何とか復活しまスた。
話の筋はかなり変わりましたが…(-"-;A
私は基本一発書き人間で、会話を転がすことによって話も転がすので、
一度書いたストーリーは二度と戻ってこんのドすよ。
というわけで、書き直したら当社比1.5倍になったので二つに分けます。
なんやかんやでおまけも含めて今月中にupできそう。ふぅ、やれやれ。(^▽^;)
(「2月も終わるってば」のお言葉にガクブルのCia)
5日目(前編)
「まったく、君たちは現金だな~」
アルノーとウェインの恨めしそうな視線を受けながら、ブレンダとシェーンはケロリとした表情を向けた。
「チョコレートのためなら何でもするわよ」
「そうそう。悪魔に魂を売っても惜しくないで」
「だったら、初めから……」
来てくれよと言おうとしたとき、ぷ~んとえもいわれぬ濃厚な香りが厨房から漂ってきた。
「できた!」
ぴょこんと勢いよく顔を上げたブレンダとシェーンは秒速の早さで厨房へと駆け入った。
厨房の台の上にはほかほかと湯気を上げているカップが一つ。
そして難しそうな顔をしている3人。
親方とアニスとシンシアだった。
「え~と、失敗?」
不安げに聞いたが、3人は首を振った。
「チョコレートとしては成功だ。だが……」
親方はあごでしゃくってチョコレートを指した。飲んでみろ、ということだ。
ブレンダとシェーンは恐る恐るチョコレートの入ったカップを手に取った。
「うわ! 美味しい!!」
「あま~い、おいし~い、幸せ~」
チョコレートのカップを握ってほぅっと幸せそうなため息を付く二人。
「え、本当に? ちょっと私にも飲ませて下さい」
「あ、僕もちょっと味見を」
二人の表情にウェインとアルノーもチョコレートに手を伸ばす。
やがて、二人も幸せそうなため息を付いた。
「親方って天才だね」
「う~ん、これは王侯貴族がはまる味だ」
「苦味と甘味がものすごくちょうどいいな」
「これならお姉さまも喜びそうだわ」
「あ、ちょっと、あたしにも飲ませてよ」
どこから現れたのか、エルシトリン、ティアナ、キキが奪うようにチョコレートを取り合う。他にもマイネやアルサリーズなど、三教の女性陣が厨房に勢ぞろいしていた。
「で、これの何が問題やの?」
あっという間に空になったカップを親方に返しながらブレンダが聞いた。
親方は難しそうな顔でカップを洗い桶に入れながら、うなるように言った。
「固まらん」
「え?」
「固まらないのよ。どんなに捏ねても、混ぜても一也君が言う固形のチョコレートにならないの」
親方の言葉を補足するアニスにはわずかに疲労の色が見えた。厨房の台の上には様々なハーブが散らばっている。ハーブによる調合も試してみたのだろう。
「シンシアちゃんの魔法で凍らせてみたのだけどねぇ、なかなか凍らないのよぉ。無理に凍らせても味がものすごく悪くなるしぃ」
シンシアも肩をもみながら言う。
ブレンダたちがちらりと洗い桶の方に視線をやると、そこにはありとあらゆる鍋が積みあがっていた。それだけでも3人の悪戦苦闘が目に浮かぶようだった。
「う~ん、公爵さんも固形のチョコレートなんて初耳みたいなこと言っていたし……」
「一也く~ん、固形のチョコレートってどうやって作るの~」
シェーンが一也を振り返って聞いたが、本人は困ったように顔をしかめた。
「え? そ、それはさすがに知らない……ていうか、チョコレートって液体なの?」
「液体以外に何があるんや?」
「え? だって、僕たちの国ではチョコレートは固形だから」
「それって凍ってなくてぇ?」
「う、うん。普通の温度でも固まっているよ。あ、ものすごく熱かったりしたら溶けちゃうけど」
「ものすごく熱いってどれぐらい?」
「え? 100度ぐらい?」 (筆者注:4、50度でチョコレートは溶けます。100度だと脂質が分離するので味が悪くなります)
「う~ん、一也君のところのチョコレートとこっちのチョコレートってやっぱ違うのかなぁ」
