『ある過去の行方』映画鑑賞 | うさぎくんのお薦め映画ブログ

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『ある過去の行方』映画鑑賞。冒頭。雨。男が空港に降り立つ。女が出迎えに来ている。二人とも微妙な表情。態度もどこかぎこちない。舞台はフランス。男はイラン人。女はフランス人。女の運転で女の家に行く。男の子と女の子がいる。もう一人の子供はティーンエイジャーの女子で30分を過ぎた頃に登場する。そして別の男があとから現れる。初めはこの6人の人物たちの関係がよく分からないが、この6人が出揃ったあたりから6人の相関関係が、そしてストーリーがわかり始め、それぞれの物語が動き始める。冒頭から何やら不穏な空気が立ち込めているこの映画だが、そのわけはこの映画のラストになって初めて現れるある女性が起こした事件(事件というには大げさなら出来事と言い換えてもよい)が一因となっている(時系列的には数年?前)。この作品を観ているうちに離婚・再婚・ステップファミリー・鬱病・自殺未遂といった言葉が頭をよぎるが、実はそれらはこの作品の主たるテーマではない。不可避的な事態、悪意の無い言動、勘違いや思い込み、人間としての自然な感情等が複雑に絡み合うことによって、人間関係にすれ違いや感情の行き違いが起こり、その結果思いも寄らないことが生じてしまうということだ。この映画はいわゆるサスペンスやミステリーといったジャンルではなく、派手な場面も一切無い。しかし、全編に渡って暗鬱な雰囲気と緊張感が漂っている。果たしてどんな結末を迎えるのかと思っていると、最後に静かだが余韻に満ちた心の琴線に触れるシーンが待ち受けている。とてもいい映画である。映画好きなら、ぜひお薦めしたい。