激激激マニアックです。
『現代の音楽展2016一高橋アキを迎えて』
の全日程、2月6目と7目の2目間とも行くことができた。
https://www.youtube.com/watch?v=63TFwA9CUT8
初日は
・アキさんによる公開レッスン
・現音名誉会員によるレクチャー
・アキさんと、佐藤佑介さんの連弾によるミニ・コンサート
2日目は
・公開レッスン受講者3人の中から選出された
1名の成果発表=演奏
・『シューベルトとコンテンポラリー』をテーマにした
パネリストによるディスカッション
最後にアキさんのコンサートと盛りだくさん。
シフト勤務で3ヵ月先の予定が見えず、で、
チケット取れない=演奏会行けないの
ありがたくないトレンド。
これでコンサート日程のチェックもしなくなると
完全に負のスパイラルに陥るので
ふと、アキさんのホーム・ページを見たところ
当該『現代の音楽展2016』がヒット。
音楽は心の栄養。
特に生演奏を聴かないと
体調が悪くなってくる感じさえする。
なので、初日は15時間の、
仮眠のない夜勤のあがりの日になるけど
「行ったれっ!!!」とチケットを買った。
初日 2月6目
14:00~16:00 アキさんによる公開レッスン
受講生は3人で、1人あたり約40分のレッスン。
現音主催で、講師がアキさんならではの
シューベルトと現代曲が2曲。
個人的には、前述のような仮眠なしの夜勤の上りの日なので、
この公開レッスン中のどこかで寝てしまうだろと思っていたが、
受講生のレベルが高く、
また、アキさんの指導も大変に興味深く
まんじりともせず見入ってしまった。
国立音大院生1年Kさん
(プログラム・ノート(以下PG)では、
フルネームの記載ですが、イニシャル表記にします。)
課題曲
シューベルト:即興曲集 D935より第1番
アキさんの「インテンポになり過ぎず、歌うように」の
アドバイスが当方の印象に強く残った。
また、譜面をプロジェクターで壁面に投影しているので
どこを、どう指導しているのか
聴衆にも分かって良かった。
東京音大院生2年Kさん
課題曲
松平頼暁氏:ピアニストのためのアルロトロピー
強烈な現代曲。
さらに弾きながら、時折発声をもしなければならない。
強いて例えると、発声はビートルズの
“Come Togther”の「シッ!」というようなものや
叫びに近いものもあるという難曲。
Kさんの演奏は気迫が感じられ
強烈な曲調にマッチしているように
当方には感じられた。
がっ、アキさんのアドバイス
「譜面を変えてしまってはいけない」。
この作品はアキさんのCDもあるし、
翌日の演奏作品でもあるので
ある程度は聴き込んでいたものの、
Kさんの、譜面と違った箇所は当方には分らなかった。
一回しか演奏されない現代曲も少なくないがため、
まさに一期一会として
作曲者の意図を忠実に伝えようとする
アキさんらしいと思った。
(以上、アキさんの著書
「パルランド」より、当方読解)
桐朋学大2年 Sさん
課題曲
湯浅譲二氏:内触覚的宇宙Ⅱトランスフィギュレーション
当方びっくりして聴きいってしまった。
まず、ピアノの音色が綺麗。
同じピアノでも、
弾き手によって音色がまるで違う、を改めて実感。
倍音も綺麗に出ている。
アキさん奏でるフェルドマンの作品での
綺麗な倍音を彷彿させてくれたほど。
でも、アキさんのアドバイスは「クールに」。
う~ん、厳しい。
ただし、この言葉の真意は
翌日のアキさんの演奏で、驚愕と共に、
理解させられるとは、このときは知るよしもなかった。
16:15~17:15 現音名誉会員によるレクチャー
松平頼暁氏「自作ピアノ曲を語る」
以下、PGから引用させていただく。
『ピアニストのためのアルロトロピー』は8部からなり
その中の第5部では
「88個の鍵盤が平均1回現れる。
その反復回数は、平均4。
