「告白」を読まずしてルソーを知ることはないOn ne peut connaître Rousseau sans lire ses "Confessions "

  純粋すぎる理想がはらむ  美しくも危険なパラドックス

 

 

 

キャッチコピーが得意なルソーの真似をしました。

このことは 読み終えた今、読んでる途中から感じていたことです

 

「告白」を含むルソーの生い立ちは Wkipediaに詳しく書かれています
ジャン=ジャック・ルソー - Wikipedia

 

告白は全12巻

【第1部 (1~6巻)】生い立ちから少年期  性に目覚める思春期を経て青年期

 

 

ヴァランス夫人との散歩でツルニチニチソウを見つける

 

【第2部(7~12巻)】

大人になり、調子に乗って浮気をして捨てられ、やがて放浪の旅へ――。

音楽の仕事をしますが、インチキもありで赤恥を書きながら学んで成長していく。

ヴェネツィアのフランス大使秘書になって、イタリアへ。音楽の才能が磨かれる

 

フランスに戻ってテレーズと知り合う

パリのサロンでディドロたち知識人と交流しながら転機が訪れます。

1750年のアカデミーの懸賞論文に応募。ディドロからのアドバイスで、「文明の進歩は人間を堕落させた」と、当時の常識をひっくり返す逆説(パラドックス)の論文を書き 一等賞を受賞して、思想家としてスターダムにのし上がります

 

ルソーってディベイトが苦手で、サロンでは 会話の妙 を楽しむことが出来ず、むしろ恥をかくことが多かったとか。正に 階段の機知 の人で、帰宅して部屋にこもって机の上で反論を論理だてて書いていた。机上の理想論。「空論」ではなく、そこには「真理」がある。備考の無い純粋理論。

議論を挟まないから理論だけが先行して過激になるのかな。。。ブレーキが利かない

「夜 書いたラブレターは、朝 破りたくなる」と昔からいいますから 三毛猫

 

 

投稿内容と関連なくフランス版「告白」の挿絵を載せています

 

「新エロイーズ」執筆中、 男装で現れたドゥドト夫人 Madame d'Houdetot

 

 

ルソーは単に皆の注目を浴びること、大ヒットを狙っただけ じゃないかな~

(パラドックスを使えば間違いない、と)

思索中は、最高の真理を書いてると自信をもっているのだから、誰もが共感して 

教会批判で逮捕状がでるとは予想もしなかった。用心してオランダから出版してるし

 

死後テレーズが承継できるように生涯年金を長期で出版商のレイと契約をしいてる。年300 フラン (一般労働者の年収)、写譜で臨時収入も得られる。 贅沢ではないけれど誰にも頼らずに余生を送れると計算した、としか思えないんです。読んでいて

 

「告白」では、フランスを追われてスイスへ逃げて…、そこも追われてイギリスへ行くところで終わります。

 

 

続きが読みたくて

それらしい『孤独な散歩者の夢想』を kindle で読み始めたのですが

う~ん、なんか違う。。。 

散歩して植物を観察し、話し相手がいないから、過去の自分と対話するとか…

「高齢者が残された世界で孤独でも生きられる方法」を示されているようでもあり、参考になるかと少し読み進めましたが  ドロ~ンと暗いので中断 オッドアイ猫あせる

 

ルソーの文章には 世を拗ねた、他人のせいにするような語り口 がある。人間だれしも持っているものだけど。

この本は、イギリス生活が上手く行かずにフランスに戻ってからの 最晩年の心境を書いたものだと知りました。

  • 彼は散歩のたびに草花を採集し、虫眼鏡や顕微鏡でその構造を細かく観察しました。集めた植物は丁寧に乾燥させ、何冊もの美しい植物標本(ハーバリウム)を作り上げ、その精密さは、当時の専門家も驚くほどのレベルだったとか。(植物との関わりはヴァランス夫人で得たもの?)