首をひねるシェーンを一也は申し訳なさそうに見た。
「ごめん」
ポツリとそう言ってうなだれる一也の目の前に親方がずいとカップを差し出した。
「え?」
「飲んでみろ」
言われるままにカップに入ったチョコレートを飲む一也。
「どうだ?」
「え、えっと、美味しいです」
一也は正直に感想を言った。実際に鼻の奥の血管を刺激しそうなぐらいの刺激的な香りと苦味、そしてそれを緩和する砂糖の甘味は絶妙で、飲むだけで至福の瞬間を味わえた。
だが、親方は難しそうな顔で一也を見つめた。
「そうではなくてだ。どうだ? お前のところのチョコレートと何か違うか?」
「え?」
キョトンと一也は親方を見つめた。そしてその瞳に真剣な光を見、あわててもう一口カップのチョコレートを飲んだ。
「えっと、ほとんど同じです」
味わいも、香りも、舌触りもすべて日本のチョコレートと同じだ。ただ……
「固形ではない」
「そうなんです。あえて言うならココアに似ています。それよりはものすごく濃い味ですけど」
一也の言葉にブレンダたちは目を丸くした。
「ココア? それもチョコレートなん?」
「カカオ……ココア……確かにこっちの方がチョコレートっぽい名前だな」
「あ、いえ、違います。ココアとチョコレートは別物です!」 (筆者注:同じものです。チョコレートから脂肪分をとったものがココアです)
一也はあわてて首を振った。
「ココアは粉になっていてお湯で溶かして飲むものなんです」
「え? これもそうだよ?」
シェーンは首をかしげてチョコレートの入ったカップを指した。
「カカオを粉にしてお湯でとかして飲むんだよ」
「えっと、そうじゃなくて、ココアはもっと甘いというか、こんなに苦くなくて、どろっとしていなくて、香りももうちょっと甘いんです。だから、その……」
しどろもどろと説明する一也だが、ブレンダたちはさらに首を傾げるばかりだった。
「じゃあ、やっぱ一也君ところのココアがうちらで言うチョコレートなんやないかなぁ?」
「う~ん、名前も似ているし、その可能性はあるよね」
「そ、そうなのかなぁ?」
がっくりと肩を落とした一也だった。
その時。
「テンパリングをしてみたらどうでしょう?」
おずおずとか細い声がブレンダたちにかけられた。
「テンパリング?」
慌てて振り返った先に真里亜がいた。
「なんやの、それ?」
「え、えっと……」
いきなりその場にいた全員の注目を浴びて、真里亜は頬を真っ赤に染めてうつむいた。
その真里亜の顔をキキが覗き込んだ。
「テンパリングって何かな? 真里亜ちゃん?」
「教えていただけませんか?」
同じように覗き込んだアニスの顔とキキの顔を交互に見つめながら、真里亜はぽつぽつと語り始めた。
「以前テレビで言っていたのですが……チョコレートは脂肪をいれないと固まらないそうなんです。……それで、チョコレートを4,50度の温度で溶かしながら脂肪もそこに練りこむとチョコレートが固まるそうなんです」
「それがテンパリングというのですか?」
「は……はい」
アルサリーズの言葉に真里亜は消え入りそうな声でうなずいた。
そんな真里亜をアルサリーズはわずかに眉をひそめて見た。
「脂肪は何を使うのですか?」
「え、えっと……」
彼女のどこか鋭さを秘めた口調に真里亜はおろおろと瞳を動かした。
「し、知りません」
泣きそうな声でそれだけ言った後、真里亜はうつむいてしまった。
そんな真里亜の背中をキキがポンポンと叩いた。
「気にしなくていいよ、真里亜ちゃん」
「そやそや。ここに歩く百科事典がいるんや、なんか知っているやろ。な、アルノーさん?」
「ええっ!? 僕?」
ブレンダにバンと背中を叩かれて目を白黒させるアルノー。そんなアルノーに期待の入り混じった目が集中する。
「チョコレートに入れる脂肪分なんて、僕は知らないぞ」
とか言いながら、頭の中に入っているデータを引っ張り出してしまうアルノーだった。
「ラード……ヘット……とかは、さすがに匂いがきついかな?」
