豊かな日本の終焉 いつまでも切り花を輸入しつづけられるのか? | 宇田 明の『もう少しだけ言います』

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漠然とした不安
日本の豊かさは終わったのか?



画像 日本農業新聞(2024年3月26日)

 

例えば
円安
1ドル152円為替TV
1990年以来33年ぶりの円安ドル高
円高最高値は75円だから現在は半値



 

今年の春闘
大企業は大判振舞いのベースアップ
しかし長い目で見ると先進国で日本だけが賃金が伸びていない(図1)。
1991年を100とすると、
米国2.8倍、英国2.7倍
日本は1.1倍。



図1 朝日新聞(2024年3月27日)「異次元緩和 11年目の転換」

 

賃金が上がらないと、消費が増えない。
総務省家計調査(二人以上世帯)(図2)
年間消費支出額
2000年の381万円が2023年には353万円
増えるどころか7%の減。



図2 二人以上世帯の消費支出額と切り花購入額の推移

   総務省家計調査のデータを宇田作図

 

花より団子。
賃金が増えない→消費支出額が減る(節約)→花の購入額が減る(不要不急)
切り花購入額
2000年の11,553円が2023年には8,034円
30%減
消費者の購入額が減ると生産も減る(図3)。
2000年の生産(流通)量
国産56億本、輸入8億本、合計64億本。
2022年には、
国産31億本(44%減)、輸入12億本(48%増)、合計44億本(32%減)。



3 国産切り花生産量と輸入数量の推移(2000年を100とした比率)

   国産:農林水産統計花き編 輸入:植物検疫統計のデータを宇田作図

 

22年間で、
国産は25億本減った。
国産の減少をカバーしてくれる輸入は4億本しか増えなかった。
輸入、ここ10数年は13億本ほどで頭打ち。
品薄単価高に納得。
輸入業者最大手クラシックの西尾会長によると
輸入の急増は期待できないそうです。
国際運賃の値上がりに加えて円安。
コロンビアや中国、
日本は魅力的な輸出先ではなくなったのか?

それよりも日本が、不要不急の切り花をこれからも輸入しつづけられる国力があるのか?
農業新聞コラム 農業ジャーナリスト 山田優氏が指摘

世界の「上客」今は昔

日本に牛肉を売っても儲からない。
フィリッピンやタイに比べて1/4の値段にしかならない。
あちらは高級部位がよく売れるが、日本はスソものばかり注文する。
アジアの各国の所得水準が上がり、豊かな中間層が育っている。
米国の牛肉業界にとって日本だけが上客だった時代は過ぎた。
考えてみれば、
日本の和牛輸出が増えているのも、
日本人は手が出ない高級部位をアジアなど豊かな海外消費者が買っているからだ。


花業界でも、オランダに依存しているユリなどの球根は「買い負け」している。
すくなくとも育種目標は、日本人がターゲットではなくなった。
ユリに限らず、日本人が好きな桜色のピンクが減り、
中国人が好むどぎつい赤のようなピンクが増えた。

米国は、南米からの輸入切り花が中心
カリフォルニア産など米国産は少数派。
日本からもスイートピー、トルコギキョウ、グロリオサなどが輸出されている。
これは米国が豊かな国で、切り花を輸入しつづけることができるからでもある。

日本では、国産切り花は確実に減る。
ここ数年の空前の高単価に関係なく、減る。
高齢生産者のリタイアによる自然減が、新規参入、既存生産者の規模拡大より大きい。

国産は減る

輸入は 国産減少分を補えない。

供給が減る。

気候は温暖化で変動が大きい。

夏は酷暑、冬は暖冬

秋と春が短い。

開花時期が乱れる。

花の需要は物日に多く、平日に少ない。

物日には品薄単価高

平日には供給過剰単価安。

相場が乱高下。

国産ががさらに減る「縮小均衡」

負のスパイラル。


負のスパイラルを打ち破るには、国産切り花の増産。

国産切り花を増やすのはカンタンではない。
政府が補助金をばらまいても、持続的な生産増にはならない。
行政だけではムリ。
市場従業員の腕力が必要。
売り先を確保する。
「つくる前に売る」

品薄単価高で一挙に財務環境が改善した花市場経営者
利益をまず従業員に還元。
従業員のモチベーションをアップ。
それが産地づくりに直結し

市場の利益に還元。

 

宇田明の『もう少しだけ言います』(No.422. 2024.3.31)

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