 

ルソーの植物標本

 


イギリスで何があったのか詳しく知りたくてAIに聞いてみると、『ルソー全書簡集』で詳細がわかるということです。とても読めないので、時系列に沿った正確な情報を出してもらいました。

 

  •  1764年12月18日:【ルソーの先制攻撃】ルソーが自分を追放したジュネーヴ政府を批判する著書『山からの手紙』を出版。その中でルソーは、ヴォルテールが「匿名」でキリスト教を過激に攻撃する本を書いていることをバラしてしまう。 
  • 1764年12月下旬:【ヴォルテールの報復】自分の匿名を暴かれて大激怒したヴォルテールが、猛スピードで書き上げたのが『市民の意見』。12月末にはジュネーヴの街に大量にばら撒かれる。ここで「あいつは自分の子どもを孤児院に捨てた極悪人だ」と暴露される
  • 1765年1月:「フリードリヒ大王の偽書簡」がフランスで発刊(ヴォルテールの友人のホレース・ワルポールが書いた)
  • 1月:ルソーはそれを知らぬままヒュームと一緒にロンドンに着く
  • 3月:ロンドンの喧騒を嫌ったルソーにヒュームは田舎(スタッフォードシャーのウートンWootton)の邸宅を用意し移住する。ちょうど同じ頃、例の「フリードリヒ大王の偽書簡」がイギリスの新聞に掲載され、ルソーは世間の笑いものになる。
  • 4月 ルソーの「脳内パズル」が繋がる(疑心暗鬼)
    新聞を見たルソーは激怒。「ヒュームはイギリス政府から年金をもらう手続きをしてくれているようだが、裏ではこの偽書簡の犯人とグルになって私をハメようとしている!」と完全に疑い始める。
  • 6月 〜 7月:決裂の「怒りの大長編手紙」
    ルソーがヒュームに対し、これまでの恨みつらみと「陰謀論」を書き連ねた凄まじい怒りの手紙を送りつける(特に7月10日の手紙は、のちに出版されるほどの長文)。 
  • 7月26日:ヒューム、周囲に相談を始める
    ルソーから悪魔のように罵られたヒュームはショックを受け、パリの知識人たちに「ルソーにこんな手紙を送りつけられた。私は反論の出版をするべきだろうか」と手紙で相談を始めます。
  • 10月 〜 11月:【ヒュームの反撃】公式リークと出版
    パリの知識人たちが「ヒュームの名誉を守るために、ルソーの錯乱ぶりを世間にバラすべきだ」と激しく同意。これを受けてヒュームは、ルソーとの往復書簡を暴露した「ルソー氏との確執に関する概説」をフランスとイギリスで緊急出版しました。
 

イギリスの新聞に載ったルソ―の風刺画「野生人」

 


ヴォルテールもヒュームもルソーもどっちもどっち。文筆家は恐ろしい

 

 

フリードリヒ大王の偽書簡は陰謀だから、ルソーの被害妄想にはならない。

で、そのあり得ない偽手紙とは:                               

わが親愛なるジャン=ジャック(ルソー)よ。

お前が国(ジュネーヴ)を追われたのは、お前の哲学のせいではなく、お前の自由への愛のせいでもない。お前にはそれらがあったが、お前はただ目立ちたかった(奇行に走りたかった)のだ。お前が不幸を愛しているのはよく知っている。もしもお前がまだ迫害されたいというなら、私の国(プロイセン)に来るがいい。私の国民はお前を愛しているし、私も喜んでお前を迫害してやろう。

だが、もしお前が普通に静かに暮らしたいというなら、それも用意してある。ただし、私の国に来るなら『お前が目立つための奇行(singularités)』や『注目を浴びるための愚痴』は一切禁止だ。お前はただ静かにしていろ。

お前をこれ以上、誰もいじめてくれないのは寂しいだろうが、私の元ではお前をチヤホヤしてはあげないよ。私はお前を王として扱い、お前が良識(良心)に従って生きるなら、お前にとって最大の罰、すなわち「誰からも無視されること」を与えてやろう。

お前の良き友人、フリードリヒ

 

「告白」で、ルソーにスイスのプロイセン領内に安住の地を与え匿った人としてフリードリヒ大王がでてきますが、三国志の関羽を彷彿させる 男が惚れる男 という器の大きさです。こんな手紙を書くはずもない呆れる内容です。

(本文にもあった 「衒学者の粗野 la rusticité d’un pédant」くらいなら…)

 

 

逮捕直前スイスへ逃亡するときの別れ

 

 