ちらりと親方を見ると親方はこくりとうなずく。
「あとは、バター?」
「あ!」
アルノーの言葉に真里亜が小さく叫んだ。
「カカオバター。カカオバターを入れていました」
「え?」
みなキョトンと真里亜を見た。
「カカオバターって?」
「カカオから取れる脂肪です。それをチョコレートに入れる……と……」
真里亜の言葉は次第に小さくなっていった。
「それができたら、苦労はしないんだがな」
「そうですよね」
エルシトリンの言葉にまたもや首をうなだれる真里亜だった。カカオから脂肪をとる技術があれば、チョコレートを固める技術もあるはずである。
「え~とさ」
シンとお通夜状態になったみなにおずおずとウェインが手を上げた。
「シアバターとかはさ、だめなのかな?」
「シアバター?」
思いっきり疑問符を顔に貼り付けているみなと違い、アルノーだけは「ああ」という顔をした。
「シアバターノキから取れるバターか? だが、あれはかなり高価な上に南方の国からの輸入が無いと手に入らないぞ」
「ところが、実はあったりするんだよね」
「え!?」
みな、目を丸くしてウェインを見つめた。
「公爵さんが、カカンバーさんに渡していたのを見たんだ。レスリングをする時に最適だとかなんだとか言いながら」
「あの変態は、何を考えているのだ!」
思いっきりしかめっ面をした親方とは対照的に、カカンバーはいたってのんびりと答えた。
「んだ。親方の分ももらったんだけど、ワシ、どう使うんか分からんかってのう。ウェインにきいたら傷を治したり、鎧や武器の手入れにいいってきいて、大事にとっておいたんじゃ」
「あ、あの、シアバターでも大丈夫だと……思います……」
「じゃぁ、それを使えば!」
真里亜の言葉に色めき立つブレンダたち。
「ちょっと、待って!」
そんなブレンダたちをアルサリーズが止めた。
「シアバターなら私も知っているわ。でもそれはとんでもなく高価な上に傷薬としてとても貴重なものよ。それを、たかがお菓子に使っていいかしら」
エミリィとともに三教の兵站に携わっているアルサリーズは知っていた。今でこそ、付近の住民の協力の下一応落ち着いている三教の補給線だが、いつ何時それが途絶えるか分からない。その時の為にできるだけ命に関わるものはとっておきたい。シアバターは傷薬としてだけでなく、食用にも燃料にも使うことができる優秀な品物だった。
「アルサリーズさん、固いこと言わないでよ~」
シェーンが甘えた声を出してみたが、アルサリーズの表情は変わらない。いつもの無表情に近い固い顔を向けただけだった。
「だめです。本当はカカオだって薬用として保存しておきたいのですから」
「え~」
口を尖らせるブレンダたち。だが、アルサリーズは断固として態度を崩さなかった。
「あのさ、結構な量だよ」
「なおさらです」
「じゃ、じゃあさ、チョコレート、どうする?」
う~ん、とみな腕を組んでカカオを見つめる。
「アルサリーズさん、チョコレート、食べたくないん?」
ブレンダは上目遣いにアルサリーズを見た。
「う」
その言葉にアルサリーズの表情はわずかに揺れる。隠してはいるが、彼女だって甘いものは大好物なのである。
「なぁ、ちょっとだけ、ちょっとだけやったらええやろ?」
「そうそう。みんなに配る分じゃ無くて試しに作る分だけ」
「もし、一也君が言う固形のチョコレートができれば、チョコレートの有効活用の道も開けるな」
「あ、ええこと言うな、アルノーさん。それそれ、糧食の研究目的のため、ということでここは一つ」
「そんなこと……」
ぐらぐらと揺れる彼女の気持ちをマイネがそっと後押しした。
「ちょっとぐらいなら許したり。お堅いのも考えもんやで」
「じゃぁ、ちょっとだけですよ」
アルサリーズの言葉に「やったー!」と万歳するブレンダたち。
慌ててカカンバーは部屋へシアバターを取りに行き、親方はまたもやアニスと今度は真里亜をつれて厨房に引きこもった。
