切り花生産者を守るために出荷容器を小箱から大箱へ回帰 | 宇田 明の『もう少しだけ言います』

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宇田 明が『ウダウダ言います』、『まだまだ言います』に引き続き、花産業のお役に立つ情報を『もう少しだけ』発信します。

20世紀末から30年近くにわたり、切り花の生産量は減りつづけています。

いつものエクセルの推計ですが、このまま国産の切り花が減りつづけると、2049年には0になります。

その前には国産のカーネーション、バラが2030年代前半(あと10年ほど)、輪ギクが2040年代前半に0になると、エクセルは予想しています。
2022年は花の国内生産とそれを担う生産者の減少をくい止める年にしなければなりません。

 


図 国産切り花(枝もの、葉ものを含む)の生産予測

  毎年、エクセルの推計通りに減りつづけている

  エクセルの予想では2049年に国内切り花生産は0になる

 

その対策の一つが、出荷ケース、出荷単位。
小箱化を大箱へ復帰です。



図 淡路日の出農協の選花場のカーネーション

   左:100本ケース、右:50本ケース

   年々、50本入りの小箱が増えている

   以前は200本入りケースだった

   コーラルなど中輪品種の時代には大箱に400~500本を詰めていた

どこの花産地での研修会でもおなじような風景。
市場担当者への質問。
生産者:
やはり、出荷単位の小口化、ミックスが必要ですか?
市場担当者:
花店では同一品種1ケース100本は買えない。

あれもほしい、これもほしいので1ケース50本でも多いぐらい。

ミックスも人気です。

そんなわけで、

いまでは大箱200本入りが100本入りになり、さらに50本、40本、30本と小口化が進んでいます。
ダリアなど大輪品目では10本入りが珍しくない。
小箱化では生産者のコストが増えます。
しかし、

大箱のままでがんばっても、市場では小箱に売り負けするので仕方なく小箱化に追随。

世間でも、

「プロダクトアウトからマーケットインへ」の大合唱。
マーケットイン:消費者志向
「お客様ニーズを把握し、それを満たす製品やサービスを提供していくこと」
プロダクトアウト:生産者志向
「生産者の方針や作りたいモノ・売りたいモノを基準に商品開発を行うこと」


切り花生産者の顧客である花屋さんは、小箱化、ミックスをのぞんでいる。

生産者はそれに応えるのがマーケットインという考え方は理解できる。

とはいえ、

出荷ケースの小箱化で生産者の出荷コストがますます増大。

経営が苦しくなっている。

その結果が、国内生産者の減少。

国内生産者が消滅すれば市場の存在意義はなくなる。

花店は品ぞろえができなくなる。

また、

小箱化(小口化)は切り花の流通システムをゆがめている。
市場(卸売業者)と小売の間には仲卸がある。
小口化するのは生産者や卸売業者(市場)の役割ではない。
仲卸の仕事。
1品種100本は多すぎて買えない花店のために仲卸がある。

目先の損得では、仲卸の中間マージンで、花店の仕入れ価格がアップする。
トータルでは仲卸で必要な本数だけ仕入れるほうが花店のコスト削減になる。



画像 淡路日の出農協の選花場

    左:100本ケース 右:200~300本ケース

    

「100本買えない花屋さんは仲卸で買え」は正論。

現実には、市場(卸売業者)が売りやすいので小口化をのぞんでいる。
大箱では小箱に売り負けるから、生産者はコストがアップしても、小箱化せざるを得ない。
生産者は、市場のいうことには従わざるを得ないのだから。


肝心の仲卸から小分けは仲卸に任せろとの力強いメッセージがない。
逆に、

仲卸でさえ、大箱、大口での仕入れはしんどいとの声が聞こえてくる。

そんななかで、

2022年新年早々、

日本一の花市場(卸売業者)から、国内生産を守るために大箱に回帰しようとの提案。



2022年01月10日「日本花き卸売市場協会が定めた箱を使い合理化する」
https://otakaki.co.jp/pres/%e6%97%a5%e6%9c%ac%e8%8a%b1%e3%81%8d%e5%8d%b8%e5%a3%b2%e5%b8%82%e5%a0%b4%e5%8d%94%e4%bc%9a%e3%81%8c%e5%ae%9a%e3%82%81%e3%81%9f%e7%ae%b1%e3%82%92%e4%bd%bf%e3%81%84%e5%90%88%e7%90%86%e5%8c%96%e3%81%99/
 

引用します(青字)。

 

花き業界に提案がある。


(中略)


市場流通をみると21世紀になってから特に2010年以降、単価を保つために小ロットになってきた。
これをもう一度、1980年代の大箱ロットに直していき、1鉢あるいは1本あたりの輸送コストを下げたり、段ボールコストを下げたり、箱やトレーの中に入れる品揃えの手間を省いたり、あるいは、生産出荷の合理化に繋げたりすることによって、手取りに直接影響する資材や運賃コストの吸収を生産者は図るべきだ。
中核市場は、卸と仲卸がともに卸売市場を形成しているはずだから、大箱からの小分けは仲卸がする。
地方卸売市場は、せり前にしてもせり取引にしても、箱から出して、買い手が欲しいロットで小分けして販売すれば良い。
このようにしていかない限り、少なくとも国内生産量は増えない。


大箱化の先には、

日本花き卸売市場協会が定めた規格への統一がある。


産地・生産者には

日本一の市場(卸売業者)社長からのありがたい提案。
産地・生産者は、

大箱回帰に向けて、市場(卸売業者)と協議をはじめていただきたい。

切り花の国内生産が維持できなければ、市場、仲卸、小売の安定経営はつづけられないのだから。


2022年は国内生産を守るために、産地・生産者だけでなく花産業が一体となって、できることはなんでもとり組む年にしましょう。

画像 あれから27年

 

宇田明の『もう少しだけ言います』(No.309 2022.1.16)


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