お月さんももいろ | 森中あゆみの「山と薬膳で、ココロとカラダをまるごと養生♩」

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「世界の国の人と自然」を愛するヨメが
「岩と雪と氷」を愛したダンナと
日々のつれづれを発信します。

大堂海岸でのクライミングをするために、21~22日は大月町入り。


この写真は、大月の道の駅で販売されていた、松谷みよこさん原作の絵本です。

作者がこの地を旅した時に生まれた本だそうです。

実は、この絵本、私にとってはとっても思い出深い本なんです。


おつきさんももいろ

だれんいうた

あまんゆうた

あまの口 ひきさけ


赤い(ももいろ)珊瑚がとれるこの地に歌い継がれていた歌が本の素材となり、

両親をなくし、年老いた漁師の祖父と暮らす「おりの」という若い娘と、

山の猟師である「与吉」の悲恋が描かれています。


京都アバンティ・クライミング・スクール

ある日おりのは、浜に打ち上げられた「ももいろのさんご」を見つけます。

じいやが言うには、

大きなももいろのお月さんが半分かけて、海につぶつぶと沈み、

それがももいろのさんごになった。

だから土佐の海では、ももいろのさんごがとれるのだ、と・・・。


しばらくして、じいやは病に伏せてしまいます。

そこへ猟師、与吉が、山からイノシシを追って下りてきました。

おりのは、じいやの病を治すために、熊の肝をもらえないかと頼みます。

快く分けてくれ、度々じいやを見舞ってくれた与吉に、

おりのはお礼として「ももいろさんご」を渡します。

与吉もおりのに好意をよせ、さんごを磨いて、それを持って嫁にもらいにくると、

おりのに約束し、山へ帰って行きます。


おりのは与吉を待ち続けました。


おつきさんももいろ

どこさこけた ここさこけた

さんごになって ねんねんよ ねんねんよ


与吉を思い、そんな歌を浜で歌いながら待ち続けました。

与吉の思いは複雑です。

というのも、山の者と海の者が一緒になるということは、当時許されていなかったからです。


おりのの歌は、いつとはなしに巡礼者に歌われるようになり、

土佐の海に赤い珊瑚がとれることが、おかみに知れてしまいます。

赤い珊瑚が土佐の海でとれるなどと幕府に知られたら、

どんな無理難題を押し付けられるかわからない、として、

土佐藩は珊瑚漁を禁じていたのですが、幼いおりのは

そんなことは露知らず、与吉を思い、唄を歌ってしまったのでした。


裏奉行によるお取り調べは厳しく、じいやはそれで命を失ってしまいます。

赤い珊瑚を奉行へ差し出せば、おりのの命は助けてやる、といわれたものの、

珊瑚は与吉が持っており、その与吉はどこに住んでいるかも知りません。


おりのは、自分で珊瑚をとりに行こうと、海へ出ます。

黒い雲がひろがり、嵐が近付いていることにも気付かず・・・。


おりのに会ってはいけない、と決めた与吉でしたが、

おりのへの思いは強く、月日をかけて磨きあげた珊瑚をもって、

山からおりのに会いにやってきます。


会いたさ一心で走ってきた与吉でしたが、家にはじいやの位牌があるのみ。

浜に出てみると、波に打ち上げられ、既に冷たくなってしまったおりのが・・・。


息絶えたおりのを抱えて、磨き上げた珊瑚とともに山へ帰った与吉も、

その夜には、裏奉行の手で討たれてしまいます。


与吉が丹精込めて磨き上げた「ももいろのさんご」は

殿様に献上され、お姫様の櫛などの飾り物になりました。

与吉とおりのの悲しい話など、知らされることもなく・・・。


お月さん ももいろ

だれん言うた あまん(海女)言うた

あまん口 ひきさけ



この絵本は、私が小さい時に、叔母に買ってもらい、

いまだに大切になおしてある思い出の本なのです。

おばあちゃんちでお泊り、しかし、泣き虫の私を叔母は心得ていて、

昼間、この絵本を買いにつれってくれて、夜は、伯母のベットで、

読み聞かせてもらいながら眠りについた、という・・・、

そんな想い出の本でした。

叔母にとって、私は初姪で、本当によく可愛がってもらいました。

ひと回りしか年が変わらない、ということもあり、

母の兄弟の中で、今も一番好きな伯母です。


子供の私には難しいストーリーでしたが、

絵本の柔らかい色調が大好きでした。

今も変わらず、この本の色彩が大好きです。

そして、土佐の言葉で書かれた異国情緒、というか、

自分の世界にない雰囲気が大好きでした。


30数年たった今も、本棚にしまってある大切な本なんです。


この物語が、この地で誕生したことを裏付けるかのように、

その夜の宿(海辺のキャンプ場)からは、お月さんが海に沈んでいく様子が

よく見えました。(三日月でしたが・・・)

太陽が沈んでしばらくして、7時ころだったか、月は沈みました。

ロマンチックというよりは、なんだか物悲しい感じがしました。

この話を思い出したからかもしれません・・・。


遠く離れた旅先で、はからずも幼い頃の想い出の本に出会うなんて、

本当に感激して、ウルウルしっぱなしのヨメでした。