God Eater The Last Rage第7話
フェンリル本部 中央管理棟
グレイプニル連絡室
重厚な扉が静かに閉まり、室内には青白い照明と巨大なホログラムが浮かんでいた。
その中心に立つ男は、威圧感と静けさのある存在感をまとっている。
威厳のある軍服
短く整えられた白髪
落ち着いた瞳
フェンリル傘下組織"グレイプニル"
総督 エイブラハム・ガドリン。
ガドリン「来たか、ソーマ。」
ソーマ「……呼び出しとは珍しいな。」
ガドリンは両手を背に組み、ホログラムの地球儀を見つめたまま静かに話し始める。
ガドリン「ラグナロク計画の進捗を聞きたい。起動実験の準備はどうだ?」
ソーマはわずかに眉をひそめた。
ソーマ「まだ時期尚早だ。解析データに不明な揺らぎがある。未知の危険性を排除できない。」
ガドリン「……やはりか。」
ガドリンは深く息をつき、静かに頷く。
ガドリン「極東に生まれた"聖域"。あれを世界中に創り出す――それは全人類にとって希望だ。だが、焦る必要はない。」
ソーマ「今はイエスタとジョサイアが問題点の洗い出しと解決策を立てている。俺もデータの監査を続けてる。」
ガドリン「そうか。ならばいい。」
男の声は落ち着いているのに、どこか底が見えない。
ガドリン「ソーマ、またいずれ話そう。君の見解は聞いておきたい。」
ソーマ「……分かった。何か進展があれば連絡する。」
二人は軽く視線を交わし、ソーマは部屋を後にした。
バタン……と扉が閉まる。
室内に一人残されたガドリンは、小さく笑った。
ガドリン「……さすがはヨハネス・フォン・シックザールの息子だ。」
その声音には尊敬、期待、興味とも取れる複雑な静けさが宿っていた。
ーーフェンリル極東支部
午後8時 ラウンジ
アネット歓迎パーティ
ラウンジの真ん中に巨大モニターが設置され、テーブルの上には大量のお菓子。
カリカリ梅、じゃが餅、おいなりさん(皮なし)、ラムネコンポタ味(10円)、サンドイッチ(見知らぬおっちゃんがくれた)、サバ寿司
それらを横目に、ブラッドとアネットたちがやっているのは。
ーースマブラ大会ーー
ロミオ「よーし! キャプテンファルコン出撃だ!」
ギル「俺はマルスで決まりだろ。」
ナナ「カービィかわいい〜!」
シエル「……私はサムスで。」
スズ「じゃあ私はロイかな。」
アネット「えへへっ。ドンキー使ってみます!」
エミール「皆の者ーー!! 我が華麗なる声援を受け取るのだ!!」
ギル「うるせぇ。」
ゲーム開始。
フィールド 終点
ステージ上では、カオスそのものの戦いが繰り広げられた。
ナナ「吸い込みー!!」
アネット「はぁぁ!! うりゃぁ!!」
ギル「バカみてぇな火力だな……!」
シエル「…狙い撃つ。」
ロミオ「このっ……俺のファルコンへの愛をなめるなよ!!」
スズ「ちょロミオ、暴れないで……!」
エミール「ナイス一撃だシエル殿ーーー!! もっとだ!!」
シエル「静かにしてください。」
混沌としたバトルの末、敗者が脱落していき…
最終的に、画面に残ったのは
ロミオ(ファルコン)
シエル(サムス)
この二人。
ロミオ「来たな……運命の一騎打ち!!」
シエル「…潰します。」
エミール「騎士道ー!! ここからが真の決闘ッ!!」
互いの体力が削れ、ステージ端に追い詰められる。
ロミオ「見ろ!俺の魂が燃えてる!! いくぞシエル!!」
ロミオ、溜め始める。
ファァァァァ……
ロミオ「ファルコォォォォン……」
シエル「まさか……正面から来るつもり……?」
ロミオ「パァァァァァァァンチ!!!」
ズガァァァァン!!
シエルのサムス、吹っ飛び画面外へ消滅。
GAME!
ロミオ「やったぁぁぁ!! 見たかシエル!!これが俺のファルコンパンチだぁぁ!!」
煽りが止まらないロミオ。
そこへ、静かに立ち上がるシエル。
シエル「…………ロミオ。」
ロミオ「ん? なんだよ、悔しいか? ん?ん?」
次の瞬間。
シエル「ファルコン……パァァァンチ!!!」
ドゴォォォォ!!!
