ん~ん疲れた。 

読みだしたらもう止まらない本です 三毛猫

 

ダーチャ・マライーニの先祖がモデル(?)の

イタリアのシチリア島の公爵令嬢として生まれた聾唖者のマリアンナ・ウクリーア。

13歳(当時としては普通らしい)で母の兄に嫁いで公爵夫人となります。

ネタバレになるのであまり書けませんが、かなりミステリアスです。

 

 

18世紀イタリアの名門貴族の贅沢な生活を垣間見ることができ、

時代は違いますが、一世を風靡したBBCの英国貴族社会の「ダウントンアビー」にも似て引き込まれました。

 

 

構成も巧みで、ダーチャマライーニの文章には読者の五感を働かせる力があり、

登場人物や場面が映像となって浮かび上がってきます。

 

 

ピンクマカロン 一番秀逸と感じるのは、屋根の上に登った時に、

聞くともなしに料理女のインノチェンツァの独り言を聞いてしまったところ。

 

耳が聞こえないので、聞こえる筈はないのですが

唇の動きで言葉が読め、相手の表情とマリアンナの深い洞察力と想像力で、相手の頭の中まで読み取ってしまう。

誰もが理解していないマリアンナの能力を

しじまの中で(実際は煩いのだけど)美しく書き描いたシーンです。

 

ここから読者は、マリアンナが人の心にまで入り込めることを知る。

対人への心配りや優しさが人一倍大きいことも分っていくし

兄が考えている事(隠された秘密)をどこまで読み取ったのか?の伏線にもなる。

 

 

前半はハイスピードで進むマリアンナのあっと驚くような人生の変遷で

後半でタネあかしもありのような。。。

 

所々に静寂の世界もやに霞む記憶など、うまさを感じさせる場面にうなってしまいます。

 

ピンクマカロン その中でも好きなところは、彼女が音を失った時の記憶の描写。

ほんの僅かなな描写ですが。なに?なに?と読者をひきつける。

  • 彼女は話すこともできた。でも何歳になっていたのだろう?四歳か五歳ぐらいだろう?…  ある日、理由もなく、彼女は耳が聞こえなくなった。… 静寂が彼女に取り憑いた。病気のように。…  
  • 「お前は生まれつきこうだったのだ。聾啞者だったのだ」父がある日ノートに書いて見せてから、あの遠いいくつかの声は自分が勝手に作り上げたものだったと思うほか道はなくなった。

 

ピンクマカロン また、後半部分でマリアンナが領地の貧しい百姓家を訪れた時に

  • 赤ん坊が泣きだし、見る間にその口が大きくなり… そして鳴き声が徐々に伝わったのか、周りのものまで泣き出した。めんどりも驢馬も、そしてベッドも食器棚も、女のぼろぼろのスカートも無残にも凹んで焦げついた鍋までもが泣いているようだった。

 

読んでる途中から実際の音ではないと気づきだし、マリアンナを圧倒するシーン。

マリアンナは息が詰まって外へ出るのです。

この描き方も、上手いなぁ!と感心しました。

 

私自身も遊びで小説を書いたことがあり、いつかまた書きたいと思っているので

上手い描写には、見とれるというか、唸りながら何度も読み返してしまいます。

 

 

また、読んでいる途中で、あら?と気づいたことが。。。

聾唖者のマリアンナ・ウクリーア公爵夫人

これってあの読みにくかった本に登場してた人では?

 

「帰郷シチーリアへ」の最後の方でダーチャマライーニが

祖先である貴族の邸宅ヴァルガルネーラ館を訪問し、

先祖たちの肖像画を前に大叔母から説明を受けている時に、

マライーニはある女性の肖像に惹きつけられます。

耳の聞こえない公爵夫人マリアンナ・ウクリーアの肖像。

 

この時から書きたい衝動が生まれたのかも。

実話なのか、マライーニの創作なのか? 

物語の内容は、凄すぎるから、おそらく創作なのでしょうね。。。

 

「シチーリアの雅歌」も初め読みにくいと言いましたが、途中から気にならなくなり

読み進むにつれて何が起きたのかと思えるくらい、むしろ上手いとさえ感じるようになりました。

今は、こんな長くて面白い小説を翻訳してくださった方に心から感謝しています。

 

 

 

 

イタリア文化会館 でダーチャマライーニという女流作家の名を知り

なかなか読む機会がなかったのですが、今回その作品に触れて楽しかった。

 

せっかくなのでもっと読みたいと思い、追加しました。

 

 

 

本が好きなので、昔は新刊本でも読みたいと思うとすぐ買ってましたが

最近はアマゾンで中古本を買うことが多くなりました。

これらもすべて中古ですが、

「シチーリアの雅歌」は、再版されていないのか中古本ばかりでした。

面白いのでお勧めですが。。。

 

題がシンプルに

マリアンナ・ウクリーア公爵夫人」の方が読みたくなるんじゃないかな、なんて。