話の筋はかなり変わりましたが…(-"-;A
私は基本一発書き人間で、会話を転がすことによって話も転がすので、
一度書いたストーリーは二度と戻ってこんのドすよ。
というわけで、書き直したら当社比1.5倍になったので二つに分けます。
なんやかんやでおまけも含めて今月中にupできそう。ふぅ、やれやれ。(^▽^;)
(「2月も終わるってば」のお言葉にガクブルのCia)
5日目(前編)
「まったく、君たちは現金だな~」
アルノーとウェインの恨めしそうな視線を受けながら、ブレンダとシェーンはケロリとした表情を向けた。
「チョコレートのためなら何でもするわよ」
「そうそう。悪魔に魂を売っても惜しくないで」
「だったら、初めから……」
来てくれよと言おうとしたとき、ぷ~んとえもいわれぬ濃厚な香りが厨房から漂ってきた。
「できた!」
ぴょこんと勢いよく顔を上げたブレンダとシェーンは秒速の早さで厨房へと駆け入った。
厨房の台の上にはほかほかと湯気を上げているカップが一つ。
そして難しそうな顔をしている3人。
親方とアニスとシンシアだった。
「え~と、失敗?」
不安げに聞いたが、3人は首を振った。
「チョコレートとしては成功だ。だが……」
親方はあごでしゃくってチョコレートを指した。飲んでみろ、ということだ。
ブレンダとシェーンは恐る恐るチョコレートの入ったカップを手に取った。
「うわ! 美味しい!!」
「あま~い、おいし~い、幸せ~」
チョコレートのカップを握ってほぅっと幸せそうなため息を付く二人。
「え、本当に? ちょっと私にも飲ませて下さい」
「あ、僕もちょっと味見を」
二人の表情にウェインとアルノーもチョコレートに手を伸ばす。
やがて、二人も幸せそうなため息を付いた。
「親方って天才だね」
「う~ん、これは王侯貴族がはまる味だ」
「苦味と甘味がものすごくちょうどいいな」
「これならお姉さまも喜びそうだわ」
「あ、ちょっと、あたしにも飲ませてよ」
どこから現れたのか、エルシトリン、ティアナ、キキが奪うようにチョコレートを取り合う。他にもマイネやアルサリーズなど、三教の女性陣が厨房に勢ぞろいしていた。
「で、これの何が問題やの?」
あっという間に空になったカップを親方に返しながらブレンダが聞いた。
親方は難しそうな顔でカップを洗い桶に入れながら、うなるように言った。
「固まらん」
「え?」
「固まらないのよ。どんなに捏ねても、混ぜても一也君が言う固形のチョコレートにならないの」
親方の言葉を補足するアニスにはわずかに疲労の色が見えた。厨房の台の上には様々なハーブが散らばっている。ハーブによる調合も試してみたのだろう。
「シンシアちゃんの魔法で凍らせてみたのだけどねぇ、なかなか凍らないのよぉ。無理に凍らせても味がものすごく悪くなるしぃ」
シンシアも肩をもみながら言う。
ブレンダたちがちらりと洗い桶の方に視線をやると、そこにはありとあらゆる鍋が積みあがっていた。それだけでも3人の悪戦苦闘が目に浮かぶようだった。
「う~ん、公爵さんも固形のチョコレートなんて初耳みたいなこと言っていたし……」
「一也く~ん、固形のチョコレートってどうやって作るの~」
シェーンが一也を振り返って聞いたが、本人は困ったように顔をしかめた。
「え? そ、それはさすがに知らない……ていうか、チョコレートって液体なの?」
「液体以外に何があるんや?」
「え? だって、僕たちの国ではチョコレートは固形だから」
「それって凍ってなくてぇ?」
「う、うん。普通の温度でも固まっているよ。あ、ものすごく熱かったりしたら溶けちゃうけど」
「ものすごく熱いってどれぐらい?」
「え? 100度ぐらい?」 (筆者注:4、50度でチョコレートは溶けます。100度だと脂質が分離するので味が悪くなります)
「う~ん、一也君のところのチョコレートとこっちのチョコレートってやっぱ違うのかなぁ」