ロミオ「ぐへあああああああああ!!?」
ロミオは椅子ごと吹っ飛び、壁に激突して崩れ落ちた。
エミール「ロミオ殿ーー!! 無念!!何という非業!!」
スズ「ちょ、ちょっと大丈夫!?」
ナナ「ロミオ先輩ー!!」
アネット「ええぇーーー!?」
シエルは席に戻り、何事もなかったように紅茶をすする。
シエル「……手が滑りました。」
ギル「いやわざとだろ。」
ロミオ「ぐ……ファ……ルコン……(断末魔)」
ロミオ――死亡。
ーー翌日
フェンリル本部近郊
外部居住区
被害調査任務
壊れた建物の間を、作業員たちが忙しく往来していた。
瓦礫の撤去、資材の運び込み、家屋の応急処置。
先日の襲撃の爪痕はまだ濃く残っている。
サバタはその真ん中で、明らかに退屈そうに舌打ちした。
サバタ「……クソだりぃ。なんで俺がこんな後始末やってんだよ。」
リヴィは端末を操作しながら、淡々と返す。
リヴィ「文句を言っても仕方ない。任務だ。」
サバタ「チッ…うっとうしい。」
リヴィはそれ以上何も言わず、他の作業員のところへ向かう。
リヴィ「ここは終わったか。資材は足りているか。」
作業員「あっ、リヴィさん! はい、もうすぐ片付きます!」
リヴィは静かに頷き、他の班の作業状況を確認しに歩いていく。
サバタは一人、少し離れた切り株に腰を下ろし、ぼんやりと空を見上げた。
サバタ「……くそが。」
そんなときだった。
???「あっ! お兄さん!!」
小さな声とともに、遠くから勢いよく走ってくる影。
先日助けた少女だった。
サバタ「…また来やがった。」
少女は息を弾ませながら、笑顔でサバタに駆け寄る。
少女「やっぱり来てたんだね! 」
サバタ「うるせぇ……仕事だ。」
少女は気にも留めず、サバタに近づく。
少女「ねえねえ、お兄さん……これ!」
少女は背中に隠していた包みを前に出した。
サバタ「……なんだよ、それ。」
少女は嬉しそうに包みを開く。
中には小さな不格好なおにぎりがいくつも並んでいた。
少女「これ、わたしが握ったおにぎり! 一緒に食べよ!」
サバタ「……は?」
少女「お兄さん、いつもつまらなそうな顔してるから……元気になれますようにっておまじないしながら作ったの!」
サバタ「……いらねぇよ。」
少女「えぇーっ!? なんでぇ……!」
少女はしゅんと肩を落とし、悲しそうにサバタを見る。
その視線に、サバタは舌打ちした。
サバタ「……チッ、仕方ねぇな。」
サバタは一つのおにぎりを無造作に取る。
少女の顔が一気に明るくなる。
少女「やったぁ!!」
少女はサバタの横にぴょこんと座った。
サバタ「おい、近寄んな。」
少女「えへへっ。いただきまーすっ!」
少女は元気よくおにぎりを頬張る。
サバタもめんどくさそうに、一口かじった。
少女「どう? 美味しい?」
サバタ「……まずい。」
少女「ええーーーっ!? 頑張って作ったのに!」
サバタ「ふん…まあ腹の足しにはなる。」
少女はほっとしたように笑う。
少女「わたし、ルナっていうの! お兄さんは?」
サバタ「……サバタだ。」
ルナ「サバタ……かっこいい名前だね!」
サバタ「なんだよそれ……。」
サバタが食べ終えると、ルナはもう一つ差し出した。
ルナ「はい! まだまだあるよ!」
サバタ「……あとはお前が食え。」
ルナ「え? いらないの?」
サバタ「……食える時に腹いっぱい食っとけ。それが……この世界で生きる方法だ。」
ルナは少し驚き、それから真剣に頷いた。
ルナ「……うん、分かった!」
立ち上がったルナは、おにぎりの包みを抱えたまま手を振る。
ルナ「じゃあね!ママのお手伝いしてくる! また来てねー!」
サバタ「……勝手に言ってろ。」
ルナは元気よく走り去っていった。
そんなルナの姿を遠くから横目で追う作業服の男の姿があった。
男「………。」
男は冷徹な笑みを浮かべ、周りと同じように復興作業をしてる風を装った。
サバタはルナの背中を目で追い、呟く。
サバタ「……変なガキだぜ。」
少し離れた場所では、作業報告を終えたリヴィが戻ろうとしていた。
その途中でルナとすれ違い、ルナは嬉しそうにリヴィへ手を振る。
ルナ「お姉ちゃん、またね!」
リヴィ「……ああ。気をつけて帰れ。」
おにぎりの包みが開いたまま、ルナは駆けて行った。
リヴィ(おにぎり....あの子が作ったのか?)