「社会契約論」や「エミール」でオランダの出版社と結んだ終身年金が 年300 フラン、亡命先のイギリスに送られては来ましたが、足りないので

  1. 「ヒュームがポケットマネーで足す」計画
    ヒュームは、ルソーのプライドを傷つけないよう、「出版商のレイが、ルソーのこれまでの本の売れ行きが良いからという名目で、年金を増額して送ってきた」という嘘の形にしようとしました。ヒュームが裏でレイにお金を渡し、レイ経由でルソーに多く送金してもらおうとしたのです。
  2. ルソーに見破られる
    しかし、細かすぎるほどお金の計算に厳しかったルソーは、「レイが急にこんなに大金を送ってくるはずがない。おかしい」と気づいてしまいます。
  3. 「陰謀だ!」と大激怒
    普通なら「ヒュームが気を利かせてくれたのだな」と感謝するところですが、重度の人間不信だったルソーはこう歪んで捉えました。
    「ヒュームは出版商のレイまで買収し、私を騙して大金を握らせ、自分への借金漬けにして奴隷にしようとしている!」

 

  • 1767年4月30日:突如の失踪
    迫害の恐怖がピークに達したルソーは、滞在していたウートン・ホールに衣服や原稿、全財産を置いたまま、内縁の妻テレーズを連れて夜逃げ同等に飛び出す。
  • 5月前半:イギリス国内を迷走
    フランスへ渡る船を求めてイングランド南部の港町を転々としますが、「ヒュームの手下に命を狙われている」という恐怖からパニックに陥り、あちこちの港で船を乗り換えるなど錯乱状態にあったらしい。
  • 5月22日:フランス(ドーバー海峡)を渡る
    なんとかドーバー海峡に面した港町ライ Rye から船に乗り、対岸であるフランスのカラミティ( Calaix カレー )の土を踏む。

 


 

本当に被害妄想だったのか? 子どもの喧嘩のようで終わりが見えない。

 

 

1764年まで フリードリヒ大王の庇護で逃亡生活を送ったスイスのモティエ。

閑つぶしにレース編みをして、結婚する女性にプレゼントしました。

その時の条件が子供が生まれたら母乳で育てることだったのです。「母乳育児」の推奨

これが教育論「エミール」にもキャチーなフレーズで書かれています

 

 

ウェディングドレスのレース飾りを編んでいるルソー

 

何て素晴らし!と「エミール」を読んだ人は思うでしょう

でもルソーは内縁の妻が生んだ5人の子供をすべて孤児院に捨てさせているんです。

子育ても育児も全く経験したことが無い。母乳?  母乳が足りない、出ない人は?

現代なら ハラスメント になります

 

貧乏な時だったからと言えば確かにそうなんです、でも割り切れない

5人目の子供の誕生の頃はオペラ「村の占師」の成功で一時金が入ったはず(出産が先?)

 

そもそも内縁の妻テレーズの存在

出会った頃の容姿はルソーの好みで、家族の為に働く健気な少女だった。

そこが気に入ったのだけど、最初から一生捨てないけど結婚はしないと宣言して暮らしています。テレーズは知恵遅れじゃないかと思われる女性で、ルソーが指導しても時計の針も読めない無学のまま。無償でルソーに尽くす女性でした。

(年金は残してあげるし、最後は結婚式を挙げて正式の妻にするんですが)

 

ルソ―にとって理想の結婚相手ではないので、彼女との子供は有るはずが無い、有ってはならない存在だったのかも。

後に事情を知ったリュクサンブール夫人が僅かな手がかりから探し出そうと骨を折ってくれますが、一人も行方が分から無かった。

これが当時は普通の行いだったと言われても やはり理解できない。テレーズは手放すことを泣いて嫌がったとあるから。理想の子育て意識が高すぎて、悪い環境で育てる現実に絶望していたとしても

 

 

窓辺で食事する 若い頃のテレーズとルソー

 


 

ルソーのキャッチフレーズを緑色にしました。

 

●1750年の懸賞論文の題は:

学問と芸術の復興は、習俗の純化に寄与したか               Si le rétablissement des sciences et des arts a contribué à épurer les mœurs.