首をひねるシェーンを一也は申し訳なさそうに見た。
「ごめん」
ポツリとそう言ってうなだれる一也の目の前に親方がずいとカップを差し出した。
「え?」
「飲んでみろ」
言われるままにカップに入ったチョコレートを飲む一也。
「どうだ?」
「え、えっと、美味しいです」
一也は正直に感想を言った。実際に鼻の奥の血管を刺激しそうなぐらいの刺激的な香りと苦味、そしてそれを緩和する砂糖の甘味は絶妙で、飲むだけで至福の瞬間を味わえた。
だが、親方は難しそうな顔で一也を見つめた。
「そうではなくてだ。どうだ? お前のところのチョコレートと何か違うか?」
「え?」
キョトンと一也は親方を見つめた。そしてその瞳に真剣な光を見、あわててもう一口カップのチョコレートを飲んだ。
「えっと、ほとんど同じです」
味わいも、香りも、舌触りもすべて日本のチョコレートと同じだ。ただ……
「固形ではない」
「そうなんです。あえて言うならココアに似ています。それよりはものすごく濃い味ですけど」
一也の言葉にブレンダたちは目を丸くした。
「ココア? それもチョコレートなん?」
「カカオ……ココア……確かにこっちの方がチョコレートっぽい名前だな」
「あ、いえ、違います。ココアとチョコレートは別物です!」 (筆者注:同じものです。チョコレートから脂肪分をとったものがココアです)
一也はあわてて首を振った。
「ココアは粉になっていてお湯で溶かして飲むものなんです」
「え? これもそうだよ?」
シェーンは首をかしげてチョコレートの入ったカップを指した。
「カカオを粉にしてお湯でとかして飲むんだよ」
「えっと、そうじゃなくて、ココアはもっと甘いというか、こんなに苦くなくて、どろっとしていなくて、香りももうちょっと甘いんです。だから、その……」
しどろもどろと説明する一也だが、ブレンダたちはさらに首を傾げるばかりだった。
「じゃあ、やっぱ一也君ところのココアがうちらで言うチョコレートなんやないかなぁ?」
「う~ん、名前も似ているし、その可能性はあるよね」
「そ、そうなのかなぁ?」
がっくりと肩を落とした一也だった。
その時。
「テンパリングをしてみたらどうでしょう?」
おずおずとか細い声がブレンダたちにかけられた。
「テンパリング?」
慌てて振り返った先に真里亜がいた。
「なんやの、それ?」
「え、えっと……」
いきなりその場にいた全員の注目を浴びて、真里亜は頬を真っ赤に染めてうつむいた。
その真里亜の顔をキキが覗き込んだ。
「テンパリングって何かな? 真里亜ちゃん?」
「教えていただけませんか?」
同じように覗き込んだアニスの顔とキキの顔を交互に見つめながら、真里亜はぽつぽつと語り始めた。
「以前テレビで言っていたのですが……チョコレートは脂肪をいれないと固まらないそうなんです。……それで、チョコレートを4,50度の温度で溶かしながら脂肪もそこに練りこむとチョコレートが固まるそうなんです」
「それがテンパリングというのですか?」
「は……はい」
アルサリーズの言葉に真里亜は消え入りそうな声でうなずいた。
そんな真里亜をアルサリーズはわずかに眉をひそめて見た。
「脂肪は何を使うのですか?」
「え、えっと……」
彼女のどこか鋭さを秘めた口調に真里亜はおろおろと瞳を動かした。
「し、知りません」
泣きそうな声でそれだけ言った後、真里亜はうつむいてしまった。
そんな真里亜の背中をキキがポンポンと叩いた。
「気にしなくていいよ、真里亜ちゃん」
「そやそや。ここに歩く百科事典がいるんや、なんか知っているやろ。な、アルノーさん?」
「ええっ!? 僕?」
ブレンダにバンと背中を叩かれて目を白黒させるアルノー。そんなアルノーに期待の入り混じった目が集中する。
「チョコレートに入れる脂肪分なんて、僕は知らないぞ」
とか言いながら、頭の中に入っているデータを引っ張り出してしまうアルノーだった。
「ラード……ヘット……とかは、さすがに匂いがきついかな?」