ルナが遠くへ走っていくのを見届けてからリヴィはサバタのもとへ戻る。
近づいた瞬間、サバタの口元に米粒が一つ付いているのが見えた。
リヴィ「……。」
(そういうことか)
リヴィは少しだけ微笑んだ。
サバタ「なんだよ。何笑ってんだ。」
リヴィ「別に。」
サバタ「気色悪ぃ奴だな。」
リヴィは答えず、ただ彼の横で帰り支度をした。
瓦礫の街に吹く風は冷たかったが――二人の間に流れる空気は、昨日よりほんの少しだけ柔らかかった。
ーーその夜
フェンリル本部
戦略会議室
重い扉が閉じると、室内は静寂に包まれた。
円卓の周囲には本部幹部たちが並んでいる。
フェルドマン局長もその一人だ。
壁面には世界地図が投影され、無数の赤い光点が点滅していた。
アラガミ出現率の増加を示すデータだ。
幹部「…アラガミの増加速度は、去年の1.6倍です。
このままでは、各地の支部が持ちません。」
幹部「戦力強化は必須だ。特に中堅クラスの神機使いの底上げが必要だ。」
フェルドマンは腕を組みながら低く言う。
フェルドマン「そこで議題に上がっている“極東のブラッド隊”だな。」
別の幹部が資料を開く。
幹部「はい。特にブラッド隊、スズ隊長の能力が注目されています。」
モニターにスズの戦闘ログが映し出される。
高精度の連携、味方を活かす戦術、そして“血の力・喚起” の波形データ。
幹部「スズ隊長の“喚起”は、他者の潜在能力を引き出す特殊な血の力。あれを本部でも活かしたい。」
幹部「さらに、“ブラッドレイジ”。神機の制御リミッターを外し、一時的に超出力を引き出す能力。
……ぜひ実際に見ておきたい。」
幹部たちの視線がフェルドマンへ向く。
フェルドマンは少しだけ考え、静かに頷いた。
フェルドマン「極東へは私も以前出張したことがある。スズは実力、人格、どちらも規範となる神機使いだ。彼女なら本部の戦力底上げに大きく貢献できる。」
幹部「では決定ということでよろしいですか?」
フェルドマン「ああ。本部はスズ隊長を招集し、新人育成および戦力強化の要として働いてもらう。」
議場が静かに頷きに包まれた。
幹部「極東支部へ通達します。」
フェルドマン「よろしく頼む。」
会議は終了し、重役たちは散っていった。
フェルドマンは資料を閉じながら、小さく呟く。
フェルドマン(……極東の仲間たちは寂しがるだろうが。今は、彼女が必要だ。)
ーー極東支部
支部長室
スズが呼ばれ、サカキ博士の前に座っていた。
サカキ「スズ君、本部から正式な依頼が来たよ。...本部へ行って、しばらく向こうで働いてほしいそうだ。」
スズ「えっ、私が、ですか?」
サカキ「ああ。君の“喚起”と“ブラッドレイジ”を、本部が高く評価していてね。新しい育成プログラムに君の力が必要らしい。」
スズは驚きつつも、すぐに姿勢を正した。
スズ「分かりました。本部のためになるなら、行きます。」
サカキは穏やかに笑った。
サカキ「ありがとう、スズ君。明日の朝、ヘリが迎えに来る。準備をしておいてくれ。」
ーーラウンジ
その夜
スズの報告に、ブラッドの仲間たちは驚きつつも笑顔で囲んだ。
ナナ「隊長すごいよー!本部デビューだね!」
ロミオ「うわぁ…本部の教官か……いいなぁ😒」
ハヤオ「かつくんかよ。」
シエルは静かに微笑む。
シエル「隊長、ブラッドのことは任せてください。こう見えて、私……副隊長なので。」
スズ「うん、頼りにしてるよシエル。」
ナナ「お土産は通りもん買ってきてねーーーーっ!」
ロミオ「やめろナナ!がめついぞ!」
シエル「では、私は博多ぽてとを……」
ギル「おいお前も便乗するな。」
スズはみんなの顔を見渡し、自然と笑みがこぼれる。
スズ「ありがとう、みんな。少しの間だけど行ってくるね。」
スズを囲むように温かい空気が広がった。
明日、スズは新たな任務へ向け本部へと旅立つ。
ーーーフェンリル本部
研究室
室内は静まり返っていた。
稼働中の端末が低く唸り、無機質な光が壁際の装置を照らしている。
中央のホログラムには、サバタの戦闘ログが多層的に展開されていた。
移動軌跡、反応速度、踏み込み角度、オラクル消費率。
