前々回は、
2023年花き市場取扱高が3,605億円、
前年比1.1%減であったことを報告しました。
2024年7月14日「2023年花市場取扱高 前年比1.1%減」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12859789081.html
前回は、
国内生産の減少で、市場単価が毎年上昇、
消費者の買い控えが始まっていることから、生産者の経営の方向を考えました。
2024年7月21日「花市場取扱高から花農家の経営を考える」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12860405649.html
今回のお題は、
花市場の取扱高から、東京一極集中の現状を考えます。
このお題は、花市場取扱高が公表される7月のもはや定番。
昨年も取りあげました。
2023年7月9日「花市場取扱高V字回復から見える大田市場一極集中」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12811140098.html
今回は大田市場一極集中ではなく、大田花きに一極集中しているデータを紹介。
表1は、毎年おなじみの取扱高ランキング。
卸売市場各社の成績表。
業界人の居酒屋談義なら、このランキングだけで、勝った負けたと一晩熱く語り明かせるでしょう。
表1 2023年花き市場取扱高ランキング(花卉園芸新聞 2024年7月15日)
取扱高ランキング、
注目すべきは、順位ではなく、「東京一極集中」。
ますます東京一極集中がすすんでいます。
グラフが続きます。
適当に読み飛ばしてください。
図1は、
花市場取扱高(青棒グラフ)と、東京都中央卸売市場花き部5市場の取扱高占有率(5市場取扱高/全市場取扱高、赤折線)の推移。
データは、市場統合により今日の体制になった2002年から。
花き卸売場市場協会、東京都中央卸売市場花き部年報データを宇田作図(以下おなじ)
取扱高は、2002年の4,804億円から23年には3,605億円に減ったことはすでに紹介しました。
その取扱高に占める東京5市場の割合(赤折線)が、年々増えています。
2002年には20.2%でしたが、23年には25.1%。
取扱高の1/4が東京の市場で売買されています。
東京都内の花市場は、いずれも中央卸売市場。
北足立、大田、板橋、葛西、世田谷の5市場花き部。
5市場すべてに集中しているのではありません。
図2は、
5市場の2002年と2023年の取扱高占有率の変化。
図2 東京5市場取扱高の2002年と2023年の占有率(東京市場取扱高/全市場取扱高)の変化
占有率が群を抜いて大きいのは大田市場。
次に世田谷市場。
のこりの3市場はほぼおなじ。
集中が進んでいるのも大田、世田谷の2市場。
占有率、
大田は10.8%(02年)→15.6%(23年)。
世田谷は3.0%→3.8%。
のこりの3市場は2023年の占有率は2002年より小さくなっています。
つまり、東京一極集中ではなく、大田市場へ一極集中。
大田市場、世田谷市場にはそれぞれ2卸売業者が入場しています。
東京には、5市場・7卸売業者。
図3は、
7卸売業者(いわゆる世間で市場とよばれている)の2002年と2023年の取扱高占有率の変化。
図3 東京市場7卸売業者取扱高の2002年と2023年占有率の変化
大田市場、
大田花きは5.8%(02年)→8.9%(23年)。
同 FAJは5.1%→6.7%。
世田谷市場、
世田谷花きは1.9%→2.5%。
同 砧花きは1.0%→1.3%。
北足立市場の第一花きには説明が必要です。
02年から12年には東京花きとの2卸売業者体制。
12年に東京花きが廃業、
そのため北足立市場としては占有率を下げました。
残った第一花きとしては1.8%→2.2%に上げました。
図3からわかることは、大田市場以外の5卸売業者は取扱高占有率が1~2%、
東京一極集中ゲームに参加しているとはいえないようです。
このことを明確にしたのが図4と5。
おなじようなグラフが続きますが、ご辛抱を。
図4と5は、取扱高占有率ではなく、それぞれの2023年取扱高の2002年対比。
図4は5市場の取扱高について。
全市場では25.0%減。
東京5市場合計では6.6%減。
全国よりは減り方が小さいものの東京全体でも2002年より減っています。
それにもかかわらず、大田市場だけが8.3%増。
きわだっています。
世田谷市場は4.3%減で踏みとどまり。
北足立、板橋、葛西は30%以上の大きな減少。
図5は、7卸売業者の2002年対比。
5市場では大田市場だけがプラス、
7卸売業者では大田花きだけがプラス、16.3%増。
大田市場のFAJですら1.2%減。
長々と東京一極集中の実態を説明。
東京一極集中ではなく、大田花き一極集中がおわかりいただけたと思います。
2002年から2023年までの各社取扱高の変化、
大田花きは45億円増。
大田花き以外の6社は合計84億円の減。
減った84億円は大田花きに吸いとられた分と、マーケットの縮小による自然減と考えることができます。
花産業の一極集中は、日本国が抱える一極集中問題より単純。
地方創生政策が始まって10年。
政府は、「地方創生10年の取組みと今後の推進方向」を発表(日本農業新聞2024年6月11日)。
人口減少や東京圏への一極集中などの大きな流れを変えるには至っておらず、地方が厳しい状況にあることを重く受け止める必要がある。
今後の課題に、東京圏への過度な一極集中への対応を進めていくことを挙げた。
儲かるところに、ヒト・モノ・カネが集まるのが経済の原則。
東京という巨大なブラックホールのような経済圏に、ヒト・モノ・カネが吸いこまれている。
花産業はそうではない。
東京に吸い寄せられているのではなく、東京にある大田花きに吸い寄せられている。
立地+大田花きの経営努力。
運賃をかけても大田花きに送れば売ってもらえるという産地の安心感。
生産者、産地の期待に応える大田花きの営業力。
株を上場し、経営を透明化。
しかし、一極では花産業の健全な発展ができません。
多極化が必要。
地方大都市、仙台、名古屋、大阪、福岡・・・
地方の拠点市場の覚悟と実績が期待されています。
それが実現してこそ、花産業のV字回復。
輸送の2024年問題が、多極化の背中を押してくれています。
来年公表される花市場取扱高ランキングには、地方拠点市場の実績が反映されていることを期待します。
宇田明の『もう少しだけ言います』(No.439. 2024.7.28)
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