ひょんな事は思いの外日常的に | ルルガノヒレヒラヒラ

ルルガノヒレヒラヒラ

■■■ここの記事の読み方■■■
新聞と同じです。字の大きいところや、興味を引いたところだけ読んでよし、ctrl+F字キーでキーワード検索しながら読むもよし。流し読みももちろんおkです。

バーチャルシンガー、初音ミクはひとり見知らぬテントの中で目が覚めた。

どうやら自分はたった今セカイ空間で生成された存在らしい。
自分が起動されたということは、どこかにこの空間を生み出したプレイヤーがいるはずなのだが。

まだ到着できていないのだろうか。
起き上がって辺りを見渡してみる。自分はサーカスのテントの中にいるらしかった。マニュアルにあるテント内では違うようなので、きっとここはプレイヤーの心理を空間化した場所なのだろう。

「セカイ型」の電脳空間と共に新しく誕生…発生したボーカロイド・オリジナルタイプのバーチャルシンガーがする事は2つ。

まず、始めたばかりのプレイヤーに挨拶とここのセカイの説明。次に簡単なチュートリアルへと案内する。

するとこのセカイの時間は動きだす。後はプレイヤーには自由に活動して貰うことができる。


ストーリーを見守るもよし、セカイの中で生活を始めるのも良い。それぞれのセカイにいる主人公たち、現実世界に住むバーチャルアイドル達と交流することもできる。


ミクは、膝を揃えて座りながら、これから会う新しいプレイヤー、新しい生活、自分が生まれたばかりのこの時間のすべてに胸をときめかせていた。


………しばらく待っていると、テントの外で聞き覚えのある人の声がした。
良く通って張りのある声だが、取り乱してひっくり返った声は間が抜けている。


ミクは行儀良く座った席から立ち上がることも忘れて身を固くした。



バーチャルアイドルの一人、天馬司が既にこのセカイに来ている。


セカイでのストーリーモードが勝手に始まっている。
見守るべき役割の、このセカイを生み出した筈の、


プレイヤーが不在のまま………。


まさかそんな。プレイヤーと自分が言葉を交わさなければこの空間の時間は動き出すはずがない。



プレイヤーが自分を置いて進めてしまっているのかも………
いやそんなわけがない。過去にバーチャルシンガー達が住む空間を持っている人間ならこの行程はスキップできるが、プレイヤーをサポートする自分の記憶はそんな情報は引き継がれていない。


落ち着こうと考えれば考えるほど、事の重大さが我が身にのしかかってくる。


たった今から、サポートの自分が動かぬうちに、本当の主人公がいないうちに勝手に動き出した。

ユーザーがいなければバグを報告することもできない。

勝手に流れ出したこの時間を止めることすらできない。

つまり自分は今、自分で制御のできない世界に閉じ込められてしまった………………。







生まれたばかりのこの身で、ミクは気を失ってしまいそうだった。

どうしてこんなことになったのか、考えようとするが動揺も相まって答えなど出せる筈もない。


とりあえず、ストーリーが終わるのを見計らって、同時にこのセカイで発生した他のバーチャル・シンガー達に話を聞いてみよう。
よろよろ立ち上がって歩きだそうとしたミクは、自分の服が僅かに重たい事に気がついた。ポケットに何か入っている。



ソレを取り出したミクは、とうとうこの世に生を受けての第一声をあげることになった。

自分が手にしているのはスマホだった。
このセカイと現実空間を自由に行き来するための道具、本来であれば、自分が出迎えるはずだった、

本当の主人公しか持つことのできないスマホ。


それを自分が最初から持っているということは………



「ぇええええええええ?!?!?!」




この世には、さまざな姿のバーチャルシンガーが存在している。
どうやらここの初音ミク、何故か自分自身がゲームの主人公として生まれてしまったらしい。
























from:カイト兄さん

title:ミクへ

ますたーにおねがい

やめてとだけ

つたえておいて