『カティンの森』映画鑑賞 | うさぎくんのお薦め映画ブログ

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『カティンの森』映画鑑賞。1939年、ポーランド。冒頭、橋の上。侵攻してくるソ連軍から逃げるため大勢の人が橋を渡って向こう側に行こうとしている。しかし、向こうからも大勢の人々がこちらに向かって逃げてくる。何事かと訊くと、「ナチスドイツが侵攻してきたから逃げてきたのだ」と誰かが言う。後ろからはソ連軍、前からはドイツ軍。前門の虎、後門の狼。行くも地獄、戻るも地獄とはこのことか。当時のポーランドの置かれた状況を象徴的に表す劇的な場面からこの映画は幕を開ける。

この映画は第二次世界大戦中にソ連のカティンでポーランド将校をはじめ数千人が虐殺された「カティンの森事件」を扱っている。監督のアンジェイ・ワイダも父をこの事件で失っている。この事件は、ソ連はナチスドイツのせいにしたいし、ナチスドイツはソ連がやったと調査報告を出し、真相は数十年に渡って不明なままだった。戦後ポーランドは社会主義国となりソ連の衛星国となったため、ソ連の仕業であることは誰の目にも明らかだったが、ポーランドはソ連がやったとは公には発言できなかった。1990年になってようやくゴルバチョフはカティンの森事件がスターリン政権下のソ連が行ったと公式に認めた。

脚本は30回以上書きかえられたという。主演の女性の曾祖父もカティンの森事件の被害者ということもあり、監督をはじめ製作者陣、ポーランド人の並々ならぬ情念が全編を支配する圧倒的な重々しさに満ちた映画である。
カティンの森事件のことや、当時のポーランド情勢について事前にある程度知っていないとちょっと話がわからなくなるので注意。また、森に埋められた夥しい数の死体を掘り返し、死体を調査した実際の映像が流れるので、そういうの苦手な人は鑑賞注意。