最近はコロナやなんかで近所を歩くことも稀になってしまいましたが、こどもの頃は友だちのところへよく遊びに行ったものです。

 

『〇〇く~ん、遊ぼうや。』家の外の道路から大声で呼び掛けていました。

 

当時は携帯電話など夢物語、カラーテレビやマイカーが高嶺の花で家になかった時代で、やっとこさ黒電話が家に入って電話がついたと喜んでいたのが思い出されるようなころの話です。

 

そんなふうにして遊んだ友だちもバラバラになってしまい、記憶を頼りにかつての友だちの家があった場所を訪ね歩いても、思い出の中の建家が残っていることはほとんどありません。

 

みんなどこへ行ってしまったのか。

 

親はつぎつぎと鬼籍に入っていき、離れて暮らすこども達はそれぞれの土地での生活を優先して結局生家と土地は売りに出される。

 

新陳代謝と言えばそうかもしれませんが、故里は寂しくなるばかりです。

 


映画『高津川』、2019年に広島で先行上映されたときに一度観たきり、その後コロナ禍で公開が延び延びになっていた映画ですが昨年2月に全国で公開、ただ単館系のため映画館でこの作品を観られた方はごく少数ではないでしょうか。

 

最近DVD化されました。でもこちらもアマゾンで買えないという稀有な存在で、最初は信じられませんでしたが、ジュンテンドーという島根県益田市に本拠を置くホームセンターのサービスカウンターで予約してやっとこさ購入できました。

 

WHY???

 

『十八番!薬効あり!!』とテレビドラマ「JIN」で高らかに叫ぶシーンが印象に残る田口浩正さんが、都会に出たきり郷里を顧みることがなかった弁護士まこと役で、認知症を患った父親との対面するシーンでは思わず涙が溢れました。

 

高橋長英さんが演じる父親がおかえる(ボケる)前の台詞では…。

 

『まことが大学に合格したときはそりゃ嬉しかった。まことが子供のころから勉強ができると言ってカミさんは喜んどった。あいつはいったい何を学んどったのかのう。』(中略)『田舎の親はたいへんだ。手塩にかけて育てた子を、都会に出してせっせと仕送りして、卒業したらそれっきり。人がおらんようになって、山が荒れて、畑も田んぼも荒れ果てる。そうすると川も汚れて鮎もいなくなる。いつしか都会も成り立たなくなる。頭のいいもんならわかるはずじゃがのう。』

 

これは現代の日本国内でどこにでもある話、でも戦後日本の政治経済の在り方を全否定していると言ってよく、切り捨てられて来た弱者の魂の叫びのように聞こえます。

 

実質賃金はこの20年上がっていない。

全国に空き家が850万戸もあるのに都市部には新築の家が建ち続ける。

鳥インフルで鶏がたくさん殺された結果卵の値段が倍になる。

欧州の戦争で小麦の輸入が脅かされると食品の値段にすぐ跳ね返る。

田舎の荒れ果てた田畑が太陽光のパネルだらけになって住民が逃げ出す。

牛乳が余れば廃棄や殺牛に補助金を出して推奨する。

 

最近のニュースの拾い読みですが、ホント良いニュースが少ない。
 

もう一つ挙げると、日本の食料自給率は先進国中で最も低い38%(2021年)です。世界的な食糧危機が起こった時に62%の輸入が止まったらどうなるか。真っ先に飢えるのは日本だとも言われています。

 

お金で買えない大切なものが失われ、世の中が悪い方に向かっているんじゃなかろうか。準高齢者の世迷い言に過ぎませんが、『高津川』はそんなことを考えさせてくれる映画でありました