いずれもポアソン分布によって計算されている。」
(引用ここまで)
クセナキス的に聞こえる所がある
と思っていた当方。
(クセナキスは数学的手法で作曲していたと、される)
もろに手前ミソだけど、
自分の耳は意外に確かだ、と、かなり嬉しかった。
(アキさんと、受講生の演奏が
違っていた所には気付かなかったけど…。)
湯浅譲二氏『ピアノの作曲とは』
例えば、モーツァルトのオーボエ協奏曲は
フルートでも演奏できるのに対し
現代曲では、その楽器固有の特性を追求する手法があり
『内触覚的宇宙Ⅱトランスフィギュレーション』は
ピアノならではの残響(当方が言うところの倍音)を
活かした作品といった趣旨のレクチャーをされた。
まさに仰るとおり、
当方、目からウロコ、でした。
「楽器固有の特性を追求する手法」で
直ちに思いつくのは、ベリオの『セクエンツァ』だね。
17:30~18:20
アキさんと、佐藤佑介さんのミニ・コンサート
赤石直哉氏: Moment Musical For Piaio
この作品は、2013年の
「第37回ピティナピアノコンペティション」で
特級課題曲とされた“Torso I Bianco"と同様に
時折ジャズっぽい譜割りが顔をみせるのが
個性の作品かな、
と当方の聴感上には感じられました。
かっこいい作品です。
https://www.youtube.com/watch?v=xI-e9K56jzs
佐藤佑介さんの演奏もまた良かったです。
PGには、14歳から本格的なレッスンを受け、
15歳でリサイタル・デビューとあるので、
天賦の才能もあったのでしょう。
シューベルト:人生の嵐 D947
連弾 低音部:佐藤さん高音部:アキさん
良かった。
当方、アキさんのケージとサティプロ
(カスヤの森 現代美術館)で、
佐藤さんもおみかけしていました。
昨年、ケガをしてしまったアキさんに代わって
西村朗氏:ヌルシンハを代演した頃からのご縁なのでしょうか?
中川俊郎氏:“ShubertーPhantasie”一 Phantasie
“Fantasy”ではなく“Phantasie”なのは
デイ一夕ー・シュネーベルの
『シューベルト・ファンタジー』をも
引用しているからだそう(PGより)で、
ユーモアをも感じられる作品でした。
(デイーター・シュネーベルは当方、初耳。
ウィキペディアによれば独の作曲家で
ダルムシュタットにも関わりがある旨。
前出の松平氏も、ヴァレーズの作品での、
フルートの公開レッスンを傍聴したとも仰っていた。
ある意味、現代音楽の聖地と言えるかもしれません。)
この作品も連弾だったけど、
低音部:アキさん高音部:佐藤さん
に変わって、ピアノの鳴りがぐっと深まった。
これは決して佐藤さんの悪口ではなくて、
世界のアキさんとは、経験値が違い過ぎるわけで、
アキさんの心技を吸収して
更なる高みを目指していただきたいと思う。
アンコールに
ストラヴィンスキー:3つのやさしい小品
より、第2曲『ワルツ』。
低音部:アキさん高音部:佐藤さん
アキさんは端的に
「ストラヴィンスキーが
サティに捧げたワルツ」と紹介された。
以下、故 秋山邦晴氏 (アキさんの配偶者)の
「エリック・サティ その生涯とピアノについてのノート」より
引用させていただくと、
ドビュッシーの紹介でサティと知りあった
ストラヴィンスキーは、こんな言葉を残しているそう。
「ドビュッシーはサティのピアノ曲を
私のためにずいぶん弾いてくれた。
サティは私の知りあった人たちの中で、
たしかにいちばん変わった人物だったが、
また、とても珍しい、徹底的にウイットに富んだ人だった。
私は彼が大好きになった。
彼も私の友情を分かってくれたと信じている。」
(引用ここまで)
『ワルツ』はストラヴィンスキーの
サティばりのウィットが感じられる楽しい作品でした。
初日の最後に、
3人の公開レッスンの受講者の中から
