春彼岸 注目は洋花高騰よりキクの安定供給・安定相場 | 宇田 明の『もう少しだけ言います』

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宇田 明が『ウダウダ言います』、『まだまだ言います』に引き続き、花産業のお役に立つ情報を『もう少しだけ』発信します。

彼岸の中日は嵐のような天候。
高い花を仕入れた花屋さん,

売れゆきはどうだったでしょうか?

生産者はおとどし去年とつづく高値。
うれしいを通りこして、心配。
「おとどし」が漢字変換できないので調べたら「方言」「大阪弁」とありました。
知らなかった。この年になるまで。
標準語では「おととし」で、濁らないらしい。
「おととし」と打つとすぐに「一昨年」とでてきました。
むかし、雑誌に原稿を書いたところ、編集者に宇田さんは文章まで関西弁ですね、と言われたことを思いだしました。


全体としては彼岸も品薄単価高。
とくに洋花、品薄、

経験したことがない高値。

 

マスコミも含め、「洋花高騰」が話題。

いかにも表面的。

日本農業新聞、

日本経済新聞ではないのだから、

農家の新聞だから、

もう少し深掘りした解説をしてほしい。

 

花産業のプロの方々が注目すべきは、

輪ギク、小ギク、スプレーマムの安定供給・安定相場。

キクとおなじく彼岸の主役、

スターチス・シヌアータ、テッポウユリもおなじ。

 

花産業、

もうバクチ好きでも、相場師でもない

物日の高値を煽るのではなく、

キクの安定供給・安定相場を称賛すべき。



画像 日本農業新聞(2024年3月14日)

    3月13日(水)の全国大手7市場の市況

 

まずはどれだけ高値だったのか?

 

日本農業新聞3月14日の記事は、3月13日の1日だけの市況。

そこでもう少し長いスパンの市況で検証。
表は、
彼岸の入り前の1週間の切り花市況(国産)。
3月11日(月)、13日(水)、15日(金)の3回の平均単価(税抜)を平年(過去5年平均)と比較。
全国主要7市場。

税抜。



表 彼岸前1週間の市況を平年と比較(国産)

  全国大手7市場

  平年は過去5年平均

  日本農業新聞アグリネット市況に基づき宇田集計

 

主要17品目すべて平年より高い。
上昇率には57%から5%までの幅。
もともと彼岸大物日は平日より高い。

その高い彼岸平年価格より、

57%も高いのが出荷最終盤のスイートピー。
平年の36円が57円。

すべて予約相対で、せりにはでてこない卸市場もあったよう。


カスミソウが50%アップ。
平年87円が130円。
ガーベラが49%アップ。
平年54円が80円。
チューリップ、バラ、トルコギキョウが42%アップ。
アルストロメリアが41%アップ。
キンセンカとSTカーネーションが39%アップ。
ストックが32%アップ。

これは平均価格。
いわゆる中値。
瞬間風速の高値、
スイートピーが100円を超え、
ガーベラが200円を超え、
カスミソウが300円を超え・・・
花屋さん、こんなに高い花を何に使ったのでしょうか。

前回のお題、
春秋の彼岸、
墓参りをしてご先祖さまを敬うことで、自分自身が「彼岸」に行ける。

 

2024年3月14日「行こう行こう彼岸に行こう」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12844526036.html


お墓参りの主役キク、
高値でわきたつ洋花にくらべると安い印象、
決して安かったわけではない。
平年より高い単価はでている、
小ギク 12%アップ、
輪ギク10%アップ、
スプレーマム 5%アップ。

おなじく彼岸になくてはならない品目、
テッポウユリ、スターチス・シヌアータもキクとおなじ。
それぞれ5%と12%のアップ。

図は、品薄単価高を検証。
入荷量が平年より減った割合が大きい順に品目を並べました。



図  2024年3月彼岸前1週間の入荷量と単価を平年と比較

   表におなじ

 

入荷量、
キンセンカからLAユリまで11品目は平年より少ない(品薄)。
OHユリからスプレーマムまで6品目は平年より多い。

LAを除いて、入荷が減った 10品目
平均単価が30%以上アップ。
入荷が増えた6品目
平均単価が5~15%アップ。

彼岸は墓参りですが、卒業式などイベントの時期。
洋花の需要期。
ギフトなどの花は、家計調査などの政府統計ではつかまえるのがむずかしい。
花屋さんの肌感覚ではかなり増えている。



画像 日本経済新聞(2024年3月23日)

    MPS松島社長のブログより引用

 

市場経済、需要と供給で値段が決まる。
需要が大きいのに供給が少ないと単価高。
需要がないのに供給が多いと、供給過剰で単価安。

したがって品薄で単価高は普通のこと。
今までが普通でなかった。
品薄(平年より供給が少ない)でも単価安が20年以上つづいてきた。

入荷が毎年減っているのに、品薄感がなかった。
そのため、

さらに生産を減らす「縮小均衡」をくり返す。
別に言いかたでは「いす取りゲーム」。
毎年、いすの数がへるので、座れる生産者が減り、生産量が減る。
その結果、

国産切り花の生産量はピークの58億本から31億本へ半分近くにまで減った。

それが「おとどし」から普通の経済に戻りつつある。
品薄であれば単価高になるようになった。

彼岸前1週間のキク類の入荷量を平年と比べると、
輪ギク3%増、
スプレーマム12%増、
小ギク7%増

「彼岸ピッタリ開花」が成功。

花屋さんが欲しいときに「潤沢」に出荷できた。
安定供給ができた。

 

キクを大量に取り扱う花束加工業者、葬儀業者、量販・スーパー、

価格の変動はのぞまない。

したがって長期予約相対・契約の割合いが高い。

安定供給・安定相場。

 

安定供給・安定相場で、農家も安定経営。

安定経営なくして生産拡大なし。

 

今回も長文・駄文でした。

 

宇田明の『もう少しだけ言います』(No.421. 2024.3.24)

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