God Eater The Last Rage第6話






フェンリル本部


外縁エリア・戦闘後


サバタとリヴィの周囲には、さきほどまで暴れていた複数の中型アラガミの無残な死体が散乱していた。


血と灰が入り混じった臭気が漂う。


サバタは呪刀を乱暴に振り払い、血を飛ばす。


サバタ「……ちょろいな。」


リヴィはヴァリアントサイズを静かにおろしながら、何も表情を変えずに言う。


リヴィ「死体を無駄に壊すな。後処理が面倒になる。」


サバタ「は?お前が勝手についてきただけだろ。」


リヴィ「違う。私は監視だ。お前の粗暴な行動を記録している。」


サバタ「……喧嘩売ってんのか。」


リヴィ「事実を述べただけだ。」


火花が散るような視線。


今日もこのバディは終始ギスギスしている。


サバタ「……まだ暴れ足りねぇな。」


リヴィ「なら黙って訓練場にでも行け。私は付き合わない。」


そこへ突然


ドッガーーーン!!


外部居住区の方角から、建物が崩れる大きな轟音と、人々の悲鳴が響いた。


サバタ「……なんだ?」


リヴィはすぐに音の方向へ顔を向け、神機を構える。


リヴィ「行くぞ。」


サバタ「……へっ。ちょうど暴れ足りなかったところだ。」


通信が入る。


オペレーター《居住区がアラガミに襲撃されています!住民が避難中!至急現場へ向かってください!》


リヴィ「聞いたな。向かうぞ!」


サバタは舌打ちしながらも走り出す。


サバタ「命令すんじゃねえ!」







ーー居住区



二人が到着した瞬間、そこは地獄のような光景だった。


崩れ落ちた住宅、逃げ惑う住民、泣き叫ぶ子どもたち。


瓦礫の隙間から立ち上る砂埃と焦げた匂いが、空気を重くする。


その中心で、黒い稲妻をまとったヴァジュラが唸り声を上げていた。


さらに周囲では、数体のシユウが空を切り裂くように旋回している。


住民「だ、誰か……助けて!!」


悲鳴が耳に刺さる。


サバタは舌打ちした。


サバタ「チッ……。目障りな連中だ。」


その言葉とは裏腹に、胸の奥がざわつく。


背後に立つリヴィの存在が、肌越しに分かる距離。


呪刀が、わずかに重い。


サバタ(……クソが。)


柄を握る感触が、本来と違う。


反応が遅い。


刃の“乗り”が悪い。


自分一人で戦っているときの、あの冴えがない。


リヴィ「散開。ヴァジュラは私がやる。」


サバタ「勝手に決めんな。」


吐き捨てるように言いながら、苛立ちが膨らむ。


サバタ(うっとうしい女だ……!)


次の瞬間、二人は同時に地面を蹴った。


ヴァジュラ『ギャアアアアア!!』


雷撃が地面を這い、瓦礫を吹き飛ばす。


リヴィは紙一重で回避し、軌道を読むように踏み込む。


そのまま一閃。


リヴィ「……沈め。」


ザシュッ!!


ヴァジュラの片脚が切断され、巨体がバランスを崩して地に伏せた。


完璧な一撃。


だが――


サバタは、ほんの一瞬、舌打ちする。


サバタ(……チッ。)


自分なら、もっと早く斬れていた。


そう思ってしまう自分に、さらに苛立つ。


高速で接近してきたシユウが、群れを成して迫る。


サバタは呪刀を振るった。


サバタ「邪魔だ、雑魚が。」


刃は走る。


だが、ほんの僅か、いつもより深く踏み込めない。


間合いが、微妙に狂う。


サバタ(……遅ぇ。)


呪刀が弧を描き、シユウを真っ二つに裂く。


遅れはあったが、斬撃そのものは致命的だった。


血とオラクル粒子が空中に散る。


さらに残っていた2体。


リヴィのサイズが音もなく走り、首を刈り取った。


サバタはそれを横目で見て、奥歯を噛みしめる。


サバタ(……邪魔くせえ。)


呪刀が機嫌を損ねている。


自分の腕が鈍ったわけじゃない。


分かっている。


それでも――


サバタ(クソ神機が……!)


どうにか力で敵を押し切った。


リヴィ「……終わった。」


サバタ「ふん……弱えのしかいねぇな。」


吐き捨てるように言いながら、内心では違う感情が渦巻いていた。


もっと斬れた。


もっと速く終わらせられた。


そのはずなのに。


二人は神機を下ろし、周囲を見渡す。


住民たちは怯えながらも、助かったことを理解し始めている。


サバタは背を向け、呪刀を肩に担ぎ直した。


呪刀は、静かだ。


だが、その沈黙が、余計に苛立ちを煽る。


サバタ(……ポンコツが。)


敵は全滅。


……のはずだった。


そのとき。


瓦礫の影から、小柄な影が飛び出した。


『オウガーーー!!』


小型アラガミ・オウガテイル。


逃げ遅れた少女へ一直線に飛びかかる。


少女「いやっ……!!」


リヴィ「……!」


サバタ「チッ……!」


誰よりも早く動いたのはサバタだった。


彼は地面を抉る勢いで跳び込み、オウガテイルの首元を一刀で断ち切る。


ザシュッ!!