翌日の『成果発表』のための選考の結果発表。
Kさんのシューベルトに決定。
第2目 2月7目
,
14:00~14:20 公開レッスン成果発表
国立音大院生1年Kさんによる
シューベルト:即興曲集 D935より第1番
「譜面に正確に弾いているのは良いのですが、
もう少し歌うように」の
アキさんのアドバイスを受けての発表は、
だいぶ硬さが取れたように感じられ、良かったです。
もっとも、選出理由は
「譜面に正確に弾いている」ことでしたので、
まず、作曲者の気持ちを第一に
「自分の歌を歌う」ということでしょうか。
14:20~15:20シンポジウム
『シューベルトとコンテンポラリー』
パネリストはお三方で、
近藤譲氏 : 作曲家
沼野雄司氏 : 桐朋学大教授
松平敬氏 : 声楽家
非常に興味深いお話しが数多く聞けたのだけど
沼野氏
「シューベルトは締切がないがために、未完成が多い」
(ただし、『未完成』の表題で知られる交響曲は、
この高い完成度の2楽章をもって完結なのか、
それとも本当に未完成なのかという謎があり、
上述の「締切がないので未完成」には含まれない)
近藤氏「ベートーヴェンが爆発して終るのに対し
フェルドマンは音楽を枠として考える」
沼野氏「高橋アキさんが、サティ、フェルドマン、
シューベルトなのは、まさにそういうこと」
松平氏
弾き語りで、特に次の楽曲を
現代曲にも通じるとする考察が興味深かった。
https://www.youtube.com/watch?v=HfH1WLj3PRU
当方の私見:同じ旋律の繰り返しは、
のちの「ミニマル・ミュージック」においても
ミニマルに変化していくので、
歌の伴奏ともいう面でも、むしろロックでいう、
リフの手法の元祖では、と感じた。
このことは、クリームの"Sunshine Of Your Love”等、
枚挙にいとまがない)
https://www.youtube.com/watch?v=wFxTjwsYENE
15:35~18:00
第23回朝日現代音楽賞記念
高橋アキ ピアノリサイタル
ルチアーノ・ベリオ:水のピアノ
シューベルト:即興曲D935-1、
ブラームス:間奏曲op.117-2の
素材および構造を抽出して書かれた作品(PGより)
当方、初めて耳にする美しい曲で、目がうるつとした。
音数が少ない、特に最近のアキさんが得意とする
曲調にハマったせいだと思う。
https://www.youtube.com/watch?v=06OBNoeKWBw
https://www.youtube.com/watch?v=W1a1lkBwjAU
https://www.youtube.com/watch?v=aUANffW3EkQ
(アキさんの演奏ではありません、念のため申し添えます)
浅野藤也氏:祈り~ピアノのために
浅野氏「この作品を書く際に目指したのは
簡素であること、曖昧であることであり、
沈黙の音の世界のイメージを志向した。
和声の色彩感覚、歌の内在という点で
シューベルトの音楽に共振している。」
(以上PGより)
当方の聴感上では,ペダルを多用せず、
打鍵した音と音との響きで、
現代曲らしい跳躍した高音の響きや、
もしくは低音同士の干渉等で
浅野氏の、上記PGの言葉を表現していた。
北爪やよひ氏:ENEK XI for Pianist ~そのときどきの~
北爪氏「3度重ねの旋律に4度を含む伴奏形という
シューベルトと私のコラボ!? ENEK=ハンガリー語のうた」
(以上PGより)
3度と4度というと、直感的には
ドビュッシー:12の練習曲のうち、
『3度音程のために』、『4度音程のために』
あたりが想起されるハズなのだけど
当方の聴感上には、なぜか
昭和のノスタルジーが感じられた。
車で言うと、現R35GT-Rではなく
ハコスカ(KPGC-10)GT-R (って、どんな曲だ???)
