? 本書を読みたくなってきた? 自分自身に許可を与えて、人生を変えてみたくなってきた?
僕もそう思う。
では、最後に一つだけ、ティナ・シーリグの言葉を忘れないようにしよう。
自分自身に言い訳なんてできないように。

本気になって取り組むとは: 何かをしようとするのと、実際にするのでは大違いだ、ということです。わたしたちは、「何かをしようとしている」としょっちゅう口にします。減量であったり、運動であったり、職探しであったり。でも、ほんとうのところは、しているのか、していないのか、どちらかなのです。「しようとしている」というのは言い訳に過ぎません。何か事を起こすには、最低でも100パーセントの力を出して実現のために努力しなくてはなりません。100パーセントの力を出す覚悟がないなら、目標が達成できなかったとき、責めるべきは自分しかいないのです。
(中略)
 社会的に許される言い訳はできますが、本気でそうする気があるなら、実現する方法をひねり出しているはずです。(p.193)



■ 第56回書評ブロガー達が勝手にインパク本レビュー

本レビューは本魂!(ホンダマ)が企画したイベントへの参加であり、同じくイベントに参加しているブロガーの方々のレビューは以下のとおり。
是非、それぞれのブロガー独自の視点を比べて楽しんでもらいたいが、さらに、本書をお読みいただき感想を聞かせていただけたら、非常に嬉しい。

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■ 基礎データ

著者: ティナ・シーリグ
訳者: 高遠裕子
出版社: 阪急コミュニケーションズ 2010年3月
ページ数: 231頁
紹介文:
いくつになっても人生は変えられる!
「決まりきった次のステップ」とは違う一歩を踏み出したとき、すばらしいことは起きる。
起業家精神とイノベーションの超エキスパートがまとめた「この世界に自分の居場所をつくるために必要なこと」

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義
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