「文明の進歩は人間を堕落させた」と、当時の常識をひっくり返す逆説(パラドックス)の論文を書き 一等賞を受賞して、思想家として一躍  哲学界のスターになる。

天文学は迷信から生まれ、雄弁術は野心、憎悪 、お世辞、 嘘から生まれ、幾何学は貪欲から生まれ、物理学は無益な好奇心から生まれた。つまり、学問も芸術も すべて人間の不道徳から生まれたのだ。

L’astronomie est née de la superstition ; l’éloquence, de l’ambition, de la haine, de la flatterie, du mensonge ; la géométrie, de l’avarice ; la physique, d’une vaine curiosité ; toutes, et la morale même, de l’orgueil humain. Les sciences et les arts doivent donc leur naissance à nos vices :

 

学問や芸術は、人間を縛り付けている奴隷の鎖を  美しい花飾りで覆い隠しているにすぎない。

les sciences, les lettres et les arts, moins despotiques et plus puissants peut-être, étendent des guirlandes de fleurs sur les chaînes de fer dont ils sont chargés ;

その花飾りを死ぬまで愛し続けたのがルソーでしょう。

 

 

●1754年 に同じアカデミーの懸賞論文にも応募。その時の題は:

人間の間の不平等の起源は何か、そしてそれは自然法によって認められるか    

Quelle est l'origine de l'inégalité parmi les hommes, et si elle est autorisée par la loi naturelle.

論文は過激すぎて落選。この『人間不平等起源論』は翌年に単行本として出版されると、初期の傑作としてヨーロッパ中で爆発的に売れた。

ある土地に囲いをして『これは俺のものだ』と宣言し、それを信じるほど素朴な人々を見つけた最初の人間こそが、文明社会の真の創設者であった。

Le premier qui, ayant enclos un terrain, s'avisa de dire : Ceci est à moi, et trouva des gens assez simples pour le croire, fut le vrai fondateur de la société civile.

突っ込みどころ満載過ぎて、読者の心をわしづかみにした。

 

 

そう、

その後に彼が連発するベストセラー著作が、全てこの デビューで味を占めた「パラドックス」と 強烈な「キャッチコピー」によって作られていた、といえるのです。

 

 

●『エミール』の第1巻
作中で次のような強烈な言葉を使って、母乳は「国家が滅びるレベル」に語られて母親たちの心を動かします。

だが母親たちが自ら進んで我が子に授乳するようになれば、道徳は自然とよみがえり、すべての人の心の中に自然の感情が呼び覚まされ、国家に市民が不足することもなくなるだろう。
Mais que les mères daignent nourrir leurs enfants, les mœurs vont se réformer d’elles-mêmes, les sentiments de la nature se réveilleront dans tous les cœurs ; l’État va se repeupler.

この母乳に関するくだりはかなりくどい。なんか全部くどそう、ルソーにしては珍しく読む気がしない。

 

 

●『社会契約論』の超有名フレーズ

人間は自由なものとして生まれるのに、いたるところで鎖につながれている。自分が他人の主人であると思い込んでいる人も、じつはその人々よりもさらに奴隷なのである。
L'homme est né libre, et partout il est dans les fers. Tel se croit le maître des autres, qui ne laisse pas d'être plus esclave qu'eux.

この人 何言ってるの?と 続きが読みたくなります。

 

 

 

子どもを捨て  友を疑い  妄想と現実の間で迷走したルソー

 

これほどまでに人間臭く 注釈まみれのエピソードで満ちているのは、彼自身が『告白』の中で自分の真実を何ひとつ隠さずに書き残したからです。

理想を語る美しさと 現実に生きる醜さ、その両方を敢えてさらけ出したルソーという人は、人間の「割り切れなさ」そのものを体現した いびつな天才だったのかもしれません

命を削って遺した言葉の魔力を前にした時、私たちは圧倒され、そしてその手にあるペンの恐ろしさも知るのです

(「真理」があるから心動かされ、でも備考が無いから、理想から少しでも外れると生きていけない)

 

大変「おもしろい」本でした。いつか読み返す日がありそうです
歴史上で名前を知る有名人が次々に登場し、フランス語版の挿絵が理解を助けてくれました。白黒の銅版画を AI に彩色してもらうと、今そこにいるようにロココの服装や室内が息づいて甦り、文句なしに楽しい

作った色付き挿絵を全てブログで紹介したいくらです。

それにしても ルソーは、知れば知るほど 研究者にとって底なしに興味深い対象じゃなかな。。。

 

 

忖度しない難敵ルソーに挑む リュクサンブール公爵

 

 

 

 

 

「告白」の画家モーリス・ルロワール Maurice Leloir の銅版画についてはこちらに↓

 

 

 

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