2021年花産業、今年の漢字は「短(コンパクト)」 | 宇田 明の『もう少しだけ言います』

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日本漢字能力検定協会が選ぶ2021年、今年の漢字は「金」でした。
昨年(2020年)は3密の「密」、2019年は令和の「令」。
今年はやはり東京オリンピック・パラリンピックの金メダルのインパクトが大きかったようです。
オリンピックの年には金が選ばれるのは恒例のようです。
ロンドンの2012年、リオの2016年も「金」でした。


画像 2021年、今年の漢字は「金」

   (日本漢字能力検定協会)

 

わたしが、

これまで独断で選んだ漢字とその理由は表のとおりです。


昨年2020年は宅(いえ)。
コロナ禍によるステイホーム=在宅。
ステイホームで、観葉植物や花苗、野菜苗がよく売れました。
自宅用、自分用の切り花もよく売れました。
それは2021年も続いています。
また、
大手市場では3密を避けるために、「在宅セリ」を拡大。
大阪鶴見花き地方卸売市場(なにわ花いちば、JF鶴見花きが入場)では、セリ場を閉じ、リアルセリをやめ、ウエブ販売と「在宅セリ」だけに大転換。
花屋さんも「在宅」で仕入れる時代になりました。



表 私が独断で選んだ、これまでの「花産業今年の漢字」

 

では、花産業、今年2021年の漢字は?

私が選んだのは、「短(コンパクト)」。
短茎切り花の「短」。

 


画像 私が独断で選んだ花産業、2021年の漢字は「短(コンパクト)」

 

2021年は、ホームユースが脚光を浴びた年。
日本の家庭環境には長い切り花は不向き。
短い切り花・コンパクトな切り花が納まりやすい。
2021年はホームユース規格=コンパクト規格が認知された年。
それを後押ししたのは異業種からの花の小売りへの参入。

 


2021年12月19日「2021年は異業種が花の潜在的ホームユース需要に気づいた年」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12716394453.html
 

そして配送型サブスクの拡大。


2021年10月10日「超ミニ化するホームユース規格に生産者はどう対応するのか」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12702694595.html

生産者は、

従来の長くて大きい=高品質・高単価一本足打法から、家庭用=短茎コンパクト規格との二刀流になった年でした。
2021年12月12日「切り花農家の経営は業務需要とホームユースの二刀流」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12715172908.html

この流れは、コロナが収束しても変わらないでしょう。
いよいよ、日本にも自宅用・自分用の花を楽しむ時代到来です。


ここに至るまでの道のりは平たんではありませんでした。
わたしにとって、

カジュアルフラワー、ホームユースは行きつ戻りつ、紆余曲折の25年。
わたしの地元淡路島では、すでに1990年代中ごろには通常規格65cmのスタンダードカーネーションに対して、ホームユース、仏花用に50cmの短茎規格をつくりはじめていました。
それを支える栽培技術が「短茎多収」。
カーネーションでは、

通常規格の収量は500本/坪ほど、

50cmの短茎規格なら800本/坪、

30cmなら1,000本/坪。

これが、短茎多収技術。
出荷箱もコンパクト。
箱代も運賃も安い。



画像 スタンダードカーネーション通常規格65cmを50cmの短茎規格で出荷

    通常規格65cmなら500本/坪の収量が、50cmの短茎規格なら800本/坪

    出荷箱も小さくなる

    淡路日の出農協(1990年代後半)

 

市場単価が少々下がっても、収量が多いので「儲かりまっせ!」。
それを伝える日本農業新聞の記事。

「切り花新戦略」

「ミニ丈で需要にひと花」

2021年の記事といっても通用しますが、18年前の2003年です。

 



画像 ホームユース用短茎規格カーネーションを伝える日本農業新聞

    2021年の記事ではありません。

    18年前の2003年3月7日の記事

 

当時は花産業、バブルの絶頂期。
高品質・高単価のイケイケドンドンの時代。
短茎切り花の受け皿が十分に育っていなかった。
スーパー・量販の販売力も弱かった。


25年たって、やっと時代が追いついてきた(かな)。
おまけに、地球にやさしいSDGsまでもが後押ししてくれる。


短茎といっても、考え方、やり方はさまざま。
ホームユース用としなくても、通常規格を実際の用途にあわせてすこし短くするだけで、生産者には大きな経営改善になる。
耳にタコの、輪ギク通常規格90cmを80cmにするだけで、国産輪ギクは息をふきかえす。
冬~春の大産地、沖縄太陽の花の小ギク、通常規格より5cm短くしたそうです。
それだけで、大きな経営改善になるでしょう。



画像 通常規格より5cm短くした沖縄花き農協太陽の花の小ギクとその出荷ケース

    (太陽の花FBより引用)

 

そんなわけで、

2021年、わたしが選んだ、花産業の漢字は「短(コンパクト)」。
2022年が楽しみです。


今年も長文駄文におつき合いいただき、ありがとうございました。


よいお年をお迎えください。

 

宇田明の『もう少しだけ言います』(No.307 2021.12.26)


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