そして――味方の存在距離。
ソーマは腕を組み、無言でそれらを見つめていた。
フェルドマンは一歩下がった位置で、落ち着かない様子で腕を組み直す。
リヴィは壁際に立ち、モニターを鋭い視線で追っていた。
しばらく、誰も口を開かなかった。
やがてソーマが、低く息を吐く。
ソーマ「……やっぱりな。」
指先で操作すると、映像が切り替わる。
サバタが完全に単独で突入しているフレーム。
数値が跳ね上がる。
反応速度、命中精度、踏み込み速度。
続いて、リヴィが近接しているフレームへ。
数値はーー確実に落ちていた。
フェルドマン「……誤差、ではないな。」
ソーマ「ああ。距離が近づくほど、性能が落ちる。」
リヴィが眉をひそめる。
リヴィ「共闘しているにもかかわらず、か。」
ソーマ「正確には“共闘しているから”だ。」
ソーマは表示されている神機データに目を落とす。
そこには、ロングブレード《呪刀》の構造解析結果が浮かんでいた。
ソーマ「この神機……とんだヘソ曲がりだ。」
フェルドマン「ヘソ曲がり?」
ソーマ「孤立しているほど反応が鋭くなる。逆に、味方が近いほど性能が落ちる。」
リヴィは無言で画面を見つめる。
ソーマ「まるで“一人で戦え”と言っているみたいに。」
フェルドマン「……共闘を拒んでいるとでも言うのか?」
ソーマ「そうだ。呪刀は孤独を好んでいる。」
リヴィ「では……サバタが戦いにくそうだったのは……。」
ソーマ「ああ。お前が近くにいたからだ。」
一瞬、空気が張り詰める。
だがソーマは、すぐに続けた。
ソーマ「だが、それでも――だ。」
再生された映像。
囲まれながらも、力で押し切るサバタの姿。
ソーマ「この条件下で、なおサバタは勝利している。」
フェルドマン「……異常だな。」
ソーマ「神機が強いわけじゃない。」
少しだけ、ソーマの声に力がこもる。
ソーマ「サバタ自身が、異常に強い。」
リヴィは視線を伏せ、短く息を吐いた。
リヴィ「……なら、単独任務に切り替えるべきなのか?」
フェルドマンも頷く。
フェルドマン「理屈だけ見ればそうだ。呪刀の性能を最大限引き出すなら、単独行動が最適だろう。」
ソーマは即答しなかった。
ホログラムの呪刀を見つめ、しばらく考える。
そして、静かに首を振った。
ソーマ「……いや。」
フェルドマン「......ん?」
ソーマ「単独で行かせれば、確かに強くなる。だがそれは、答えを先延ばしにするだけだ。」
リヴィが顔を上げる。
リヴィ「答え?」
ソーマ「呪刀が共闘を受け入れる方法だ。」
フェルドマン「……そんなもの、存在するのか?」
ソーマは小さく笑った。
ソーマ「分からん。だが、呪いを理解せずに運用するのは、悪手だ。」
そして、リヴィを見る。
ソーマ「引き続き、サバタと組んでほしい。」
リヴィ「……承知した。」
ソーマ「お前が近くにいることで性能が落ちる。それでも戦えているという事実こそ、突破口になる。」
フェルドマン「……危険だぞ。」
リヴィ「問題ありません。」
一瞬、研究室に沈黙が落ちる。
ソーマは最後に、呪刀のデータを見つめて呟いた。
ソーマ「孤独を力にする神機……か。」
そして、低く続ける。
ソーマ「それをねじ伏せてサバタは前線に立っている……皮肉だが、興味深い。」
リヴィは小さく息を整えた。
リヴィ「……サバタは、そのことを知っていると思うか?」
ソーマ「知っているさ。」
即答だった。
ソーマ「知らなければ、あの立ち方はできない。」
フェルドマンは苦々しく笑う。
フェルドマン「……厄介な男だ。」
ソーマ「だからこそ、目を離すな。」
研究室の光の中、呪刀のホログラムは静かに回転を続けていた。
使用者が孤独であるほど、刃は冴え、反応は研ぎ澄まされる。
背を預ける相手がいないほど、呪刀は正確に、容赦なく敵を断つ。
逆に、他者が近くにいるほど、性能は鈍る。
孤独を求める刃。
それを手に戦う男。
その歪な組み合わせが、やがて何を生むのかーー
そして、呪刀が共闘を受け入れる方法は存在するのかーー
それはまだ、誰にも分からなかった。
God Eater The Last Rage第7話 完
