クラレ調査 新小学1年生女子の親は子どもを花屋にさせたくない | 宇田 明の『もう少しだけ言います』

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今回のお題、
朝日新聞 「天声人語」でも話題、
ランドセルメーカー クラレ
毎年4月恒例の「新小学1年生が将来就きたい職業」。
花産業の関心、

「花屋」の順位。



画像 朝日新聞コラム「天声人語」(2024年4月11日)

 

では結果発表
天声人語では、1位ケーキ屋・パン屋、2位警察官、3位スポーツ選手。
これは男女総合。
花屋は総合12位。
天声人語、

へえと驚いているのは、ユーチューバーがトップ10から姿を消したこと。
ユーチューバーは14位、花屋よりも下。
「人気の職は浮世に流れ、変化する」と、天声人語は嘆く?が、それほど変化はしていない。
小学1年生は堅実。

花屋は性別に関係しない職業、
しかしクラレ調査、

花屋は男子のトップ20に登場しません。
したがって、当ブログでは女子データだけで検証しています。
調査対象、

2024年4月に入学した小学1年生、男女それぞれ2,000人とその親。
いままであった6年生の調査、
今年はありませんでした。

新1年生女子が将来就きたい職業(2024年)
花屋
昨年は3位、今年は4位(表1)。



表1 クラレ調査「新小学1年生女子が就きたい職業、その親が就かせたい職業とその割合(2024年4月)

 

ダントツ1位は「ケーキ屋・パン屋」
調査開始以来26年連続1位。
1位をキープしているだけでなく、希望する人数が驚異的。
21.3%の新1年生女子が「ケーキ屋・パン屋」になりたい。
5人に1人。
新1年生女子の超人気職業。

2位には「芸能人・歌手・モデル」(12.4%)が定位置。
3位は、保育士(5.6%)。
昨年の8位から躍進。
そして4位がわずかの差で花屋(5.5%)。
品評会の審査好評の常套句「紙一重の差」。
5位がアイスクリーム屋。
6位から10位までは、いわゆる堅い職業あるいは士業がならびます。
医師、警察官、看護師、教員、美容師。

では、2000年とどう変わったのでしょうか?(表2)
基本的には2024年とかわりません。
2000年にあった自営業、音楽講師が消え、アイスクリーム屋と警察官が加わりました。
ただ、花屋になりたい女子の数は大幅に減りました。
2000年 新1年生女子の20.3%が花屋になりたかった。
2024年には5.5%です。



表2 クラレ調査「新小学1年生女子が就きたい職業、その親が就かせたい職業とその割合(2000年4月)

 

図は、
2000年からの新1年生女子の花屋の順位とその割合の推移。
順位、2011年までずっと2位をキープ。
その後は、「芸能人・歌手・モデル」、「保育士」、「看護師」などに追いぬかれました。

それでも3位、4位のポジションをガッチリ確保。


図 新小学1年生女子の就きたい職業「花屋」の順位とその割合の推移

  クラレデータを宇田作図

 

これはすごいことです。
天声人語が驚いたユーチューバーの凋落。
そのほかにも女子では、かつての人気職業、「ペットショップ・トリマー」、「獣医師」、「漫画・イラストレーター」がトップ20から姿を消しました。
このことから、花屋は一時的な人気ではなく、就きたい職業として定着しているといえます。

花屋になりたい割合
2016年まで右肩下がりに減りつづけていました。
2000年の20.3%が2016年には5.5%。
そのあとはふんばって、5~6%を維持。

これは、選択できる職業が増えて、票がばらけた結果でしょう。
それでも、花屋は、新1年生女子のゆるぎない人気職業。

2024年4月入学の小学1年生女子は47.3万人(推定値、文科省から確定値はまだ公表されていない)。
その5.5%が花屋希望。
すなわち、花屋になりたい新1年生女子が26,500人。
膨大な花屋予備軍が今年も誕生。

喜んでばかりいられません。
花屋になりたい26,500人の小学1年生女子、
6年生では花屋になりたいと思わなくなります。
今回、6年生の調査はありませんでしたが、
過去の調査から容易に想定できます。
それは、親が子どもを花屋にならせたいとは考えていないからです。

2024年の新1年生女子の親が就かせたい職業は表1のとおり。
昨年入っていた「芸能人・歌手・モデル」がなくなりました。
子どものダントツ1位の「ケーキ屋・パン屋」は7位に入っていますが、親の堅い職業志向が昨年よりさらに強まっています。

花屋も、堅くない職業のケーキ屋・パン屋のように、小学生の親に認められる職業になる可能性があります。
もともと花屋は女性が多い職場ですが、
男社会の花市場が女性の職場になりつつあるからです。
花市場のイメージ。
体力勝負、腕力自慢、バクチ好きのおっさん職場。


いまは高学歴学生が試験を受けて入社する普通の職場。
4月の新入社員、すくなくとも大手花市場では女性の方が多かったのではないでしょうか。


それには市場の働き方改革、業務改善、待遇改善があります。
背景には、ウエブ販売、在宅セリ、完全オンラインせりの情報流通市場に変身。
入荷した重いケースを抱えて広い場内を走りまわることはない。
さらに、夜市の市場では普通のサラリーマンのような勤務時間。
公共交通で通勤できる普通の職場。


普通の職場になったことの見える化、

女性営業社員のネイルしたきれいな爪。
彼女たちが、

使い捨てではなく、定年まで安定・安心して働けるよう、さらなる働き方改革、業務改善、待遇改善が求められます。

流通の中核、花市場が変われば、花屋をはじめ花産業全体が変わります。

働き方改革はドライバーだけではなく、花屋、仲卸、市場など花産業にこそ必要。
その成績表が、毎年の新1年生女子の「親」が就かせたい職業トップ10。

親が子どもに就かせたい職業に花屋を選んでいただけるよう、花屋さんの働き方改革、業務改善、待遇改善に期待します。

今回も長文駄文でした。

 

宇田明の『もう少しだけ言います』(No.424. 2024.4.14)

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