新年恒例、
日本農業新聞の花のトレンド調査。
今年で15回目だそうです。
小売、卸(市場)、加工業者、輸入業者、種苗会社など43社が回答。
(俺の農業新聞さんのFBを引用)
2022年はいままでとすこし様子がちがう。
販売のキーワード1位、
「物流の効率化」。
(三つまで選択可)
これは、
わたしが資料を確認できる2014年から1度も登場したことがないキーワード。
農業新聞の説明記事、
「輸送費の高騰で産地の出荷市場が絞られる傾向にある中、地域ごとにニーズのある花材を、効率よく届ける仕組みづくりが鍵となる。」
この調査のトレンドとは、花の業界人がいま関心をもっていることと考えてよいでしょう。
物流が問題になるのは、直接的には「輸送費が高騰」しているから。
それは花業界にかぎらず、日本の物流の問題。
花産業の独自の問題は、
国内生産の縮小により出荷量が減ったこと。
産業が小さくなると付随してさまざまな影響がでてくる。
関連資材はスケールメリットが発揮できないので、取引条件が厳しくなり、価格がアップする。
輸送もそのひとつ。
京阪神市場へ出荷している当地(淡路島)では、生産者の減少で出荷量が減り、京都への輸送できなくなった。
出荷量が減ったから、輸送業者が運んでくれない市場ができてきた
さらに、
花の物流の根源的問題は、
地方から東京に集まった荷が、ふたたび地方へ転送されること。
転送による輸送の長時間化は、大きなエネルギーロスであり、その間に切り花は消耗、品質低下する。
これでは持続可能な産業とは言えない。
そのことがわかっているから、「物流の効率化」が2022年キーワードの首位になったのでしょう。
2022年に突然ベスト10入りしたのがもうひとつあります。
5位の「季節感」。
花の販売には「季節感が大事」は常套句、
いままでキーワードに入ってなかったのが不思議。
国内生産の縮小にともない、季節感がある商材が手に入りにくくなっているということでしょうか。
季節感が重要な日本では、米国のように南米からの輸入切り花だけで、花店とその先にいる消費者を満足させることができません。
このことからも国内生産の復活なくして花産業の発展はないと断言できます。
2位の「安定供給」、
3位の「普段使い=ホームユース」は上位の常連。
毎年、上位ということは、まだまだ安定供給ができていない、ホームユースが定着していないということです。
2014年以降のキーワード順位の変化をみたのが表1。
表1 日本農業新聞が調べた各年のトレンド(小売、卸、加工、輸入、種苗など43社回答)
「精度の高い情報」もいつも上位にあります。
これは「安定供給」の裏返しです。
安定供給ができていれば、「精度の高い情報」は上位に入らないでしょう。
欲しいときになく、いらないときにある、なぞなぞのような市場入荷。
せめて好天でピークが物日より1週間早いとか、猛暑で3日おくれるとか精度が高い情報があれば、なんとか手当てができるのですが・・。
この出荷予測、
もはやないものねだり(かもしれない)。
市場に、
産地まわりをして、ハウス、圃場の生育を見て、開花日を予測できる人材がいるのでしょうか?
かつてはいたでしょう。
いまはそんな人材は育っていない、
技術継承ができていない、
育てられるひとがいない。
せいぜい産地に電話をして、生育のあんばい、出荷予想を聞くぐらい。
産地・生産者の予測には、農村特有のバイアスがかかっており、それぞれの思惑が大きい。
それらを寄せ集めても、なんのことかわからない。
しかし、
生産者には「物日ピッタリ開花」は死活問題。
開花調節技術は花栽培の「基本のき」。
地元の研究員、普及員らと技術向上につとめる産地が市場から信用・信頼してもらえる。
とはいうものの、
栽培技術だけでピッタリ開花はむずかしい。
品目が限られますが、開花ピークを前にもってきて、短期保管でリスク分散が必要でしょう。
それには冷蔵庫などの確保とコストがかかります。
市場での取引が、セリから、ウエブ販売などの前売りに変わっているので、日々の早く正確な出荷情報がますます重要になっています。
集荷場に荷が集まってからでないと正確な出荷量がわからないなら、市場への着荷時間を前倒しすればよい。
「日持ち」は2018年までは1位か2位でしたが、徐々に下がってきました。
農水省の事業で、日持ち向上の実証試験をくりかえしてきて、ある程度の成果が得られて、重要度が下がってきたと好意的に解釈することができます。
「値頃感」はベスト10に残っていますが、「高級感」は圏外。
コロナ禍もあり、軸足をじわりとお手頃価格の「普段使い=ホームユース」に移しているのでしょう。
次に、花のトレンド記事の見出しを見てみましょう。
見出しだけで、その年に、花の業界人がなにに関心があったかがわかります。
2014年はわりと楽観的でした。
「好況感で需要増に」「新しい物日浸透手応え」
2012年12月に誕生した第二次安倍政権、「景気の気は気分の気」。
わりとアベノミクスによる好景気を感じていたのでしょうか。
また新しい物日=フラワーバレンタインに大きな期待を寄せていたことがわかります。
2015年、2016年は「日持ち、採花日表示」を重視しています。
これには愚ブログもすこしは貢献したようです。
2017年~2020年は「安定供給」。
地球温暖化で天候が不順、物日に花がない状況が続いていました。
2017年には「ハロウイーン需要」に注目しながら、2018年には「物日に偏り是正」。
新しい物日はほしいが、物日に偏るのは危険との業界人の迷い、苦悩。
2021年、2022年はコロナ禍で業務需要が激減、
ステイホームでホームユースが伸びたことを反映。
長年目標にしてきたホームユースが動き始めたので、これをコロナ禍の一過性でおわらせず、定着させたいとの業界人の思い。
2022年の花業界のトレンドは「ホームユースの定着」。
それには、「値頃感」があるホームユース・コンパクト規格の生産と「安定供給」です。
宇田明の『もう少しだけ言います』(No.310 2022.1.23)
2015年以前のブログは
(http://ameblo.jp/udaakira)でご覧頂けでます