今日は米国の商業不動産ニュースから、「オフィス市場」の話題をご紹介します。

 

コロナ以降、「アメリカのオフィスはもうダメだ」という声を何度も聞いてきました。ところが最近、その流れが少しずつ変わってきています。

 

■ CoStarが回復見通しを上方修正

米国の大手不動産データ会社CoStarが、2027年末までの全米オフィス市場の見通しを引き上げました。

 

8月時点の予測と比べると、ネット・アブソープション(入居面積から退去面積を差し引いた「実需」)は、2026年が約1,300万→約2,000万平方フィート、2027年が約500万→約900万平方フィートに上方修正されました。2026年末の空室率は約13.6%と、前回予測(13.7%)からわずかに下がる見込みです。募集賃料も、今後数四半期は年2.5%前後、その後は3%近い上昇が見込まれています。

 

■ 回復の主因は「新しいビルが建っていない」こと

ここが今回のポイントです。

需要が力強く戻ったというより、新築オフィスの供給がほぼ止まっていることが空室率を押し下げている、というのがCoStarの分析です。需要の伸び自体は歴史的に見ても弱いものの、供給の急減がそれを補っている。CoStarのアナリストはこの状況を「ゆっくりだが着実な回復」と表現しています。

 

なお、賃料見通しの上方修正には、競争力を失った古いビルを統計の対象から外したという集計上の要因も含まれているそうです。

 

■ CBREのデータも追い風を示す

別の大手CBREのデータ(2026年第3四半期)でも、明るい数字が並んでいます。

  • リース契約面積は約6,380万平方フィートで、前年比4%増。2022年の過去最高を上回るペース
  • ネット・アブソープションは10四半期連続のプラス
  • 新規供給は約150万平方フィートで、前年比76%減
  • 賃料の伸びは2016年以来の高水準

需要を引っ張っているのはテック企業と、「より質の高いビルへの移転」です。

 

■ ただしリスクも

CoStarは、上振れと下振れの可能性はほぼ五分五分としつつ、下振れした場合の影響のほうが大きいとみています。具体的には、インフレの長期化、金利の高止まり、企業のさらなるコスト削減が挙げられています。

 

もう一つ気になるのがAIです。AIで知識労働の生産性が上がれば、オフィスワーカーの雇用そのものが減り、オフィス需要を押し下げる可能性があると指摘されています。