少女の目の前で、オウガテイルは崩れ落ちた。


サバタ「……チッ、こんな雑魚が残ってんじゃねぇよ。」


少女「……あ、ありがとう……!」


少女は涙を浮かべながらサバタを見上げる。


少女「助けてくれて……本当に……!」


サバタは顔を背け、吐き捨てるように言った。


サバタ「....さっさと帰れ。」


少女「……は、はいっ!」


少女は頭を下げ、急ぎ避難所へ駆けていった。


リヴィはその背中を見送ってから、サバタへ視線を向ける。


リヴィ「……お前にしては珍しいな。」


サバタ「は? 何がだよ。」


リヴィ「住民を助けた。」


サバタ「邪魔だったから斬っただけだ。」


リヴィ「……そうか。」


サバタ「なんだその目は。文句あんのか?」


リヴィ「ない。行くぞ。まだ確認が残っている。」


サバタ「……チッ、気に入らねぇ。」


瓦礫の中を歩く二人の背中。


その距離は相変わらず冷たく、険悪そのもの。


しかし。


確かにその一瞬だけ、サバタの刃は“誰かを守るために”振るわれていた。


最悪に噛み合わない二人の戦いは、まだ始まったばかりだった。






ーーフェンリル極東支部



贖罪の街


昼の太陽が差し込む荒野に、アラガミ反応が複数浮上していた。


スズがホログラム端末を確認し、仲間へ振り向く。


スズ「目標はボルグカムラン2体、その後方にサリエル2体。ちょっと多いけど……みんなで分担していこう。」


ロミオ「ボルグ2体はキツいぞ……刺される未来が見える……!」


ギル「泣き言言うな。まずは手前のボルグから落とすぞ。」


アネットは神機を肩に担ぎながら、わくわくしたように笑う。


アネット「ボルグ……久々に戦います! あの針の振り下ろし、懐かしいですね!」


シエル「……懐かしい、という感覚で語れる敵ではないと思いますが。」


スズ「よし、開戦するよ!」


ボルグカムラン戦


砂煙を割って、サソリ型アラガミ・ボルグカムランが突進してきた。


振り上げた巨大な爪がスズへ迫る。


ギル「スズ、気をつけろ!」


スズ「大丈夫!」


スズは飛び込みながら神機を展開。


太刀筋が一閃、ボルグの脚を正確に切り崩す。


ザシュッ!!


『ギャオオオッ!!』


もう一体のボルグがスズを挟み込むように突進する。


ロミオ「スズ!! 左ッ!」


スズ「見えてる!」


スズは滑るようにステップし、ボルグ2体の中央に入り込む。


そのままバスターブレードを振り上げ——


スズ「はぁーーっ!!」


轟音と共に、ボルグの甲殻が大きく割れた。


シエル「……相変わらず見事な剣筋です。」


ギル「任せっぱなしってのも悪いな。ロミオ、右のやついくぞ。」


ロミオ「お、おう!」


ギルが突進し、スピアでボルグの頭部を突き上げる。


とどめはスズの一振り。


スズ「終わりだよ!」


ボルグカムランは地面に崩れ落ちた。


アネットは目を輝かせていた。


アネット「スズさん、すごいです! あんな正確な剣技……!」


スズ「あ、ありがとう。アネットさんも、後ろのサリエル頼んでいい?」


アネット「はいっ!!」


サリエル戦


奥の瓦礫地帯から、サリエル2体が浮かび上がる。
紫の翼を広げ、不気味な魔法陣の光が地面を包む。


サリエル『ピャアアアッ!』


ロミオ「出たよ……サリエルの魔法フィールド……足が止まるやつ!」


シエル「注意してください。あの光の範囲では動きが鈍ります!」


ナナ「アネットさん、危険だから下がって──」


アネット「大丈夫です!」


アネットは魔法のフィールドへ、迷いなく飛び込んだ。


ギル「おい、正気か……!? 動けなくなるぞ!」


しかし


アネット「んっ……!」


アネットは、そのままサリエルのフィールドを力ずくで踏み砕いた。


バキィィィッ!!


ロミオ「えっ……今どうやって…?」


サリエルの魔法弾が降り注ぐ。


しかしアネットは鎌のように振るったバスターブレードで全て叩き落とす。


アネット「せいっ……! それっ……!」


光弾が粉砕され、散ったエフェクトが雨のように舞う。


シエル「……まさか全部叩き落としたんですか?」


ギル「いや無理だろ普通……魔法だぞ……?」


アネットはそのままサリエルに肉薄し、フィールドごと胴体をぶった斬った。


ドォンッ!!