ちらりと親方を見ると親方はこくりとうなずく。
「あとは、バター?」
「あ!」
アルノーの言葉に真里亜が小さく叫んだ。
「カカオバター。カカオバターを入れていました」
「え?」
みなキョトンと真里亜を見た。
「カカオバターって?」
「カカオから取れる脂肪です。それをチョコレートに入れる……と……」
真里亜の言葉は次第に小さくなっていった。
「それができたら、苦労はしないんだがな」
「そうですよね」
エルシトリンの言葉にまたもや首をうなだれる真里亜だった。カカオから脂肪をとる技術があれば、チョコレートを固める技術もあるはずである。
「え~とさ」
シンとお通夜状態になったみなにおずおずとウェインが手を上げた。
「シアバターとかはさ、だめなのかな?」
「シアバター?」
思いっきり疑問符を顔に貼り付けているみなと違い、アルノーだけは「ああ」という顔をした。
「シアバターノキから取れるバターか? だが、あれはかなり高価な上に南方の国からの輸入が無いと手に入らないぞ」
「ところが、実はあったりするんだよね」
「え!?」
みな、目を丸くしてウェインを見つめた。
「公爵さんが、カカンバーさんに渡していたのを見たんだ。レスリングをする時に最適だとかなんだとか言いながら」
「あの変態は、何を考えているのだ!」
思いっきりしかめっ面をした親方とは対照的に、カカンバーはいたってのんびりと答えた。
「んだ。親方の分ももらったんだけど、ワシ、どう使うんか分からんかってのう。ウェインにきいたら傷を治したり、鎧や武器の手入れにいいってきいて、大事にとっておいたんじゃ」
「あ、あの、シアバターでも大丈夫だと……思います……」
「じゃぁ、それを使えば!」
真里亜の言葉に色めき立つブレンダたち。
「ちょっと、待って!」
そんなブレンダたちをアルサリーズが止めた。
「シアバターなら私も知っているわ。でもそれはとんでもなく高価な上に傷薬としてとても貴重なものよ。それを、たかがお菓子に使っていいかしら」
エミリィとともに三教の兵站に携わっているアルサリーズは知っていた。今でこそ、付近の住民の協力の下一応落ち着いている三教の補給線だが、いつ何時それが途絶えるか分からない。その時の為にできるだけ命に関わるものはとっておきたい。シアバターは傷薬としてだけでなく、食用にも燃料にも使うことができる優秀な品物だった。
「アルサリーズさん、固いこと言わないでよ~」
シェーンが甘えた声を出してみたが、アルサリーズの表情は変わらない。いつもの無表情に近い固い顔を向けただけだった。
「だめです。本当はカカオだって薬用として保存しておきたいのですから」
「え~」
口を尖らせるブレンダたち。だが、アルサリーズは断固として態度を崩さなかった。
「あのさ、結構な量だよ」
「なおさらです」
「じゃ、じゃあさ、チョコレート、どうする?」
う~ん、とみな腕を組んでカカオを見つめる。
「アルサリーズさん、チョコレート、食べたくないん?」
ブレンダは上目遣いにアルサリーズを見た。
「う」
その言葉にアルサリーズの表情はわずかに揺れる。隠してはいるが、彼女だって甘いものは大好物なのである。
「なぁ、ちょっとだけ、ちょっとだけやったらええやろ?」
「そうそう。みんなに配る分じゃ無くて試しに作る分だけ」
「もし、一也君が言う固形のチョコレートができれば、チョコレートの有効活用の道も開けるな」
「あ、ええこと言うな、アルノーさん。それそれ、糧食の研究目的のため、ということでここは一つ」
「そんなこと……」
ぐらぐらと揺れる彼女の気持ちをマイネがそっと後押しした。
「ちょっとぐらいなら許したり。お堅いのも考えもんやで」
「じゃぁ、ちょっとだけですよ」
アルサリーズの言葉に「やったー!」と万歳するブレンダたち。
慌ててカカンバーは部屋へシアバターを取りに行き、親方はまたもやアニスと今度は真里亜をつれて厨房に引きこもった。