本日9月9日は阿部薫の命日である。
33年前、29歳の若さで亡くなった。
僕も昔は阿部薫に夢中だった。
当然リアルタイムではない、僕が阿部薫を知ったのは18年前だから。
けどCDは全て持っているはずだ。
そういえば、初めて買ったアルトは1994年の今日…
阿部薫の命日に合わせて買った。
シリーズⅡのシルバープレート。
しかし、ここ10年ぐらい阿部薫を聴いていない。
阿部薫の演奏はCDを聴くだけではどうしても限界がある。
インプロヴィゼーションだからその場に居合わせて生演奏を聴くべきだが当然叶わぬ話。
ところが有難いことに今やYouTubeで阿部の動画を見ることが出来る。
生ではなく記録されたものとは言え、視覚も伴えば随分と違う。
それにしても意外といくつもの映像が残っているものなのだな。
この動画の最後で初めて阿部薫の声を聞いた。 何だか想像通りの話し方だ。
阿部薫についてはこれまでに散々語り尽くされ映画まで作られ、特に僕が語ることはないのだが…
けど少し書かせていただくとしよう。
因みに若松孝二監督、町田町蔵・広田玲央名主演の映画『エンドレス・ワルツ』であるが…
僕はサックスのアフレコを柳川芳命さんが担当しているので昔ビデオを買った。
あと灰野敬二が灰野敬二役で出演していたりで見どころも多いので興味のある方は是非に。
だが作品としては、阿部薫に欠くことの出来ない間章の存在が描かれていない点は如何かと思う。
また阿部薫の主要作品は一通りはCD化されており、さらに未発表音源も多数発売された。
『彗星パルティータ』と『なしくずしの死』、ニューディレクションの『解体的交感』は必聴だ。
だが、ここではそれ以外の作品で気になるものを紹介したい。
『阿部薫 1949-1978』 (文遊社)
阿部本人及びゆかりのあったミュージシャンや著名人の言葉、貴重なデータが満載。
阿部の子供の頃の写真なども載っておりまさにファン必携の1冊。
晩年の阿部がよく出演していたライブハウスのママ、騒恵美子さんの文章を今日久々に読んだ。
小説や作り話でないだけに凄くリアリティーがあり何度読んでも感動する。
阿部薫 『ソロ・ライヴ・アット・騒(ガヤ) Vol.4』
阿部の晩年の約1年間のライブの拠点となっていた騒。全10巻からなるライブ盤のVol.4。
1978年4月29日の演奏。アルト・ソロ2曲とソプラニーノ・ソロ1曲。
ソプラニーノによる「チム・チム・チェリー」のロング・プレイが聴きもの。
晩年になるにつれ音数が少なくなる阿部。僕は以前は初期の吹きまくってた頃が好みだったが…
今では多くの即興を聴いてきたこともあり、質に波はあるが晩年の阿部の方が好きだ。
無駄な音を削ぎ落しまさに「研ぎ澄まされた」という言葉がピッタリの演奏である。
高柳昌行・阿部薫 『集団投射 MASS PROJECTION』
一昨年、非常階段30周年記念ライブで非常階段&坂田明の演奏を観た。
まるで阿部が参加してた頃のニュー・ディレクションの集団投射を彷彿とさせる凄まじさだった。
本作は1970年7月9日、渋谷のステーション'70での未発表ライブ音源。
名盤『解体的交感』を凌ぐと言われる本作だが、集団投射なら先ず『解体的交感』から聴いて欲しい。
阿部薫 SOLO 『またの日の夢物語』
1972年1月21日、PIT INN TEA ROOMでのアルトおよびバスクラ・ソロを収録。
僕が阿部を聴き始めた頃は『ラストデイト』と騒シリーズ(それも半分は既に完売)しか無かった。
あと、DIWから出てたミルフォード・グレイヴスとデレク・ベイリーのCDぐらいだった。
だから本作が1994年に発売され、初期の吹きまくってた頃の阿部を初めて聴いた時は衝撃だった。
阿部作品の中では聴きやすいと思う。 勿論、フリージャズであるという上での話だが。
デレク・ベイリー 『デュオ&トリオ・インプロヴィゼイション』
1978年に間章の招聘により来日したベイリーとのセッション。4月19日、東京録音。
ベイリー(g)、阿部(as)、近藤等則(tp)、高木元輝(ts)、吉沢元治(b)、土取利行(ds)。
阿部は生涯を通じて共演者が極めて少なかった。 相性の合うミュージシャンが少なかったのだ。
そして何よりもソロで真価を発揮するアーティストであった。
本作では阿部は1曲だけ、ベイリー、高木とのトリオで演奏している。
アルバム自体は素晴らしくベイリーも冴えた即興を聴かせるが、阿部の演奏は精彩に欠ける。
3月3日のライブが輸入盤『AIDA'S CALL』として出ている。
上と同じメンバーでのツアーだが、この日は土取だけ不参加。
こちらの阿部の方が断然良くてなかなか聴きごたえがある。
しかし音質は悪く、ジャケットも1枚の紙にコピーしただけのもの。
阿部薫 『ラストデイト』
1978年8月28日、札幌「街かど」でのアルト、ギター、ハーモニカのソロ。 死の10日前の演奏。
僕が初めて買った阿部薫のCD。
アルト1本でたった一人で演奏しているということで、練習のモチベーションアップになるかと思い購入。
しかし時折り激しく吹いては沈黙が続き、また少し吹いたかと思えばまた沈黙という繰り返し。
正直、初めは退屈だったが聴いていくうちにそれなりに楽しめた。 本当に良いと思えたのは最近のこと。
それよりも衝撃を受けたのがハーモニカ演奏だ!
恐らく教材用のハーモニカだと思うが、まるでピアノのような重くて大きい楽器に感じられる。
身を削って出す音とはまさにこれだ。 こんな音を出す人が長生きできる筈がない、と思った。
2003年には『ラストデイト』の翌日である8月29日の演奏が発売されファンを驚かせた。
現存する最後の音源。 時間は短いが音質も演奏も素晴らしいので是非聴いて頂きたい。
『ドキュメント 阿部薫 ザ・ラスト・レコーディング』
以上、取り留めもなく書いてみた。
ブロバリン98錠服用による急性胃穿孔で死亡。
事故か? 自殺か?
スキャンダラスに書き立てられるのは仕方ないにしても…
僕は自殺ではないと思う。
『ライヴ・アット・騒』シリーズや『ラストデイト』、『ラスト・レコーディング』を聴けばそう感じる。
阿部は波はあれど晩年までその才能が枯渇することは無かった。 晩年の諸作を聴けば分かる。
いやそれとも、ちょうどやり尽くしてしまった、意外とやり残したことは無かったのかも知れない。
今となっては知る由もない。
阿部が音楽担当し出演もした映画「13人連続暴行魔」(1978)より。
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