サリエル『(ええーーー💦)!!』


ロミオ「つ……強すぎる……!」


ギル「ゴリ押しかよ……!」


残る一体もアネットが怒涛の力押しで撃破した。


全員が唖然と口を開く。


スズ「アネットさん……どうやってサリエルの魔法フィールドを突破したの……?」


アネットはにこっと笑った。


アネット「えっと……足に“すごく力を入れて”踏み込みました。魔法の膜みたいなやつ、ギュッと押したらバキッって砕けたので!」


シエル「……説明が……物理ですね。」


ロミオ「魔法の膜を押して砕くって何……?」


ギル「物理で解決するなよ……!」


ナナ「すごーーい!! さすが壊し屋さん!!」


アネット「えへへ……任務達成ですね!」


スズは思わず笑いながら頷いた。


スズ「うん。ありがとうアネットさん。これなら次の任務も安心して一緒に行けそう。」


アネット「こちらこそ! また一緒に戦いましょうね!」


極東の空に、仲間の笑い声が響いた。


アネットとブラッドの共同戦は、見事に成功した。


その夜はラウンジで賑やかな夜を過ごしたのだった。






ーー翌日



フェンリル本部近郊 外部居住区


昨日襲撃された居住区は、破壊された家屋の残骸がまだ残り、焦げた匂いが風に混じって漂っていた。


リヴィとサバタは、任務で昨日の被害状況の調査に来ていた。


サバタは瓦礫を蹴飛ばしながらあからさまに不機嫌な顔をする。


サバタ「……クソが。なんで俺がこんな掃除みてぇな仕事してんだよ。」


リヴィ「任務だからだ。文句を言わずにやれ。」


サバタ「チッ……退屈すぎて死にそうだぜ。」


リヴィはスルーしたまま、端末で破損箇所のチェックを続ける。


すると、その背後から小さな足音がとことこ近づいてきた。


???「あっ……あの!」


サバタ「……なんだこいつ?」


リヴィはちらりと少女を見て答える。


リヴィ「昨日、お前が助けた少女だ。」


サバタ「ああ……あのガキか。」


少女は昨日よりも少し勇気を振り絞ったような顔で、サバタの前まで歩いてくる。


少女「あの……昨日は……助けてくれて、ありがと……!」


礼の言葉には震えがあった。


サバタは顔をしかめる。


サバタ「……うるせぇガキだな。用済みなら帰れ。」


少女は少し傷ついた顔になるが、それでも懸命に立ち止まったまま何かを取り出した。


少女「これ……あの、お兄さんに……渡したくて...。」


彼女の小さな両手に乗っていたのは、明らかに不器用な手作りのお守り。


布は歪み、糸は曲がり、形はいびつ。


だが時間をかけて縫ったことだけは分かる、必死の作品だった。


少女「お兄さんが……怪我しませんようにって、願いを込めたの……。」


サバタ「…………いらねぇよ。」


少女は悲しそうに目を伏せる。


少女「……そっか……。」


その瞬間、リヴィは小さくため息をもらす。


そしてすぐ横から小声でサバタに言う。


リヴィ「……受け取ってやれ。」


サバタ「はぁ?なんでだよ。」


リヴィは少女に聞こえないよう、小声で強く言う。


リヴィ「この程度の気遣いもできないのか。面倒でも受け取れ。」


サバタ「チッ……なんで俺が……。」


リヴィ「……いいから、受け取れ。」


圧の強い低音だった。


サバタは舌打ちし、しぶしぶ手を伸ばす。


サバタ「……ほらよ。これで満足か?」


少女の顔がパッと明るくなる。


少女「うんっ!!ありがと!!」


少女は嬉しそうに笑った。


少女「これからも……守ってね、お兄さん!」


サバタ「勝手に決めんな。」


少女は小さく手を振って、避難所の方向に走り戻っていった。


その少女の姿をジッと見つめる作業服を着た男の姿があった。


男「......。」


その男はニヤリと笑みを浮かべ、違和感なく作業に戻る。


その男の異質さに気づく者はまだ誰一人いなかった。


少女が去り、リヴィとサバタの間に静寂が戻る。


リヴィは端末を見ながら言う。


リヴィ「...あの子、嬉しそうだったな。」


サバタ「知るかよ。ガキの考えることなんざ分かんねぇ。」


そう言いながらも


サバタはお守りを、しっかりポケットへ入れていた。


リヴィは目でそれに気づいたが、何も言わなかった。


サバタ「……チッ。邪魔くせぇ。」


言葉とは裏腹に、お守りを押し込む手はほんの少しだけ慎重だった。







God Eater The Last Rage第6話 完