以下は一昨年、知人に頼まれて、神戸新聞のアウトドアのコーナー、
『遊歩道』の連載をお手伝いした時の記事です。
雪彦山が私の担当の一番目だったので、転載します。
2007年5月30日掲載
四季彩る 恵みの山 賀野の里 姫路市夢前町
今回のみどころ~ (1)雪彦山の岩峰群 (2)賀野の里 (3)虹ガ滝
賀野神社からの洞ヶ岳(雪彦山)、4つの峰が重なり1つの山のよう。
地図で雪彦山頂と記される場所は、山の北側でここからは見えない=姫路市夢前町
バスが終点の雪彦(せっぴこ)山バス停に近づいた。車窓から見える夢前川沿いは、
木々の新緑がまぶしい。春は桜や菜の花、秋は紅葉と四季折々に風情を変える。バス
を降りると、北方の山々に向かって典型的な里山の風景が広がっていた。一帯は賀野
(かや)の里と呼ばれる。
夢前川の上流は、日本百景にも選ばれた雪彦山にある。山は新潟の弥彦山、福岡の
英彦山と共に日本三彦山としても有名だ。荒々しい岩肌を剥(む)き出しにした岩峰群な
がら、左右に品よく伸びた端正な三角の山容は完成された芸術品にも思える。
岩峰群は大天井岳、不行(ゆかず)岳、三峰岳、地蔵岳の四峰からなり、総称して洞(
ほら)ヶ岳という。雪彦山は、洞ヶ岳、鉾立(ほこたて)山、三辻山の総称だが、地図など
は洞ヶ岳北隣にある九一五メートルの山頂を雪彦山と記す。が、地元ではさにあらず。
里から見える洞ヶ岳を雪彦山と呼ぶ。山は生活を潤す恵みの源、里の暮らしには重要
な存在だ。強さと美しさを合わせ持った洞ヶ岳を、人々が日々仰ぎ見、畏敬(いけい)の
念をもって雪彦山と呼ぶのは素直に納得できる。
雪彦山が信仰の対象として祀(まつ)られたのは、はるか昔にさかのぼる。この地に
巡幸で逗留(とうりゅう)した応神天皇の夢枕に、いざなぎ、いざなみの神が現れ「祠(ほ
こら)を建て祀れば百姓は富み国は栄える、祀る場所に鉾を立ておく」と語りかけたと
伝えられる。祠建立は夏に行われた。蚊が多いため蚊帳を作りしのいだことから、この
地は賀野の里と呼ばれるようになったという。鉾が置かれた場所が鉾立山である。
鉾立山への参拝は遠く険しいため、山ろくに造営されたのが賀野神社。見事な社殿と
岩峰群の眺めは必見だ。ぜひ足を運んでみたい。
ハイキングなら虹ガ滝方面がお勧め。バス停先の登山口から虹ガ滝の標識に従い
林道を砂防ダムへ。歩きやすい道を滝への下り口に向かう。急坂なので注意が必要。
かつて滝近くに吊(つ)り橋があり、しぶきの間から虹が見えたのが、名の由来という。
休憩後、大曲へ引き返し、賀野神社の標識に従えば間もなく展望台のある車道に出る。
車道を下ると左手に賀野神社、引き続き下れば登山口に戻る。下山後、近くの雪彦温泉
で汗を流すのもいい。
(深呼吸クラブ・森中あゆみ)
=地図省略=
▼姫路駅-(神姫バスで約1時間15分)-雪彦山バス停ー(約5分)-登山口(約10分)
-砂防ダム-(約40分)-大曲-(虹ガ滝往復45分)-大曲-(約5分)展望台-(約2
0分)-賀野神社-(約20分)-雪彦山登山口
▼雪彦山登山道は鎖場、岩場があり経験者の同行が望ましい。問い合わせは姫路市観光
交流推進室TEL079・287・3652
※この記事は過去に神戸新聞に掲載されたものです。
内容については変更になっている場合がありますので、おでかけの際はあらかじめご確認
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