中米の過度なアメリカ経済への依存 | <現地発>中米政治・経済・社会についての考察&見聞録

<現地発>中米政治・経済・社会についての考察&見聞録

長年中米に在住する某国政府経済情報局部長である経済学博士が繰り広げる、最新の中米の政治・経済・社会に関するクリティカル・ディスカッション。日本との関係や違いを考慮し、小国ではあるがバライエティーに富んだ中米各国、また中米域全体の魅力についてのご紹介。

中米は歴史を通じて、経済発展を遂げる為にアメリカに大いに依存して来た。この依存度を示す指数は中米などの発展途上国の場合は貿易、海外直接投資、政府開発援助、またアメリカに多く在住する中米地域国民の家族からの海外送金がある。例えばエルサルバドルの例をとれば、貿易の約4割がアメリカに頼っているが、輸出額に関しては約半分、また輸入額の35%はアメリカとの関係によるものである。エルサルバドルにある海外直接投資残高も約3割がアメリカによるものだ。これらの国別ランキングでは、アメリカは1位だ。

中米のアメリカとの濃厚な経済関係-これは少なくとも中米から見れば、だが-は先進国でも良くある、上記の様な貿易と海外直接投資に関わる関係に留まらない。エルサルバドルの例を続けるが、アメリカにはエルサルバドル国民の3割強に相当する、2.5百万人のエルサルバドル移民が住んでおり、同国内総生産の14%にあたる年間約US$34億を母国の家族に送っているからだ。また、これらの移民の多くは休暇などを利用して故郷に帰るのだが、彼らが旅行者として訪れた際の出費がエルサルバドル経済に大いに貢献できるのも、出稼ぎ先のアメリカで仕事をする事によって収入を得る事によって可能になる。

中米の様な発展途上国にとっては、政府開発援助もアメリカなどの先進国との経済関係の一部である。この要素に関しても、エルサルバドルにとってはアメリカは第二の援助国となっており、アメリカとの関係はやはり重要だ。エルサルバドルのアメリカとの援助関係に関して更に言えば、内戦真っ只中にあった80年代はエルサルバドルは世界でも屈指のアメリカからの被援助国であり、当時の金額で現状の4倍の約US$2.5億を受けているどころか、軍事援助を含めるとアメリカの援助はUS$70億にまで膨らんだが、その対価としてその時期どれだけアメリカがエルサルバドルを初めとする中米の内政干渉をしたかについては、多くの文献が発行されている。現在に至っては干渉の度合いは減少したものの、中米におけるアメリカの影響は、上述の通り、未だに大きい。

このアメリカへの過度な依存が、アメリカから始まった世界経済金融危機において中米諸国が中南米域で特にインパクトを受けた国々となった結果を生んだ。例えば、特に依存度が高い、エルサルバドルの2009年の国内総生産は-3.5%と言う大幅な減少となったのを始め、殆どの中米各国でマイナス成長となった。これには勿論の事ながら様々な原因があるが、アメリカへの過度な依存はその内の一つだ。

但し、世界経済は変わりつつあり、中米のアメリカへの依存の度合いも減少している。例えば、5年程前まではエルサルバドルの輸出額の約6割がアメリカ向けだったし、政府開発援助に関してもアメリカはエルサルバドルに対して80年代から1997年まで、また2002年から2005 年までの間一位の座を占めたが、何れの指標でもアメリカのポジションは後退した。

相手国がアメリカであろうと他のどの国であろうと、一国に経済の行く末を頼りすぎるのは、国家としてリスク分散が出来ていない甘い戦略だ。アメリカへの依存度が中米に輪をかけて更に深く、その為に2009年の国内総生産成長率が-6.5%だったメキシコは、恐らく今般の世界経済危機の経験を経てこの事が痛いほど分かった事だろう。中米の国々の中にも、輸出相手国2位が中国であるコスタリカにも、この事が分かっているのかも知れない。他の中米各国にもなるべく早く理解してもらい、次回アメリカの経済危機が再発するまでに対策をとってもらいたいものだ。