アキさんの演奏は
意識的にペダルで響き(残響)を消していた、
とは後で気付いた。
松平頼暁氏:ピアニストのためのアルロトロピー
公開レッスン課題曲のお手本。
受講生へのアドバイスのとおり
・クラスターは上の音のピッチを活かして
・発声はピアノの音にかき消されないよう工夫して
・譜面通りに、ピアノ内部の弦に向かって手を叩く
が実践された。お見事。
湯浅譲二氏:内触覚的宇宙H・トランスフィギュレーション
湯浅氏 「ピアノという楽器の特性、特に巨大な
リゾネーター(共鳴体)を通して生じてくる
ソノリティを最大限に生かすという意味で
ピアノという楽器によってこそ
実現可能な音楽を書いたつもりである。」
(以上PGより)
末尾の「つもり」がミソだと思う。
当方が例える「倍音コントロール」ができる
弾き手はアキさん以外に、
それほど多くないと思われるので。
そうして実際の演奏では、当方が神業と仰ぐ
アキさんの「倍音コントロール」
にバリエーションがあるとは夢にも思わなかった。
一つはフェルドマン作品での、
時間軸(楽曲の進行)を曖昧にさせるかのような夢想的な響き。
そして今回は、弾き出された音が凍てつくかのような
冷徹で硬質な響き。
ここで、ようやく公開レッスンでの
「クールに」の本当の意味が分かった。
『祈り~ピアノのために』ではペダル使いを抑え、
『ENEKXIfbrPianist~そのときどきの~では』
おそらくは意識的に残響を切ることで
ここ『内触覚的宇宙且・トランスフィギュレーション』での
豊かに、しかし冷徹で硬質に響く倍音を際立たせたのだろう。
本当にアメイジング=驚愕だった。
ここで休憩。
トイレに行ったところ、湯浅氏をお見かけした。
「(湯浅)先生がプログラム・ノートに
書かれたとおりの演奏は、アキさんにしかできませんね」
と、話し掛けることができたら、何て仰っただろうか?
そんな機転は利かずで、我ながら頭の回転が鈍い ̄○ ̄。
プログラム後半は、
シューベルト:ピアノ・ソナタ21番。
そして、アンコールに、
武満徹さん:遮られない休息Ⅰ
アキさんは芸大大学院在学中に師事した
ゲオルグ・ヴァシャヘーリ先生にシューベルトを薦められたが
なぜ自分がシューベルトなのか納得できなかったそう。
やがて、現代的の依頼が多くなり
時は流れ、世界的にも現代曲のスペシャリストになった。
そうして、あるときに見た映画に
シューベルトの20番の第2楽章が使われていて、
「弾かなければいけない」との使命感に駆られ
2か月先のリサイタルのプログラムを変更までして
20番を演奏されたのだそう。
これ以後、カメラータ・レーベルの薦めもあって
シューベルトの録音もシリーズ化された。
(以上著書「パルランド」を参照に要約した)
一方、本目潰奏された
松平頼暁氏:ピアニストのためのアルロトロピーと、
湯浅譲二氏:内触覚的宇宙(本目演奏はⅡ)は
アキさんの3枚組のデビュー作に収録された作品。
ということは、シューベルトは現代曲とともに
実はアキさんの礎にあったのだ。
30年来のアキさんファンである当方でも
なぜアキさんがシューベルトなのか
こうじた文章を起こしてみて、初めて分かった気がする。
また、故武満さん、
本日レクチャーもなさった松平氏、湯浅氏
さらに故 秋山氏とアキさんは
新しい音楽の地平を切り開いてきた盟友なのだ。
こうした、今までの出会いも大切に育みつつ、
また一方で柔軟に若手の作品も取り上げ、
さらに進化していくのがアキさんなのだ。
シューベルト21番も、
武満さん:遮られない休息Ⅰとも
どこか懐かしく、
それでいて新鮮な(一見矛盾するようだけど)
すっと胸に入ってくる演奏だった。
武満さん没後20年とは
アキさんのアンコール演奏への
MCで仰っていた。
また、コンサート会場のオペラ・シティの
大ホールはタケミツ・メモリアルでもある。
もう一つのアキさんの大切な礎である
サティも、ストラヴィンスキーを通して
フューチャーしていたし、
そのサティの生誕160年の本年中に
新録音もリリース予定で、次のリサイダルでも
『天国の英雄的な門への前奏曲』等が取り上げられる。
本当に素晴らしい2日間でした。
そんな2日間とも居合せられたことに感謝。
で、その代償は夜勤と日勤が入り乱れる
5日間の強化合宿のようなシフト×2のため
ブログにまとめるのに11目も経ってしまった。
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